かねてから少しずつ実家の書籍を売却していましたが、ここにきて少し勢いがついてきました。
以前からちょくちょくご紹介している通り、居所での本の売却がするするとうまくいくようになってきたからです。
ブックオフで売却すると、特に古い本や人気のない物は5円とか10円でしか売れませんよね。こちらのメルカリ的サイトですと、同じ本が100円とか150円くらいで買ってもらえます。購入者のほとんどが日本語に興味がある方々ですので、ストーリの良しあし・話の筋等、十分にお伝えして、納得した上で購入いただいているという次第。こちらも鼻息荒く儲けようという気もありません(妻だけが「もっと高くうれるじゃん」とかうるさいのです。本読みなさい。)
売却前の下読みということで、長らく本棚に眠らせておいた村上作品にも仕分けのメスが入ることになりました。
村上氏王道的作品というよりエッセイ?
村上春樹氏の作品というと、アンニュイでアンビバレントな青年主人公が何らかの精神的傷やトラウマティックな事象をかかえ、そのストーリー進行の過程で、テロンテロンに濃ゆい性的描写が微熱的に描かれ、最終的に自己を回復する、的な展開がなかなかにある気がします。
が、本作はむしろエッセイ・ノンフィクションに近いかと思います。
村上氏が見聞きしたちょっと不思議な話を紙に書き起こしてみるという、言わば村上版「ナショナルストーリープロジェクト」とでも言った作品でありました。
珍しすぎないお話も、最終村上色に染まります
収録作品は、あらすじを語ると実に味気ない素描しかできないほど、普通のお話になりそうなもの。「レーダーホーゼン」は突然離婚してしまった母親の話ですし、「タクシーに乗った男」は画廊経営者がかつて米国で得た三流画家のかいた作品にまつわる話。
内容は、ありふれた話というわけでもないですが、とても珍しい話というわけでもない。ただ、村上氏のエッセンスをスポイトで2、3滴落としたことで、お料理の味がぐっと変わってしまった、という類のお話かと思います。
その中でも、友人の連れ合いを寝取るのが趣味?である男が嘔吐に悩まされる「嘔吐1979」や、男と別れて会社も辞めてそれでも余った時間にふと体を金で売ってみる女性の「雨宿り」、これらは何というか、惹きつけられるものがありました。
やっぱり私、「性」で引っかかっていたのかな
というより、やっぱり性描写なのかもしれません。
「雨宿り」でもさらりと書かれていますが「僕はごく単純にセックスというのは無料だと考えていた」とあります。村上氏の作品についつい入り込んでしまうのは、ここなのかな。
現実には恋人や夫婦ではそうですが、おいそれとそんなにサラリと体を重ねるなんて経験は、望んだり努力してもなかなかできないものである気がします。でも、村上氏の話の中の男性はさらりと他人と夜を共にしてしまう。
きっと私はそういう器用な人間でもないですし、そうした性的能力の行使に強い憧れを持っていたのかなあと、今更ながらに感じるところであります。知らんけど。
ちなみに、女性からみた村上作品の良さってのはどういう所なのか、とふと疑問に思った次第です。また他の男性も村上作品の何が良いのか、ちょっと聞いてみたくなりました。
おわりに
ということで村上氏の割と初期のころの作品(1985年)でした。
時に現実を幻想的な描写をするのも村上氏らしく、また性描写がさらりと描かれるのも村上氏らしかったと思います。
短い冊子ですので、気分転換等に読んでいただくには丁度よいかもしれません。昭和の文学、などとそろそろ言われるのでしょうかね。
評価 ☆☆☆
2023/08/26