最近気づいたこと。
いつも本文の内容とは全く異なる「まくら」を書いてから感想を書くのですが、この「まくら」の部分が他のポストと関連していると思われることがあるようです。ウーム。
前回高校野球の本を読んだのですが、関連したポストとしてサミュエル・ハンチントンの本の感想が上がっていたんですね。案の定、ハンチントン氏の感想の「まくら」に、息子の高校野球のことがギャーギャー書いてありました。すみません。
今日も懲りずに、日常のことを「まくら」として綴ります。
今日は脳のCTの話をしましょうか。久々にCTをとってきたんです。CT撮るときって、造影剤を注射するのですが、造影剤を入れると一瞬で体がカッと火照るんですよね。あれって気持ち悪いですよねえ。体中が血管で繋がっているのが体感できますが、クスリの威力というか、人間というシステムが薬物でこうも簡単に影響されるのか、って感じました。
さて、この「まくら」が原因で、グリーンスパン氏の回顧録はどのような作品とマッチされるのでしょうかねえ。
下巻の内容
上巻では主に回顧録の形を取り、グリーンスパン氏の謂わばライフヒストリーを扱っていました。
本下巻では彼の経済観・経済論、国際情勢、今後の世界について等々の、幅広く彼の思想が披露されています。
レッセフェール=効率を生む!?
もっとも印象が強いのが、彼が強固な自由主義者、レッセフェールを愛する男だという事でしょうか。その深度たるや、FRB議長にあって、時代が下って陳腐化した不要な規制は定期的に廃止するべきで、実際そうしていたと回顧する部分すらありました(箇所忘れました)。例えばヘッジファンドについてもバランスシートを当局に提出する点については彼は大の反対だということ。曰く、頻繁にポジションを変更するヘッジファンドのバランスシートを、たった一時点の記録を当局に出したところで数分後には変化している可能性が高い。つまり意味がないという話です。
彼はマーケット、神の見えざる手の篤い信奉者です。きっとヘッジファンドに対する規制が無いとして問題にならないと考えているのでしょう。逆に問題になる場合はどういう場合でしょうか。ファンドが過度なリスクを取る場合? でもリスクとリターンが相関することから、ハイリターンを求めるならばリスクを負う側が気を付ければよいだけかもしれません。
ファンドにも購入者にも足りない部分はあるかと思いますが、それこそがマーケットで互いに傷つけあいながら(!?)「ベストプラクティス」が積み上げられることを期待しているように見えました。これまさに自己責任。
但し詐欺はいけません(氏が言っているんですが)。詐欺を防止するルールは当局は厳に取り締まり、それ以外はマーケットに任せるというようでした。
レッセフェールとマクロ経済学との結びつき
面白いのは、このレッセフェールをグローバリズムやマクロ経済学にも結び付けていたことでしょうか。
例えば、米国の経常赤字。かつて学校で習ったとき、この原因として高品質で低価格の輸入品を受け入れたためだということでした。グリーンスパン氏の解釈は「イノベーション」ということに見えました。あるいは投資。
日本は経常黒字が多い国ということで、これまた投資した米国債の配当金や利金が多いことが説明として多かったと多いと思います。ただグリーンスパン氏的に説明するならば、もはや日本国内に有望な投資先がなく、投資先がグローバルになったと言えると思います。逆に米国サイドから見れば旺盛な資金需要を国内だけで満たすことが出来ず、海外からの資金を受け入れているということになります。
こうした自由な資金の移動が米国でのイノベーションを生み、そして外国の投資を成功させた、そして地球全体として繁栄を形作った、ということですね。
上手く表現できませんが、とにかく知的好奇心がすこし刺激されました。マクロ経済学は20年前に証券アナリストを取るときに勉強したっきりですが、何か間違えていたらごめんなさい。
今後のキープレイヤーについても結構詳しく
また、今後米国に影響を与えることになりそうな国々にも章を割いていました。
中国、ロシア、インド、そして中南米です。全般的には、個人の権利が確立し、資本主義という市場という「神の見えざる手」が働くところにこそ繁栄があるという見方でした。中国は財産権が曖昧で不確か、ロシアは財産権の概念は為政者により変動する、インドは因襲的で規制が多すぎる、そして中南米はポピュリズムが資本主義に規制を与える、というのが発刊当初の氏の考えのようです。
結構しっかり見ているんですね、という印象。
グローバリズムとか新自由主義とか、弱い人の立場からはけしからんと考えていました。ただ、本作を読むと市場に任せる効率性、規制によるコストを撤廃しマーケットに還元するという考えも理解でき、なるほどと思った次第です。
おわりに
ということで戦後では最長の18年以上をFRB議長として金利政策をリードしたグリーンスパン氏の回顧録でした。
下巻は氏の思想が中心でしたが、含蓄のある面白い内容でした。哲学科出身にはちょっと難しかったのですが、経済をしっかり勉強した方にはより面白く読んでもらえると思います。
金融関連に興味がある方、経済学(特にマクロないしは計量経済学)に興味がある方、米国や関連の地政学に興味のある方等々にはお勧めできる作品かと思います。
評価 ☆☆☆☆
2023/09/21