同棲というと、私も彼女(今の嫁)と同棲していましたっけ。大学生でした。
でも一緒に暮らすと、まあ嫌なところが目立つもの。同棲解消しましたよ。
彼女は就職、私はわざわざ地方の大学院を受験という形で。彼女は東京の会社へ、私は関西へ進学しました。
今回読んだのはそんな「同棲解消」の最後の晩の話です。
同棲解消の日、何を話しますか?
恩田さん、たまに??という題名をつけられることがある気がします。『三月は深き紅の淵を』とか『麦の海に沈む果実』とか。もちろんあれは、タイトルが本の名称だったりして、作品中に出てきていたりしました。で、今回のは何??という感じ。よくわかりません。
ただ、本作やはり面白い!登場人物はわずか二人。同棲を解消し別れるカップルの最終日の話。
次第に明らかになる二人の関係性
ただし、これが何やら不穏な空気。
え?お前が殺したんだろ? いや、あなたが殺したんでしょ?
・・・どうやら誰か一人死んでいるらしい。
何やら実に奥歯の挟まったようないわくありげな空気から物語は始まります。次第に二人の関係が明らかになり、さらに、言及されている亡くなったという男性との関係性が明らかに。このあたりはエンタメ性たっぷりで楽しく読めます。
驚くべき展開力。舞台をイメージします
話はまだまだ続きますが、たった二人の舞台で、過去への回想と会話とで一冊持たせるってのがすごいですよね。やや劇ががっているものの、それもまた安定のスリルというか心地よい予定調和。
最後には、当初惜別の感もあった最終夜も、一種白けたような無気力のような夜明けに。障害のある恋は燃え上がるものの、その障害がなくなった途端、相手の欠点ばかりが見えるようになり覚めた、みたいな。これはこれで恋(そしてストーリ)の終わり方としてはなかなか斬新でした。
おわりに
ということで、日本で買い込んだストックから、恩田さんの作品を読みました。
いつも思うのですが、恩田さん、結構変わった設定・構成に果敢に挑戦しますよね。舞台のような作品で、シンプルな設定も、ぐいぐい読ませる作品でした。
本作、悲恋好きなかた、別れ話が好きな方、演劇が好きな方、等々にはおすすめできると思います。
評価 ☆☆☆☆
2023/05/16