海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

独特な文体がくせになる、30代男性に親和性のありそうな作品 |『パラレル』長嶋有

 

そういえば、先日病院に行ってきました。

年初に、海外で軽度の脳梗塞を発症しましたが、日本で幾つかの検査を経て結果、予防的にバイパス手術をした方がよいとのことでした。なんでも、メイン動脈の血流がよろしくなく、そのための辺縁部の細かい血管が頑張り過ぎているそう。そのため、メインの血管の梗塞のリスクと辺縁部の血管の破裂(卒中)のリスクがあるそう。頭皮近くの元気アンドそこまで重要でない血管で全般的な血流を整えるって感じらしいです。

でもって、モヤモヤ病とも診断できるとのこと。これまだ徳永英明氏のり患で知った病気ですが、今更『そうだったんだ』って感じです(辺縁部の血管が血流検査で細かくカリフラワー状に撮影され、もんわり見える様子をもやもやと表現するらしい)。

 

50代手前ですが、今後は身辺を片付けつつそれでも長生きしてしまうリスクをバランシングしていくことになりそうです。

取り敢えず手術は来年4月に仮決定。これまで数回大病してきましたが、今回は最大級ですね。これまで以上に一層"Carpe Diem"の気持ちで生きて参ります。

 

 

ひとこと

不思議な読み口の作家さんでした。

ちょっと癖のある文章ですが、それが逆に癖になる書きぶり。また、30代位のアホでエロな男たちの挽歌とでも言いましょうか。主人公七郎やキャバ狂い!?の津田の行動に身に覚えがある男性諸氏も居るのではないでしょうか。

 

題名・内容について

本作『パラレル』、タイトルの意味は何でしょうか?

作品では『パラで付き合う』という表現がありました。複数の相手とへらへらと付き合うことを『パラで付き合う』と表現しており、それなのかなあ。

時間軸が「大学時代」「ちょっと前」「現在」と三つに飛び飛びに展開しましたが、それはジャンプであってパラレルでもないしなあ、と独りごち。

 

2004年という、だいぶ前の作品ですが、かなり典型的な男性目線の作品であり、今の今なら新刊では出せなさそうな作風です。潔癖というか完全な倫理観をお持ちの方は読まない方がよさそうな作品。

 

『これ俺だよ』現象

解説によると、文芸誌では家族ものとして評価された一方、解説のゲーム作家さんが書くように『単行本発売記念の呑み会で、同席したすべての男性が「これ、オレなんだよー」と思っているようだった』とあります。つまり、多くの男性にとって親和性のある事柄が投影されていたとも言えます。

 

友人津田のキャバ嬢狂い、妙ちきりんな倫理観(結婚式のスピーチで『結婚とは文化であります』とうそぶきつつ、複数女性とお付き合い)、主人公七郎とキャバ嬢との友人関係、奥様の浮気と離婚の様子、はたまた津田の会社の破産など。

確かに30代という精力的な年代、お金もそもそこ自由になる世代(20代とか新卒当初と比較して)、こうして向こう見ずな生活の一端は私にもあった気がします。内向的な社会人生活を送っている私ですらそうでしたので、付き合いと称する呑み会が多そうな営業現場一筋とかの人は大いに膝を叩きそう。

 

文体について

文章はややくせのある会話調が多く、かぎかっこで会話を描くも『』の後にもぽつぽつと会話が続くのが特徴的。だから、さらさらとは読めず、注意しつつ二度読みすることがしばしばありました。

しかし、とっかかり・リードの発話と、それ以降のごにょごにょ(重要性低め)をこうした『』内外で分別しているのか、とも思いました。

これは何というか癖になる心地よさがあります。

 

おわりに

ということで長嶋有さんの作品、初めてでした。

もともと15年くらい前のBRUTUSで『読むべき現代の作家』みたいなチャラ目な特集だったのですが、特集ページだけ10ページくらいコピーして実家においてあって、近年ちょろちょろ購入し始めたというものでした。

時代の一端を切り取っているといえば、確かにそうかもしれないと感じた一作です。

 

評価 ☆☆☆

2023/09/30

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