今更ですが、気付きました。
「最近俺、英語の本、全然読んでない! 今年になって5か月目でわずか二冊!」
昨年は結構調子よく読んでいたんですよね。ひと月に一冊ペースくらいで。
今年は年初から日本に帰っていて、どうしても日本語の読書に引っ張られた気がします(もちろん言い訳)。
しっかし、これを考えると、日本にいて英語学習を続ける人とか、ムスコの言葉遣いでいえば、「神!」ですよね。そのモチベーション!もう尊敬します。
ちなみに本作、かれこれ3年前くらいに娘に無理やり買った本でした。当時はReader’s Digestを定期購読して英語の強化に勤しんでいまして、その書評欄に掲載されていたのが本作。面白そうだと思ったものの、とても自分で読み切れる自信がなかったので娘に押し付けて「読んだら感想教えて」って。
3年たって、娘は日本の高校に進学し、残された本を手に、過去を思い出しました。何とか、このくらいの本なら読み通せるくらいの我慢ができるようになりました笑
パワーカップルの子育て悲喜こもごも
子育て。難しいものです。自分だって、ついこの前まで(というか今だって)子どもの感覚だったのに、自分が子育て?って感じです。
そのうえ子どもが、こだわりが強い・かんしゃくもち・結果学校からの呼び出し多数・連れ合い(妻・夫)から文句多数、こんな状況だったら、子育てどころか夫婦関係すら危ぶまれるところです。
ということで本作は、そんな夫婦共働き家庭でちょっとくせのある子供を懸命に育てる、というお話です。
あらすじ
主人公のDonはアスペ持ちの遺伝学者。勤務先の大学で誤解をもとにしたイザコザがあり、査問にかかります。弁明も面倒になったころに息子のHudson(小学6年)の学校から呼び出し電話。お宅のムスコさん、ちょっと自閉症気味なんじゃないですか?協調性とかないですし、一度検査を受けられることをお勧めします、そうすれば学校側もそれなりの扱いが可能になります、みたいなことを言われてしまいます。
困ったDonですが、この機会を利用し大学を去り、当時パートタイムで働く奥様のRosie(医師)にフルタイムでの仕事を勧め、本人が息子の送迎や料理・家事のほか、息子の社会化訓練をも行い、さらに夜には得意のカクテル作りを生かすべく、バーを開くことを画策。さて、結果はいかに・・・
レッテルに負けない強い意志に、心震わされる
ちょっと感じたのは、いやいや、オヤジがここまでする(しなきゃならない)のか!?って。
自身がアスペでこだわりが強く、友人のいない高校生活を経験し死ぬほどつまらなかった、だから息子には決してそんな気持ちを抱かせたくない。加えて息子が自閉症の疑い(autistic)と学校から言われ、信じたくない気持ちもありつつ、息子がきちんと学校社会に受け入れられる・馴染むような方法を、息子に教えようと躍起になります。
手始めは自転車に乗ることとか、ボールの投げ方とか、まあ小学生らしい話ですが、次第に更なる社会化レッスンを友人・知人にアウトソースしはじめます。服装とか、釣りとか、他人との挨拶や女性との挨拶とか。
なんかね、ちょっと胸が息苦しくなります。
本人は、アスペルガーという他人と違うというラベルを張られた後でも、きちんと社会になじむべく、自分と社会との関係や相手の気持ちを類推するよう必死で努力してきたんですね。
親の、子を思う気持ちの健気さもそうですし、現状に甘んじず社会への適応をきちんと考えているって、すごいです。身につまされます。
友人多いなあ・・・
そんなDonが、非常に人的資本(つまり友人・知人・つて)に富んでいるということに、物語を読み進めるあいだに気づきました。これってすごくないでしょか。息子の社会化教育のために、これでもかと知人を総動員。
本作は物語ですから、まあミラクルな雰囲気はありますよ。とはいえ、自己の友人知人の少なさを鑑みるに、自分こそ何か欠陥があるのではと今更ながら不安になります(遅いよ)。友人関係を維持しようとする気力も年追うごとに希薄になりつつある気もしますし。
子供たちが自分の好きなことが分からぬまま、ぼんやりと高校に通っていることを思うと、無駄に主人公と自分とを比較し(てかフィクションだって)、やはり親力が足らなかったかと、少しネガティブになります。
ちょいネタバレ
ちなみにですが、本作結末はハッピーエンドです。息子のHudsonは素晴らしいBoyに成長するわけですが、そうした精神的進化は、以前読んだ「ワンダー」(英語も)に相通ずるものがありますね。最後は涙目です。
英語
ちなみに英語は、やや難しいと感じました。
単語が難しいのではなく、ちょっとした言い回しが句動詞や平易な単語で表現されていたりして、逆に明示的でなくて、度々筋を見失いがちになりました。
でも、学者然とした(というより学者そのものですが)Donの語り、常に冷静でロジカルに状況を言語化しようとしている雰囲気は英語でも伝わってきて面白かったです。
おわりに
ということで、今回もお初の作家さんでした。どうやらオーストラリアの方みたいです。それでか舞台はメルボルンです。いいところですよね。
もともとはROSIE PROJECTという作品があって本編は続編となりますが、本編からでも十分に楽しめます。
本作、夫婦共働きの方、子育てで苦労されている方、ファミリー話が好きな方(瀬尾まい子さんとか重松清さんとか)、はたまたオーストラリアにご縁があるかたは楽しめる作品だと思います。おすすめです。
評価 ☆☆☆☆
2023/05/04
ワンダー、こちらも英語で読んでほしいです。親冥利に尽きる子供の成長。
人的資本・人とのつながりの強さを今後の社会に必要とした宮台氏を想起。
貴重なお時間を頂きまして、ありがとうございました。