海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

美醜の問題というより母娘の関係を考える作品かと―『カケラ』著:湊かなえ


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 イヤミス湊かなえ氏の作品ですが、今回はちょっと何というか、イマイチ面白さを感じづらい作品でした。

 

あらすじ

 極々大まかなあらすじ言えば、かつて太っていた快活な女子高生が自殺をする。その子は主人公であるさる有名美容整形外科から手術を受けていたが、彼らには解きがたい繋がりがあった、と言う感じ。

 

特徴

 話は、美容整形外科の美人医師ことサノちゃんが相手との会話することで進んでいきます。ただし主人公の発話は文字にならず、ひたすら話相手の発話が文章になっています。これが結構わかりづらく、心に摩擦が起きます。

 

 更に悪いことに、会話の相手たる登場人物が下卑た感じのキャラクターとなっており、これが読む気をさらにそがれました。キャラの味付けがちょっとやりすぎなのではないのかなあと感じました。

 

母娘の確執や関係性というテーマがここでも

 美醜の話は常に筋の中にあらわれますが、実は裏テーマは実は母と子の関係(確執!?)ではないかと思います。さる方の書評にも書いてあったのですが、湊氏の作品は母娘の関係の摩擦が描かれることが多く、本作でも継母(主人公の友人)と継娘(主人公により美容整形手術を受ける)の愛の果てに(愛ゆえに?)継子が自殺するという展開でした。その裏で病死した実母の仕組んだ夫への復讐劇がプロットとして存在しており、いわば死者に操られた救われない継母子の哀しい結末が、イヤミスの湊氏らしさかなあと思いました。まあ本作はミステリーではないと思いますが。

 

おわりに

 他の書評を見てもあまり高い評価はなかったように思います。

 私はひねくれもののunderdog(弱いものを応援する)なので、高い評価にはむりくりケチをつけ、低い評価には何とかいい点を見出したくなります。

 本作ついては純エンタテイメントというより家族の哀しさや愛についての作品として読むと面白いと思います。親ゆえに子どもに配慮をし時にし過ぎて失敗もするし、子どもも親思いすぎて親を頼らず自らを苦しめることもあります。そうした親子の距離の話として読むとこれはこれでなかなか面白いものだと思いました。

 

評価 ☆☆☆

2021/04/21

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