海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

セントラルバンカー回顧録、現代史的にも面白い |『波乱の時代(上)』アラン・グリーンスパン 訳:山岡洋一、高遠裕子

金融業界で業務に携わっているので、その業界のかたの回顧録は役に立とうと考え、ずっと積読しておりました。

実は一度トライはしたのですが、マジで長い!そのため一か月かけても上巻の途中までしか行かず、忙しくなったりなんだリで挫折。今回は気を取り直して一から再読しました。

 

でも自信がないので、まずは上巻だけでも記録を残しておこうというものです。

 

 

概要

第13代FRB議長の回顧録。足掛け19年ものあいだ、FRB議長として国の金利や財政などの経済回りの政策をリード。政治の世界とも付き合ってきた氏によるメモワール。

 

どんな本?

グリーンスパン氏。私の印象にあるのはリーマンショックの陰の立役者(ショック前の低金利誘導のこと?)とかで揶揄されたり、ひいては陰謀論的にユダヤに与するものとかなんとか。要はよく知りませんでした。

でも本作読んで、氏自身の生い立ちもさることながら、歴代政権や権力者への見解など、現代史を振り返る点でも非常に面白い作品でありました。

 

生い立ちやライフ・ヒストリー

経済回りの方ということは分かりますが、野球少年だったとか、野球といってもデータ(打率とか)を覚えたりするのが好きとか、まあちょっと変わっていますよね。両親が離婚して母親に育てられたとか。

高校卒業後、召集令状を受け戦場に出るまでジュリアードで学ぶという予定も、まさかの検査でハネられ、失意の中?ビッグバンドでクラリネットを吹くようになったとか。

戦争が終わり、今後の事を鑑みニューヨーク大学で学び、以降エコノミストの道を辿るのですが、数字からストーリを読み解き文章にすることが得意であったという印象を受けます。

彼の20代あたりのお話だけで十分に面白く読めるかと思います。

 

政治家との間で

上巻の中盤は、彼自身の政治への接近が描かれます。

フォード政権で経済諮問委員として政治の世界に踏み入り、以降政治家の資質・度量を仕事を通じて眺めてきたグリーンスパン。フォード、レーガン、ブッシュ(父)、クリントン、ブッシュ(子)など多くの大統領を見てきた中で、フォードの明晰な理解力、クリントンの人間的魅力、ブッシュ(子)のポピュリズムへの批判など、一定の距離から時の権力者を見てきており、その評価が面白い。中央銀行の独立性、大統領の目指すもの、議会との対立・融和など、氏のポジショントーク的なものはあろうかと思いますが、それを鑑みても面白かったです。

最新現代史として

また現代史の一部としてもなかなかに面白かったと思います。

アジア通貨危機での韓国の突然に失速に外貨保有高に統計上の誤り(隠ぺいに近い)があったとか、ソ連崩壊時に計画経済から資本主義経済へ移行する際のリスク管理や「見極め」など、米国として何を見ていたか、どこまで(なぜ)手を出すかという点が分かり面白かったです。

同じことはメキシコ危機の記事にもありましたが、世界がグローバル化するなかで、経済的なつながりは一国を越え、景気や金利動向をマネージするのにもはや米国一国を見れいればよい、という時代は終わったことを、読んでいてつくづく感じました。

 

もちろんこれはどの国も同じであります。「風が吹けば桶屋が儲かる」情勢であり、我々も「風」を感じるべきだなと思った次第です。

 

おわりに

ということでグリーンスパン氏の回顧録の、半分でした。

政治、経済に関連する話が多いのですが、氏の生い立ちもドラマがありなかなかに面白かったです。

 

米国現代史、米国の政治、経済動向等に興味がある方にはお勧めできる本かと思います。

 

評価 ☆☆☆☆

2023/09/09

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