海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

理想図は美しいも導入は相当厳しい |『キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード』ロバート・キャプラン、デビッド・P・ノートン 監訳:櫻井通晴

期末期初の悪夢

期末期初になると頭を悩ませることがあります。自分の評定についてであります。

人事課は”SMART(Specific/Measurable/Attainable/Related/Time-bound)に基づいてお願いします”、”会社の施策にあった目標を設定してください”とか言いたい放題であるが、会社の施策ってなんだ? お客様第一とかというあの歯の浮くようなセリフか? そんなの聞いたことがないという感じであります。いや、正確にいうと、えらい方々はことあるごとに何かしゃべっているのだけれど私にはあまり響かないという。

取り敢えず作りますが、いつも不満足と不完全燃焼感でいっぱいになります。

 

翻って自身の業務。今度は、地域本部から拠点のKPIなるものを仰せつかってこれを各課長に割り振ったり月一の報告会なぞをアレンジしますが、こんな目標で本当にこの拠点成長するのか?という疑問を持ち続けてもうだいぶたちます。

でも地域本部に問い合わせても誰もかれもが判で押したように「忙しい」と連呼し、金太郎飴のようなOne-size-fits-allなエッジの効かない目標しか作れないのは大企業病としては当たり前なのかもしれません。

 

一気通貫にバランスト・スコアカードにおまかせ?

ということで、「自分の居場所をより良くするためにはどういう目標がよろしいか」と考えるべく自分で読んでみたのがこちらの作品。


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バランスト・スコアカードと訳されていますが、私がよく読むテキストではBSCと略記されます。

で、全社をまとめ上げ、これを個人の評価にも適用でき、企業のVision/Missionを目指すことができるフレームワークがあるのか?というと、はい、それがBSCです、ということです。

 

BSCは、先ずは戦略やVision/Missionがあることを前提にしています。その前提に基づき、財務、顧客、内部プロセス、学習と四つのカテゴリでその戦略を実行する具体策や指標を考えます。これらの策や指標がカテゴリごとに有機的に結びつくような形を取ります。

 

例えば地域に貢献するナンバーワン愛されレストラン、みたいなビジョンがあるとします。

財務:粗利、収益性

顧客:顧客満足度、地消地産率、ブランド向上、食材鮮度の向上

内部プロセス:仕入れプロセスの効率化、地元食材のソーシング、未開発流通の開拓

学習と成長:戦略の認知、地方特色の学習、ロジスティックへの知見向上

適当に書いていますが、上記のようなアイテムがウォーターフォール的につながれば完成、ということだと思います。

 

本書ではそうしたBSCの導入に成功した米国企業・部署が多く収録されています。有名どころですとモービル石油とか、モトローラとかでしょうか。

 

実際はほぼ無理っぽい

しかしですが、このBSCですが実際は導入はめちゃくちゃ大変だと思います。自分の会社のことを考えるともう不可能。

まずもって経営者の負担が重い。BSCでは全員に戦略を理解させるところから始まります。要は根気良いトップダウンです。よくニュースとかで「全員が経営者」なんて言いますが、現実は末節に分断された職能の中に我々は生きているのであり、そうした人たちにVisionやMissionをかみ砕いて教え諭すことのできるマネジメントはそう多くはないと思います。

出来れば素晴らしいことであろうし、末端社員も会社に貢献しているというエンゲージメントも高まろうかと思いますが、実際にはそこまでしなくとも会社は動くし収益も相応に上がってしまうので導入に至らない可能性が高い。

 

また、ビジョンやミッションに結び付く各指標や数値目標等をすり合わせるリソースが確保できないと予想されます。

マネジメントは大概忙しいし、その下の人たちも同様だろうと思います。このBSCを事業部でまとめるのか、部門でまとめるのか、その規模にもよりますが、代案は出さないけど批判ばっかりするお偉方が多いと結局すり合わせが利かなくなり、もう完全にぽしゃることが予想できます。

 

とはいえ、やはり導入できたらきっと素敵なフレームワークです。トップマネジメントと一般事務が同じ目線でビジョンを共有できるなんてすばらしいなと個人的には思います。

 

おわりに

ということで、評価・評定・KPIに関連するBCSの書物でした。

フィージビリティは低めかもしれませんが、フレームワークとしては有名なようなので、関連業務の方が読んでも損はないのだと思います。

もともと学術書ということなのか、やはり訳が読みづらく感じました。近年の行動経済学とかの訳書とかと比較すると、これはもう訳はプロに任せた方が絶対良いのではと感じた次第です。

 

ちなみに本を読んでも、自分の会社にどういう目標が必要かなんてことはやっぱりわかりませんね笑 本はあくまでもフレームワークを学ぶものでした。当然ですが。

 

評価     ☆☆☆

2022/12/04

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