皆さんこんにちは。
本年の懸案であった引っ越しがやっとのこと終わりました。
思えば脳梗塞の手術を終え、こちらに戻ってきた6月から物件さがしをスタートさせ、これまでのシブい(対応・お金ともに)大家と侃々諤々の議論の末、ようやく契約満了の運びとなりました。
新しい住居は従前よりも6000円程度増加するも、会社までの距離がこれまでの車で25分から18分程度になることによりガス代や時間の節約になることになります。
もう大きな引っ越しはこりごりなのですが、いっそうモノの整理をしてゆこうと感じました。新しく1買ったら2捨てるくらいな勢いですすめていけたらと。
とはいうものの、最近1すら買わないことも多いのですがね。服なんかもう5年くらい買っていないかも。子どもと体格がにているため、子どものお下がりとかも多い今日この頃です。例えば今の靴は子どもが「なんか臭い」と申し、履いていなかったスタンスミス笑 家内がピカピカの無臭にしてくれました!
はじめに
恩田氏の2010年代の作目。2013-2014年に新聞小説として掲載され、2015年に出版。ちなみに新聞小説は以前の『夢違』に続き、二作目。
アフターコロナ後に本作を読むと、恩田氏の未来感(未来勘!?)がかなり鋭いことを感じます。AIロボットや未知のウイルスなど、まるでコロナを経験したかのような筆ぶりでした。
こんな話
超大型台風に見舞われたとある日本の国際空港。
入管で足止めされ『別室』に連れてこられた年齢性別もバラバラな男女10名。彼らを迎える謎の若い女(実はAIロボットだった)から命じられるのは『この中にテロリストがいる。そして10人の使命はそのテロリストを見つけ出すこと』とのこと。
果たして10人はミッションを成功裏に収め、家路につくことが出来るか。
把握がしづらい大人数群像劇
本作、群像劇なんです。
で、群像劇というと、やはり複数のキャラをキチンとキャラ立ちさせることが必要だと個人的には思います。
本作では10人+AIロボットの計11名がキャラとして登場しますが、いささか人数が多いというのが印象です。故に、私は数人誰がだれだか分からなくなるという状況に…。
AIロボットの造形と表現
それでもやはり、恩田氏もキャラの設定・作りこみが素晴らしいですね。
なかでもAIロボットのキャサリン。当然感情がないロボットという設定なので、外からの印象で描くわけですが、これがなかなか絶妙。
まず、人間と機械のはざまの存在を、どこまで・どう表現するか。本作ではぱっと見は判断がつかないという設定でした。肌の質感ももう人間と分からないという設定。
そこに、判断が難しい問題への対応として「間」を持つという設定にしてあるというくだり。また嘘はつかないという基本設計から、喋ると影響がある質問にたいしては「無言」を貫くというくだり。こうした描写に、逆に人間らしい行為というものが浮かび上がってくるわけですね。「間」とか「無言の承認」とか。
この「間」を演算処理が重くて追いつかない、と登場人物に推理させたり、実は一部で「当局」が反応に介入していると推察するのもなかなか面白い解釈でした。
でも、外見上判別不能なロボットが出てきたら、世の男性などは美しいロボットで(が)いいと、いっそう先進諸国で出生率が下がりそうな気がしました笑
コロナを彷彿とさせる
それ以外にも、世界で散発的に発生する病原菌の保持者が10人の中にいるのでは、というくだりがありました。
作中ではこの病原菌が実はテロ道具ではないかと疑われ、さらには原因とみられることへも登場人物から推理が提出されました。
これなども、5年前に読んだら単なるスリラー小説の味付け程度にしか思えないかもしれませんが、コロナ当時の飛行機移動時の入国の厳しさを思い出すと、実にリアル(小説をリアルっていうのもあれですが)に感じた次第です。
おわりに
ということで恩田氏の群像系スリラーでした。
ちょっとキャラが多いのですが、幾人かは際立っていて、面白く読めました。
一週間ほどお休みが取れてしかも何もやることがない、というときは試しに読んでみても良いかもしれません。3-4日あれば読めるかな。
評価 ☆☆☆
2024/12/02
恩田氏の新聞小説第一弾はこちら。
人物把握がしづらい大人数の群像系小説といえばこちらを思い出します。