概要
米スタンフォード大スポーツ医局でアソシエイトディレクターとしてアスリートのサポートを10年以上に渡り行ってきた山田知生氏によるコンディショニング本。疲れからの回復法や疲れづらい体づくりを提唱している。
感想
無事これ名馬なり。30歳前後で立て続けに病気やらケガやらで入院した時、当時の上司からかけられた言葉です。サラリーマンは、会社に姿を見せてこそ価値も示せる。仮に優秀であっても欠席してヘッドカウントに計算できないと評価もできない。彼はそう言いました。
中高と運動部だったことで体力に自信がありましたが、それ以来、自分の健康には寧ろ疑うようになりました。さらに老境が見えているアラフィフの今、運動・睡眠・食事のバランスには日頃気を付けてはいましたが、どうも定期的にやる気がなくなったり、疲れを感じることが多く感じ、今回本書を買い求めました。
実は本作のことは前から聞いてはいましたが、タイトルの『スタンフォード式』というのがとても嫌で購入を避けてきました。マッキンゼー式とか、東大式とか、読んでわかるくらいなら今頃私も東大卒のマッキンゼー勤務ですよ!凡人には参考になるはずねえよとひがみで避けてきました笑(コドモですねぇ)。
しかし本作は、読んでみると非常に穏当かつwell-balancedであり、超人的な人のやり方を紹介しているものでもありませんでした。
呼吸法で体を鍛える
先ず類書に見なかった点で言うと、「IAP(Internal Abdominal Pressure)」呼吸法に注目している点です。これは横隔膜を下げて(おなかを凹ませず)呼吸をすることで、腹腔内圧を保ち、これが体幹を強化しバランスを保ち、結果無理な姿勢からくる疲れを防げるというものです。
この呼吸法についての理論的な説明はそこまで詳しく描かれていないのですが、常に行う呼吸ですから効果があれが相当デカいはずです。食事だって一日くらいは断食できますが呼吸は止めることができません。インパクトで言うと食事より大きいハズです。
体のバランスをとることで負担を体にかけない
また上記と被りますが、著者の方向性として体のバランスが崩れることで、一部に負担がかかり、それが体の疲労を引き起こすとしています。裏を返せばなるべくバランスの良いからだを作り、負荷がかかっても体に均一に負荷をかけ、結果として回復しない部分を残さないという方向です。このためのエクササイズが複数紹介されています。個人的にはなるほどと思うしマネてみたくなりました。
一部疑問符をつけたくなる内容も
他方で、睡眠についてはよくわからない部分もありました。例えば筆者はウサイン・ボルトやレブロン・ジェームスが12時間寝ていることを挙げつつ、7時間睡眠(最低でも6時間)の睡眠を勧めています。睡眠が疲労解消には必要なのは議論の余地はありませんが、どの程度必要であるかは個人差やアスリートとの違いもあり、なかなか確言しづらいと思いました。私個人は「睡眠負債」の考えを紹介している三島和夫氏の『睡眠と覚醒 最高の習慣』が参考にしており、個々人にあった睡眠時間をとればよいのではないかと思います。
終わりに
本書はコンディションを整えるということでも、特に疲れにフォーカスを置き、疲れをとる或いは疲れにくくするという方法について述べた良書だと思います。呼吸法の理論的背景が欠けてていたり、トレーナーなしでコンディションやを維持するかにまでは配慮されていなかったりしますが、自ら内容を咀嚼して一部を取り入れるという使い方ができる人には有用であると思いました。
評価 ☆☆☆
2020/09/06