聖書関連の読書が続いています。
入門書は相応に読んだのですが、いまだに怖くて本チャンの聖書そのものには手が伸びていません。旧約の決定版?ともいうべき70人訳聖書も購入したのですが、その分厚さにおののき(8cmくらいかな。講談社学術文庫!)、「聖書の読み方」的な本から読んだ方が挫折しないかな、等々言い訳しつつ、聖書という円の中心をウロウロしているような状況です。
でそのウロウロとして選んだのがこちらの一冊です。
ひとこと
これまでいくつかの入門を読んできました。
こちらの作品の特徴を端的に言えば「聖書のあらすじ」、これに尽きます。
「あらすじ」にフォーカスして旧約・新約を文庫サイズに
入門書でよくあるのは、キリスト教の状況を概観したり、宗派の解説とかをしたりですね。
こちらはそうした概観は一切なく、その代わり、旧約新約ひっくるめて「あらすじ」にフォーカスしています。
知っている話もあれば、知らない話もありました。でも本当にわかりやすい。
また、粗筋で幾つかパターンがある場合にはキチンと解説が入っています。例えばキリストの誕生を祝福するのは「ルカ伝」では羊飼い、「マタイ伝」では東方の三博士でした。このようなパターンについての交通整理もきちんとなされています。
挿入図がよい
それと、要所要所に人間関係図や地図があり、これがよかった。
バビロン捕囚とかの粗筋も有名ですが、一体バビロンがどのあたりかってのもよくわかっていませんでした。小さな挿絵ですが地図が入っているとかなり違うと感じます。
また、アブラハム一族の家系図と対立関係とかもよくかけていて、筋を読みつつ、誰だっけこれ?となったら家系図に戻って位置づけを確認、とかできました。
ちなみに、旧約・新約ともそれを題材にした絵画もしばしば出てきました。ほとんどがローマのウフィツィ美術館やシスティーナ礼拝堂収蔵の絵画・壁画でした。ああ、イタリアに行ってみたい!
コラムが更なる興味をそそる
それから、これも面白かった。コラム。
例えば、ユダの位置づけについての話は興味深かった。ユダというのは一般には裏切り者でキリストをユダヤ教徒に売り渡したというイメージです。ところが実はユダというのはイエスに一番信頼されていた弟子であり、だからこそ裏切り役を仰せつかり、キリストの死によって「贖い」が完成するとかなんとか。つまり、「裏切り」はいわば「配役」であり、これなかりせば、キリスト教が完成しない。だからこそ一番信頼できる弟子にやらせた、と。
…まるでドラマみたいな話ですが、聖書の整合性や解釈にはかなりの広がりがあることが分かりました。
おわりに
ということで聖書のあらすじ本でした。
普通サイズの文庫本一冊にしっかり収まっており非常に良かったです。あと3回くらい読み返さないと覚えなさそうですが、聖書を概観するのには非常によいと思います。
図・絵などがたくさん入っており、旅行に行きたくなります。イエスの最後の足取りとか、イスラエルに行って辿ってみたいです(ビザとかいるんだろうなあ。下りないか)。あとは聖書本体を読み込んだら、イタリアに美術鑑賞にでも行きたいなあ。あ、お金も時間も無視して夢想してますからね。
評価 ☆☆☆☆
2023/06/24
文字がダメだという方はやはりマンガではないでしょうか?旧約だけですが、里中先生の作品はよかったです(もう半分以上忘れていますが)。
貴重な時間をいただき、ありがとうございました。