人は大切な人を失ったとき、どのようにすれば回復できるのか。
時間が解決してくれるというのは一つの真理かもしれません。しかし、喪失の傷はあまりに深いもので、どれほどの時間がかかるのか想像すらできません。
人が受けた傷は人によってしか癒されないかもしれない。本編でもそう仄めかされていますし、私も直観的にそう感じています。
あらすじ
因みにあらすじは以下の通り。兄を中3時に亡くして以来、もぬけの殻と化していた亮太の前に現れた小春。彼女の存在が亮太の心を開いていき、やがて2人は結ばれるが、彼女に病魔が襲う。超ザックリ言えばこんな感じ。
ベタベタの中に光る日常・存在の尊さ
暗いトピックで物語は幕を開けますが相変わらずユーモラスで、テンポよく人間関係を描いています。
あとがきで藤田氏が書いているように、形式としては恋愛小説。「喪失と再生」をテーマとして、その点では巷の小説と比べてもベタ中のベタな展開かもしれません。でも氏がこれまた指摘している通り、題名の「僕ら」「朝ごはん」「明日」というワードの中に日常の貴さや大切さを見出せる点が、本作を単なるベタな作品ではなく、より普遍的な価値を内在する作品へと昇華させていると思います(まあ「絆」「家族」「つながり」というのも陳腐でベタかもしれませんが)。
日常とは、人間関係という文脈で言えば、人を支え支えられてという絶えざる相互作用であり、その中で見いだせる幸せを楽しむことが大事なのだと思います。ビジネスパーソン的に言えば、日常の業務をたゆまずに積み重ねた上にしか大きな業績は残せない、と読むことができるのかな、と私は思いました。
まあ、いちいちそんな堅苦しく読む必要は全くないのですが、敢えていち夫、いちサラリーマンの立場からそう表現もできるかなと思った次第です。
おわりに
本作は読書が苦手な子供たち用に買いました。
瀬尾さんの作品は家族がテーマで、その家族にまあまあ酷い事態が起こるのに、そこをユーモラスに乗り越えるという流れがちょっと癖になります。マンネリズムかもしれませんがそういうマンネリは大好きです。克己というかovercomeするという状況描写に勇気がもらえます。
子どもから大人まで楽しく読めるほっこりする作品であると思います。
評価 ☆☆☆☆
2021/10/23