海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

夢を題材にした、普通に面白いモダンホラー―『夢違』著:恩田陸


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あらすじ 

 作品の舞台では人類は夢の内容を録画することができ、それを専門家が判断したり分析したりできる。その黎明期に登場した古藤結衣子は自身の見る凶兆が夢に現れることを自覚し、夢札を引くことを申し出る。世間の好奇の目に晒されつつこれを苛み、渦中で事故死した結衣子と、彼女の婚約者の弟で夢判断を職業とする浩章。結衣子の死後10年以上が経ち、奇妙な事件と被害者たちの夢との関係が明らかになるにつれ、浩章は再び周囲に結衣子の存在を感じ始める。

 

感想

 いやあ、面白かった。ジャンルを強いて言えば、SF系モダンホラーと言っていいでしょうか。

 子供達の課題図書を探すためという口実からせっせと氏の作品を読んでいましたが、今回は背筋がぞくぞくする、ちょっと怖めの作品でした。

 夢をテーマにしたモダンホラーですが、SF要素あり、恋愛要素あり、探偵的要素もあり、それでもやっぱり背筋がぞっとするテイストでした。

 

夢というテーマが怖面白い

 作品の魅力は、やはり『夢』をテーマにしたことでしょうか。

 意識的には見ることができない、コントロールができないものであるという点に、夢の魅力があるように思います。そうした夢という自己の産物と現実との境界が薄くなった時、夢ははたして自分の産物かあるいは外からやってくるのか、あるいは集団的意識が雰囲気と同じように『夢』を同時に見るのか等、夢を通じての意識や集団とのつながり、現実と非現実の境界などについても上手に描かれています。

 

 また発展的な話題として、夢を通じて人をコントロールする可能性、夢というプライバシーをどう守るか。夢と現実、ひいては自己と外との境界はどこか(そもそもそんな境界はあるのか)等のトピックも読中ふと頭をよぎりました。

 

おわりに

 結末は恩田氏らしい、爽やかで後味の良い終わり方でした。

 野暮な教訓や意味を考えず、単純にエンターテイメントとして楽しみたい作品だと思います。ただ、読後はちょっと寝るのが怖くなります笑 って昨日も爆睡しましたが。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/04/10

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