海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年は世界史と英語を勉強します!

親日はうれしいけど、真の融和はどうすれば可能か分からない―『親日派のための弁明』著:キム・ワンソプ 訳:荒木和弘、荒木信子

大日本帝国が20世紀初頭から第二次世界大戦までに繰り広げた蛮行に関し、メディアで報道されるたびに、その子孫の一人である私は悲しくなります。

 

学校でも習うし、きっとそんな蛮行は本当なんだろうなとは思いますが、本当に悪いことだけだったのか、という疑問も頭の片隅にはあります。

 

そうした疑問がある人には、今後の読書の参考になるような本です。

 


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作者は日本とは縁もゆかりもない韓国人の方のようで、ソウル大物理学部出身というからきっとエリートだと思います。ただ、意見は相当ドラスティックであり、韓国で禁書となるのも納得の内容でした。

 

その幾つかをかいつまんで述べれば、日本の韓国併合は合法、併合により韓国は発展した、寧ろ併合が続いていれば今頃もっと発展していた、韓国の歴史教育は世界の非常識、等々です。

 

日本による併合は避けられなかったか!?

中盤では1800年代後半からの韓国の歴史について大分細かく振り返っていますが、韓国は近代で大分混乱しているという印象です。王族と姻族の支配、反抗する新知識人や宗教団体、ないしは農民一揆。さらに開港により入ってくる日本と清、さらには北からロシアの陰が見え隠れする。

 

歴史では日本が韓国を併合したのですが、本書の記述が正しければ、日本でなくても、いずれは清かロシアが併合しようとしたでしょうし、地政学的にロシアや清に出張られたくない日本としては、当時の帝国主義的雰囲気を鑑みれば併合以外の選択はちょっと考えづらいかなと感じました。

 

加えて、筆者は日本の正当性を主張します。韓国併合にせよ、終戦後の日韓基本条約にせよ、条約として締結されたのだから、そこから派生する事象について文句を言うのもおかしい、とする。

この考えは理解はできるもの、強者の理論ともいえると思います。首根っこをつかまれた状態でそこに自由はなかった(条約締結をせざるを得なかった)ともいえると感じました。

 

このような大分ドラスティックな議論が続きます。。。

 

おわりに

私には残念ながら友人と呼べるような韓国人はいません。ですので一般の方がどんな形で日本をとらえているのかが分かりません。ただ、日本の事が悪く言われているとすればそれは悲しいことだと思います。

日本も嫌なところは色々ありますが、悪いところだけでもないし良いところもあるということは、もっと多くの韓国の方にわかってほしいなあ。

そういうのはどうすれば可能なのか。

やはりともに過ごす・理解する・学ぶという、時間や経験の共有以外には思い浮かばない・・・・。韓国人の友人、いないけど。。。

 

そんな会話や議論ができる日が私に来るのかはわかりません。
少なくとも私がやれること、それは儒教やアジアの歴史も勉強くらいかなあ。
韓国人の友人できないかなあ。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/08/12

正しいとは何か?んなの分からないよ!!―『これから「正義」の話をしよう』著:マイケル・サンデル 訳:鬼沢忍

今から約10年程前の作品。あのころは非常に盛り上がっていたように思います。
コロナやオリンピックで騒がしい昨今、古本屋に並んでいた本作に、ブームは完全に去ったと判断し、そろそろ読んでみようと思い手に取りました。

 


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しかしまた長いタイトル。原題は”Justice - what’s the Right Thing To do”であります。英語のタイトルの方が伝わりやすそう。

 

グローバル化が進む中、価値観の多様化は社会で広く受け入れられつつあると感じます。しかし、多くの倫理的疑問が世の中には残っています。そうした疑問に対し、社会としての正しい判断、つまり「正義」とは何か、を過去の哲学者の思想を紐解きつつ考えるものです。

 

社会には倫理的疑問がたくさん

例えばですよ。自然災害に伴う便乗値上げは許されるか。リーマン後に公的資金の入ったAIGの幹部のうち37人が100万ドル以上のボーナスを受け取る予定であったがこれは正しいことなのか。最大多数の最大幸福は正しいか(ローマのコロッセウムでキリスト教徒とライオンとの対決を民衆が喜んで開催を求めるのなら、少数派としてのキリスト教徒がむざむざと殺されることは正しいことなのか)。そもそも多数決は正しいのか。究極の個人主義の下、本人の意思でにより臓器を売ること、売春をすること、自殺することは容認できることか。嘘は良くないことだが、人殺しを目の前しても嘘をつかない方がよいのか。入学試験などにおける実力主義は本当に実力だけか(公平と言えるか)。アファーマティブアクションは公平か。今を生きる米国の白人は、祖先の行った奴隷への行為に対して責任があるのか。あるいは、我々日本人にも、祖父や曾祖父が第二次世界大戦中に中国・東南アジアで行った残虐行為の責任をいまだに持つべき・持っているのか。

 

飲み屋で議論していたならば、「まあ、世の中難しいよな」とうやむやな終わり方をすること必須の疑問の数々。

 

ある意味哲学・倫理学入門

こうした疑問に対して、有名どころを引っ張って議論を深めます。

ベンサム功利主義 ・・・ 最大多数の最大幸福。筆者によると×。多数の幸福のために一部の人間が犠牲になる。最大多数が求めていた幸福が誤ったものである可能性もある。

カント(定言命法 ・・・ 「万人に当てはめても矛盾が生じないような原則のみに従うことを求め」(P.157)るあり方。ごめんなさい。難しくて表現しきれません。でも、「人それぞれだよねー」ではなく「皆にとって当てはまるような法則にしたがう」的な感じ。

ロールズ実力主義+格差補正) ・・・ 何でもかんでも自由競争って、そもそも競争する前から与件に差があるでしょ? だからアファーマティブ・アクションも容認、というような考え。反論としては、実力のある人が能力を発揮することをやめる可能性(医師を目指していたが、非優遇なので医師はやめとこうとか)等々。

 

他にもアリストテレスの考えとかも書かれていますが、このあたりにしておきます。

 

おわりに

勿論しらふで読んだのですが、結局「世の中難しいわな」というのが感想です。哲学者の思想もきちんと理解できたわけでもないです。今後ほかの本を読んでもどこまで理解できるかはちょっと自信もありませんが。。。

 

でも、こう考えると裁判官って本当に難しい仕事なのだと思います。条文や憲法に当てはまる・当てはまらないという判断以外にも、こうした哲学的倫理的思索がないと双方納得のゆく判決なぞは到底不可能だろうなと感じました。倫理学者と同じくらい実践的に首尾一貫した論理と倫理を持たなければ仕事にならないなあと(そもそも人間ごときが人を裁くなんておかしい、というのは抜きにして)。米国のアファーマティブ・アクションの項を読んでいて特に感じました。

同様に政治家や官僚も、こうした思想的素養がないと良い仕事はできないだろうな、と感じました。

 

ということで、ちょっと難しめの本ですが、具体例も多く、哲学・倫理学の入門書として有用だと思いました。思想に興味がある方、「正しい」とか「正義」とかについて議論したい方、法律や社会・政治に興味がある方、自由に興味があるかた、このような方にはおすすめできる本だと思います。

人生という判断の連続を今後も続ける中、多くのジレンマや対する考え方について思索をするのは無駄ではないとは思います。あなたが当事者ならどうするか?そんな思考練習ができる本です。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/08/08

ユニークなキャラたちが雪山でひと騒動(サスペンス系)- 『疾風ロンド』著:東野圭吾

妙に寝つきが悪い晩、読みかけの本を一冊読み切り、それでも眠れず読み始めたのがこちら。ふて寝ならぬ、ふて夜更かしを決め込み、あっという間に読了。

 


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雪山を舞台にしたスリラーであるこの作品、東野作品としては安定した楽しさを味わえる一方、既視感にも似た感覚も感じました。

 

読めない筋書きと人物の面白さ

まず面白かったのは筋の読めなさ。

大学研究所で無許可で開発してしまった細菌兵器を持ち出され、脅迫される研究所責任者。なんと細菌兵器は雪山に隠されます。ところが、事件の犯人、脅迫メールを送ると程なく死んでしまいます。これを上司から指示を受けた、研究所の冴えないおっさん栗林が、スノボ得意な息子秀人に事実を隠しつつ共に探しに出るという筋書きです。

まさか犯人が先ず死んでしまうなんて、斬新だなあと感じました。

 

それと、キャラが立っていて面白い。

本作の主役格は、この冴えない研究所のおっさん栗原に見えます。栗原はだいぶ抜けているし、出世しきれない残念な雰囲気に愛嬌を感じさせます。ほかにも、彼が後に頼ることになる雪山パトロール隊の根津も同じく主役格です。雪山パトロールという職業が実際どういう苦労があるのか等は普通は知らないものですし、そういうキャラにフォーカスを当てているところに面白さを感じました。

 

他にも根津とスノボプレーヤーとのロマンスや、栗林の息子の秀人が地元スキーヤー育美へ抱く淡い恋心なども単なるスリラーにとどまらないを添えていると思います。

 

これまで読んだ作品とダブるところも

他方、どうも前に読んだような設定、と思うような既視感を感じてしまったことも事実。

まず雪山が舞台だったりスキーヤーにフォーカスが当たるといえば『カッコウの卵は誰のもの』とダブります。また、限られた時間内にテロを阻止するという構図は『天空の蜂』そのもの。

東野作品はたぶん10作程度しか読んでいないと思いますが、たまたまなのか似たような作品を書く作家さんなのかはよくわかりません。たまたまであることを願いますが。

 

 

lifewithbooks.hateblo.jp

 

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 おわりに

ただの読者ですので尊大な言い方になりかねず申し訳ないのですが、普通に面白かったです。ただ、それ以上でも以下でもないと感じました

雪山にはそこまで興味はないのですが、弱気な態度と子供の年齢設定から、研究所の栗林に感情移入しながら読みました。思春期の子どもとのコニュニケーションって難しいよなとか、だけど一緒に旅行なんて(まあ仕事だけど)羨ましいなあとか、そんなこと考えながら読みました。

 

スキー・スノボが好きな方、思春期の息子さんがいるご家庭等にはおすすめできる本だと思います。

 

評価 ☆☆☆

2021/08/08

ミステリの名作。作品が面白く英語でもどんどん読める。―『MURDER ON THE ORIENT EXPRESS』著:AGATHA CHRISTIE

娘が学校の友人から借りてきて激賞していたので、そうなんだぁー、へー、と言いつつ自分も読んでみたくなり、早速試してみた次第です。

 
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因みにこちらのジャケはインド亜大陸特別版とのことです。買ったのは東南アジアですが。

 

名前はよく聞いていましたし、ひょっとしてどこかでドラマ化でもしていたら見ているかも、と思いつつ読み始めましたが、読んだことはなかったようです。

 

高級寝台列車で起こる殺人ミステリーですが、90年ほど前に書かれたとは思えないほど現代風で普通に面白かったです。

 

時代背景を深読み

個人的には1933年初版という情報が世界史と絡めて想像を掻き立てました。

 

大恐慌ウォール街が話題に出ていたりとか。登場人物がお酒を隠し持っているのも禁酒法の名残だよね、とか。フランス国籍を取得した亡命ロシア婦人はロシア革命(共産化!)の影響があるのか?、とか。その婦人の下で働くのがドイツ人であるというのも、ひょっとして一次大戦でドイツがメタメタになったのでドイツ人も下働きに出るのかな?とか。インド帰りの英国人将校というのも、帝国主義時代を感じさせます。

 

このあたりの人物がバラエティに富むのは本作の肝でもあるので是非読んでどんでん返しを味わって頂きたいです。

 

アガサの英語

英語で読むにあたっては、単語はボキャブラリのストックがないと難しいと感じました。でも文法は難しくないので結構どんどん読めます。章も細かく区切ってあるので、読書計画を立てたりもしやすいと思いました。

 

少し閉口したのはやはりフランス語。eh bien とかmon cherなどはいいけど、いちいちフランス語が出てくるので、私は張り合ってポケット仏語辞典で懸命に引きました。

 

あと代名詞が少し特徴あったかな。

日本の中学英語よろしく二回目の人物名称は代名詞、と言うような感じで代名詞が多用されるので、2人の男性の会話で、このHeはどっちだ?みたいなシーンが結構ありました。

 

まあでも日本語訳が多いのはいいですよね。日本語訳を先ず読んで、その後原書を読む、あるいは原書を読んでから翻訳で復習、などどちらもできるなあと思いました。映画やドラマ化作品ももちろん使えますね。

 

おわりに

多くの方がブログやツイッターなどSNSで感想を書かれている本作。作品そのものの魅力もありますが、他人がどのように感じているのかの違いも分かり、二次マテリアルを味わうことができ、それもまた一興。

 

honzaru.hatenablog.com

nmukkun.hatenablog.com 

 古典ミステリとも呼べる作品ですが、原書で読まれている方は意外と少ないのではと思います。英語の他、フランス語もちゃんぽんで入り、欧州の香りが湧き立つ作品だと思います。是非原書で味わってみてはいかがでしょうか。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/08/05

 

 

自由主義の成立は中国から!?今後の日本を考える良書―『中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史』著:與那覇潤


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購入して通読二度目。相変わらず面白い。

 

lifewithbooks.hateblo.jp

 

 本作は歴史書の顔と日本論の二つの顔を持つと言えますが、そのどちらの切り口も非常に興味深いものだと思います。

 

中国化とは自由主義のこと!?

史書としては「中国化」の概念の導入。

宋代以降の中国にこそ自由主義の形が形成され、皇帝による支配と理念の体現(中華思想朱子学)および活動の自由というセットを提示。自由主義はこの時すでに完成していると言えます。アメリカで言えば、理念としては「自由」、そしてあとは個人の競争(自由主義)でどうぞと。現代中国は政治としては共産党一党独裁も、経済活動は自由主義。とこのような感じ。政治的に逆らわない限り経済は自由、これぞ自由主義

 

中国は隋や唐では皇帝もおり科挙もありましたが彼らは中心ではなく、実質は門閥貴族の支配であったとされます(日本だと平安時代藤原氏のイメージでしょうか)。この体制は宋代に入り大幅に変化、強力な皇帝と彼に面談(殿試)を受けた科挙合格者(官僚)たちによる独裁支配により権力の掌握が完成します。所謂貴族的既得権益を守るコネ的地域社会を壊し、マーケットでの流動性や才覚を重視した社会が志向されます。

 

日本:エド的固定的村社会への郷愁から逃れられない

これに対し、日本は反藤原氏としての平家による「中国化」が潰され、鎌倉幕府によるムラ社会化・封建体制が構築、江戸時代にその頂点を見ます。そこでは封建制が利き、褒賞としての土地・地位は固定され、武士は名誉はあるが困窮し、商人は金はあるが名誉がない、農家の次男坊以下は土地ももらえず結婚もできずワーキングプアとして都市へ流れ込む、などの総不満社会であったとします。我々がイメージする江戸文化が咲き誇る素敵な時代、とは全く違いますね。

 

そのため明治維新は農家や武家の次男三男が中心となり勃興します。筆者はこうした不満分子を「パンクロッカー」に例えています。捨てるものがない向う見ずな不満分子ですね。維新以降、確かに自由な社会になりますが、当時はセーフティーネットもなく、これはこれで別の不満分子も生まれます。不満分子は江戸時代の守られた固定的な社会を志向します。

 

その後、江戸時代への揺り戻しが社会主義の隆盛とともに現れたり、日本国民という理念に訴える軍国主義全体主義などを経て先の大戦敗戦終了から現代へと歩を進めます。

 

今後日本はどうあるべきか

この近現代の中途半端な日本社会の特長を筆者は「ブロン」と呼び、江戸的封建社会自由主義社会の「いいとこどり」の失敗バージョンとします。「わるいところどり」ですね。言ったら、何かあるたびに空気を読めと言われる割に、人が困ると助けもなく自己責任とするような社会でしょうか。

 

筆者は中国化(自由主義化)は避けられないとしつつも、どのような社会が良いのかについてはハッキリと明言していないように見えます。一つの策としてベーシック・インカムに言及していますが、ねじれた年金制度の着地点としてはありうる案だとは思います。

 

おわりに

改めてこういう作品は好きです。

斬新なアイディアと多くの文献への言及は非常に参考になります。他に読んでみたい本が沢山できました。書き方がシニカルなのが多少気になりますが、歴史をしっかり勉強せえという毒もあるのでしょう。また、歴史に依拠したうえでどういう社会が良いのかを考える議論を喚起したい、という想いもあるようです。

 

歴史好き、政治好き、議論好き、将来の日本に漠たる不安のある人等々には是非読んでほしい一冊です。私もまた時間をおいて再読したいと思います。非常に知的ドライブ感を感じる作品であると思います。

 

評価 ☆☆☆☆☆

2021/07/31

ジェンナー伝を読んで、ワクチンやら自己決定権やら相互理解をつらつらと。―『ジェンナー伝』著:小酒井不木

コロナ禍の下、これほどまでに予防接種について世間が関心を持ったことは、私の40年強の人生ではなかっと思います。

 

ジェンナーは世界史でほんの一瞬ちらっと「予防接種の祖」、のような説明で出てきて興味が湧きました。ジェンナーについて知りたいなと思って調べてみたのですが、あいにく気に入ったものがAmazonでは見つからず、Kindle青空文庫パブリックドメイン)の子供向け伝記ものが発見できたため、これを読んでみた次第です。

 

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30分で読める短いものですが、非常に面白かったです。

青空文庫は大抵のものは古く、言葉遣いがほぼ古文の域の作品もしばしばですが、本作は口語調で実に分かりやすい。

 

若き医師ジェンナーの時代、英国では天然痘が散発的に流行していた。とある牧場のおばさんから、牛痘(ウシの水疱瘡?みたいな)にかかったら天然痘にはかからないという噂を聞き、予防接種のアイディアを思い浮かんだそうで。

 

これを自分で、そして息子でも試すという。誠実でもあるが、今なら児童虐待でしょうね。現代では治験者のバイトがあるので、いわば不具合のリスクは金銭で交換されている事実があり、製薬の過程やワクチン・予防接種の仕組みについてもっと知りたくなりました。

 

・・・

閑話休題

 

コロナ禍の中、ワクチンには多くの意見がありました(過去形ではありませんね)。陰謀論、ワクチン有害論、不妊説、副反応等々。

 

この混乱で分かったのは、予防接種は完全に安全だというのは私の勝手な妄信で、メディアでは実に巧妙に「極めて安全」などの言明になっていたことです。100万人に数人の副反応という話を信じるのならば(ごめんなさい。この数字は出所不明。記憶ちがいかも)、このような状況下で全国民が打つような事態に至れば約1.2億人の人口の内、120人(100万人に1人の割合で計算 ; 死亡率0.0001%)がワクチンを原因に亡くなられることになります。

news.yahoo.co.jp

他方、現在国民のすべてが感染リスクに晒される中、今時点でのコロナ感染死亡率を[累計コロナ死亡者数÷国民数]で計算すれば、0.015mil÷120mil ×100 = 0.0125%となり、その便益は明らかです。

 

ここから、ワクチン接種による死亡が統計的に見込まれるとしても、政府がワクチン接種を薦めるのは、理解できます。所謂「デメリットがメリットを上回る」というあれです。しかし、ワクチン接種で亡くなられる方が絶対数存在するならば、その方々への補償が必要と考えます。同時に、愚行権ないしは自由権と言いましょうか、罹患して亡くなる自由(ワクチンを打って死なない自由)もあってしかるべきではないかと考えます。ただしこちらは公共の福祉に反さない限りですが。

 

おわりに

でも実は個人的にはどっちでもいいじゃんという想いもあります(だったら書くなよ!ですよね。ごめんなさい)。絶対的な正しさというのはこの多元的社会では存在も難しいと思いますし、人間が見通せる世界はそこまで広くないだろうとも思います。その点では私が今持ち得るベストなモットーは「みんなちがって、みんないい」(By相田みつを)でしょうか。

 

ワクチンに対するスタンスも人により千差万別。でも、分かり合うためにはお互いの意見を相手の側から考え、理解する努力が必要なのでしょうね。できれば直接話す、コミュニケートする、という行為も必要であると感じています。どうやって歩み寄る切っ掛けを作るかは分かんないけど。説得する、強伏するのではなく、理解する、受け止める、という姿勢がないと当然のことながら相互理解は生まれません。

 

その点、ツイッターというのは非常に怖い装置であるとふと思いました。あれだけ短い文字制約の中でどこまで気持ちを尽くせるのか。あの場で歩み寄りは生まれるのか。ま、ブログとて50歩100歩かもしれませんが。端的になりづらい(長ったらしい?)点にブログの長所があるのかも、とふと思った次第です。

 

 

 

「君臨すれども統治せず」の伝統はここから。イギリス貴族の気風の歴史を面白く伝える良書!―『MAGNA CARTA』著:DAN JONES



世界史を勉強していると、やれフランス革命だ、やれアメリカ独立戦争だと勉強するのですが、その都度引用されるのがマグナ・カルタ。したらマグナ・カルタって何なの?と思い、近くの新古品を並べる本屋で本書をゲット。円換算で500円程度でした。

 


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読後の感想ですが、英語がまあ分かるという方には是非読んでほしい!と思う程なかなかに面白かったです。

 

歴史物語がおもしろい

時は昔、13世紀のイギリスはプランタジネット朝ノルマン・コンクエスト以降のイギリスがメインの舞台です。マグナ・カルタに合意したのはジョン失地王。親から土地を譲ってもらえず(次男坊)、それでもうまいこと王位につくも大陸側の領土をも失った情けない王様、といった評価が主だと思います。

本作の出色は、ジョンにとどまらず、その父ヘンリ2世あたりから家族の性格やエピソードを描いている点。お父さん、大分オラオラな征服者であったことが綴られています。お兄ちゃんのリチャード1世もそう。部下に不幸があった場合、爵位などを引き継がせる条件に相続税はがっぽりとるわ、十字軍の遠征費用もしこたま臨時課税。さらにはお隣フランスのカペー朝との争いの費用も負担させるわけです。

 

そんな伏線の中で、ジョンはババを引いたのかな、とちょっと同情もしかけましたが、ここから描写の風向きが変わります。いやいや、ジョンも空気読みません。部下の奥さんや娘に手を出すし、カンタベリー大司教の叙任に際して、ローマ教皇インノケンティウス3世と衝突、それでも折れず、イギリスは聖職者がスト(聖務停止)、ジョンも破門。ここまで空気を読まないと清々しささえ感じてしまう。と、このような歴史が生き生きと描かれています。

 

挿絵もあるのでちょっと分かりやすい

次に本書の良いところなのですが、挿絵と写真

それはあたかも博物館に居るかのような気分になります。
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幾つかは金を図る物差しとか、ジョン王の刻印とか、なんか社会科見学で見てもへぇーで終わるようなものもあります。ジョン王の絵とかインノケンティウス3世の絵とかも載っています。マグナカルタの写本とかもありました。そうそう、最古の写本は世界で4つ残っているらしいですが、1215に成立したものですから、ねえ、かれこれ800年ですよ。ラテン語読めずともちょっと実物見たくなります。

 

英語がなかなか美しい

そしてもう一つ述べておきたいのが、英語が美しいこと。

これは大分感覚的な話ですみません。簡潔な文法で分かりやすいのですが、重厚感のある美しい英語であるように感じました。その分単語も難しいので(だって戴冠coronationとか聖別する・油を注ぐanointとか普通知らないし)、そこはちょっと根性いりますが、声に出して読んでも気持ちいい。俺美しい英語喋れるぜとつかの間の勘違いを味わえます。ただ、一部英国の地名とか人名は難しかった。フランス語も混じってますし。

 

おわりに

ということで、本作、マグナ・カルタ前の状況、マグナ・カルタの成立、そしてマグナ・カルタの後世への影響、の3つがきちんと学べる歴史書となっております。10章構成で写真や挿絵込みで117ページの短いもの。もちろんマグナ・カルタのラテン・英語訳とも全文載っていますが、私のような変態以外にはあまり興味はないでしょう(私もちょっとだけですよ、興味)。あと巻末にテムズ川河畔でジョン王のマグナ・カルタへの押印の承認者となったという25人のプロフィールも簡単に紹介。簡単な年表も。

 

想像するに、英国の中学生くらいに向けた歴史・法学入門のような本という位置づけなのだと思います。

中世英国史に興味がある方、法学や自由の概念の礎に興味のあるかた、ノンフィクションの英語にチャレンジしてみたい方などにお勧めできる本だと思います。もし電子版で売っていても絶対紙の本で買いましょう。

 

筆者に興味のあるかたは、Netflixで彼がガイドをしている”Secret of Great British Castles” という超絶地味な番組がありますので、よろしければ。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/07/27

 

 

対岸のフランスでのカペー朝の流れは佐藤氏の著作がお勧め。

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