海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

リベラルアーツは新たな実学か?ただし条件付? |『自由になるための技術 リベラルアーツ』山口周

連休ですね。
私の居所も、ラマダンが終わり、何のかのと祝日が続いておりましたが、そろそろ来週から通常営業になる模様です。

って気づいたらもう今年も4か月終了しているって、皆さんご存じでした?一年の1/3ですよ! 年初に立てた目標を見返し、ため息をつき、不貞腐れてAmazonを見ていて、たまたま安かった本作をぽちっとやりました。最近よくお名前もお見掛けしますしね。

 


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ひとこと

初めて山口氏の著作、といっても過半は対談集ですが、を読みました。

実直な感想は、うーん、って感じです。もやもや。しっくり来ていません。私も、リベラルアーツは大事だと思いますが、別に声高に役にたつと言わないでもいい気もするんです。なんというか、リベラルアーツに関する誤解が広まりそうというか。。。。

ただ、対談の相手は結構豪華なので、有名人の考えの一端を多く味わえるので、そこはお得感がありました。

 

実力(ビジネス力)があって初めて活きるリベラルアーツ

そもそもリベラルアーツって、何でしょうか。

自由学芸とか、教養とか、己を自由にする学問等々、各種定義があります。より具体的には歴史、文学、哲学、美学など人間の思索の足跡を辿り学ぶことではないかと個人的には思います。いや、よくわかんないですよ。

 

山口氏は、先の読めない現代(なんて物言いは常に言われている気もしますが)は、いわゆる実学よりも、リベラルアーツを学ぶことで、その不確実な状況に適切な対応ができるっていう主旨のことをおっしゃりたいみたいですが、どうなんでしょうか。

私の上の理解が正しいとすると、これは少しミスリーディングな気がします。

 

誤:「リベラルアーツを学ぶと、不確実性を乗り切れるできるビジネスマンになる」

正:「できるビジネスマンがリベラルアーツを学ぶと、不確実性を乗り切れるような、よりできるビジネスマンになる」

こうではないでしょうか(誤解はあろうかとは思いますが)。

 

私も、哲学で院までいっちゃいましたが、それでうまくいったビジネスなどあったかなあと(教養が足りてないってだけでしょうが)。近年おじさん化が進み、歴史まで好きになってきましたが、たんなる蘊蓄好きの面倒な奴に成り下がっているやもしれません。

え?何が言いたいかって?要はリベラルアーツだけではダメっなんだと思います

 

他方、ギラギラとお金大好きって感じのビジネスマンが、でかいディールを決めて(あるいはキめた上司をおだてて)The world is your oysterなどとシェースクピアなんかをそらんじたら、それは少しポイントが高いかもしれません。ただ、あくまで欧州の一部のエリート層とやり取りがある方限定な感じがします。

 

結局、こうではないでしょか。
教養は役に立つかもだけど、あくまで実力の裏付けがないと活きない。どうでしょうか。

 

ちなみに、AIがビックデータをガシガシ溜め込み、過去の歴史や文芸作品を解釈し、不確実な状況状況で、「このような状況ではaの決断でうまくいった場合は76%, bの決断でうまくいった場合は22%, それ以外の方法でうまくいった場合は2%、具体的な事例としてはaで有名なのは~」なーんて、不確実な現実を前にSIRIやグーグルAIがサポートする日が来るかもしれません。バッテリーが常にあることが前提ですが。

 

教養学部を卒業してもリベラルアーツは身につかない?

あと、リベラルアーツという話をしていると、勢い学校教育の話に関連すると思います。対談相手も出口さん(立命館APU学長)、中西教授(京大名誉教授)、橋爪教授(東工大名誉教授)、菊澤教授(慶大名誉教授)とアカデミズムの大御所たちがこぞって登壇。

でもこれ、教養学部を卒業したとか上の先生らに師事したら、不確実性にばっちり対応できるデキメンになるって、そういうわけではないと思いますので、悪しからず。

その点、出口さん、いいことおっしゃってて、「人・本・旅を通じて学び続けることが必要なのですね」(位置907)とおっしゃっています。これには激しく同意。付言すれば、興味を持ち続けたうえで相当な時間をかけないとリベラルアーツは学びきれないし身につかないのではないでしょうか。

 

個人的には、そうした「学び続ける」種を植えること、周囲や外界への興味を持たせるような学校教育が展開されるといいなあと思います。その点、小中高で先生という職業はある意味非常に責任のある職ですよね。先生方、本当にお疲れ様です。

 

おわりに

ということで初めて山口氏の作品を読みました。

リベラルアーツ実学とを対比的に述べているようですが、リベラルアーツを「ビジネスに役立つから」とか「不確実性に対応するため」とか、そういう理由付けした時点でリベラルアーツ実学の一つになってしまうようで。あ、というかリベラルアーツは新しい実学だ、ってそういう主張だったのか? 今更主旨を理解できました。

 

ということで本作、蘊蓄好きの方々、何か勉強したいなあと思っている方、進路に悩む中高生、教育に関する方々等は読んで面白いのではないでしょうか。

 

評価     ☆☆☆

2023/05/01

 

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