皆さん、こんにちは。
やっと引っ越しの目途がつき、来週には引っ越しです。
それにしても子供たちが日本に戻り、今や同居するのは夫婦のみ。子どもの着なくなった服、昔の学校の道具、果ては就学前後のおもちゃなどが出てくると時代が経ったことを実感します。
でも借家住まいは相変わらず。
過ぎ去りし過去に一抹の寂しさを抱きつつ、新しい住居へ引っ越しします。
はじめに
湊かなえ氏2014年の作品。
登山・トレッキングがテーマの連作による小説。登山中に描かれる、やるせない思い、伝えられない想い、後悔・追想が描かれます。
登山、友、恋人、回想
登山というと、ちょっとハードル高い印象です。
私もトレッキング?くらいはしますが、せいぜいが東京近郊の高尾山、あと同多摩地区の青梅丘陵くらい。一時帰国したときに。気持ちいですよね。
本作でも、幕を開けるのは登山初心者のデパート販売員。しかも登山靴を一目惚れで購入、そしてそれをきっかけに登山をするという筋。
2人の同僚とともに目指す山は妙高山。ところが、うち1人はドタキャンであまり反りが合わないもう1人の同僚と登山することになり、そのうちに本音トークでぶつかり出し…。
とまあ、この調子で連作が続きます。
- 妙高山:マリッジブルーの律子と同僚由美(社内不倫中)のどろどろとした登山。
- 火打山:バブルを引きずる40代美津子と神崎のおっかなびっくりデート登山。
- 槍ヶ岳:1の律子の先輩と思しきしのぶ。一人登山を好む彼女にまとわりつく老年初心者たちとの同行登山。
- 利尻山:フリーの翻訳家希美と医者に輿入れした姉との二人登山。説教くさい姉の抱える問題が次第に明らかに。
- 白馬岳:上記4の姉目線での章。ここでは本人、子どもの七花、本人の妹(希美)との登山。
- 金時山:1で同僚登山をドタキャンした舞子視点の、その彼氏の大輔との登山。
- トンガリロ:帽子作家の柚月のトンガリロ登山。元カレ吉田君との前回のトンガリロ登山を回想しつつ、今回の登山ではここまでに登場した人物たちが会する設定。
- カラフェスに行こう:4および5の希美が、やっぱり仲間が欲しいと山フェスに参加するまでの小品。
これらの連作では、人物の連携が各章ごとにあるところに面白みがあるのはもちろんですが、どれもが各人物の視点から書かれているのが面白かったと思います。
そこに湊氏お得意の強気な自我、譲らない自己がときたま見え隠れしますが、こうした強度のきつすぎない運動をするとき、いろんなことを考えてしまう・ふと考えが頭をよぎる様子は、分かる分かるを膝を打った次第。
そして、あのイヤミスの女王とも呼ばれた湊氏の作品にもかかわらず、なんともさっぱりとした清々しい読後感にちょっと驚いてしまいました。きっと登山の清々しさを伝えたかったのだろうと理解しました笑
おわりに
という事で今月の湊作品は山をテーマにしたものでした。
実はwikipediaによると湊さんは女子大出身でしかも登山部に所属していたそう。ってこれ、結構登頂人物に出てきますね。
本作、登山好き・トレッキング好き、これらを始めてみたい方、心理描写が好きな方、等々にはおすすめかもしれません。
評価 ☆☆☆
2024/11/24