海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年もセカンドライフ等について思索したく。

出口のないインド貧困。死ぬか苦しむか |『レンタルチャイルド』石井光太

皆さん、こんにちは。

 

今年の日本は桜の満開が遅めですね。私の実家近辺ではこの前の週末、未だに7分程度の開花具合でした。夜は夜で未だ寒く、上着が手放せません。

 

雨が降ったり、寒かったり、そのくせ花粉もけっこう飛んでいたり。

私は花粉症はないのですが、家内や子供たちは辛そうです。

 

早く暖かくなるといいですね。

暖かければ暖かいで、これまた暑い暑いと文句になるのでしょうが…。

 

ということで本題に参ります。

概要(裏表紙より)

2002年、冬。インドの巨大都市ムンバイ。路上にたむろする女乞食は一様に乳飲み子を抱えていた。だが、赤ん坊はマフィアからの「レンタルチャイルド」であり、いっそうの憐憫を誘うため手足を切断されていたのだ。時を経て成長した幼子らは“路上の悪魔”へと変貌を遂げるーー。三度の渡印で見えた貧困の真実と、運命に翻弄されながらも必死に生きる人間の姿を描く衝撃作。

 

蟻地獄のような、出口なしの貧困

あらすじで衝撃作、と銘打つ通り、確かに驚きでした。そして、何とも悲しいお話。

これは貧困が悲しいとか、売春が悲しいとか、手足の切断が悲しいとか、そういうことではありません。

 

いや、これらは十分に悲しいです。ただ、こうした苦しみに追いやられた張本人・それで嫌な思いをした張本人が、長じて生きてゆくために、仲間(手下)の手足を切り目をつぶし物乞いをさせたり、ヒジュラ(両性具有者。ただし本作ではゲイに近いニュアンス)を襲撃し、レイプするという事実。

 

これは、苦しみの輪廻というか、因果、から抜けることの難しさを語っているように思います。痛い目にあわされたマフィアに、いつの間にか自分がなっていた。そして生きるためには仕方ないと、それを繰り返す。

その蟻地獄のような出口のなさに悲しみを感じました。

 

物乞いでも苛烈な競争社会

物乞いそのものは東南アジアでは割と一般的かとは思います。

私の住まう東南アジアの辺境でも、週末朝ごはんをレストランで食べていると、突然車いすのおっさんがカラオケをしながら寄付を募って練り歩くというのはよくあることです。都心では奇形の男性だったり、足のないおじさん、乳飲み子を抱えた女性などが物乞いをしているのは見ます。裏でマフィアみたいな人がいるという噂もよく聞きます。

 

でも、本作の物乞いは、競争が激しい。

レンタルチャイルドを片手に同情を誘う。そのために私生児をかき集めたり、場合によっては誘拐してくる。そのレンタルチャイルドもそのうち同情を引かなくなるので、今度は手足を切断して不具にした上で同情を呼ぶ。

こうした子どもたちは物心つくと今度は路上に放り出され、物乞いをさせられ、マフィアにお金を巻き上げられる。稼ぎが悪いとボコボコにされる。

更にお金が集まらないと、更なる同情を集めようと目をつぶしたりして障害度を上げ同情を誘う。

 

その果てに、「死体屋」ともいえる、死人を練りまわし同情を誘うという物乞い方法を編み出したラジャの姿があります。しかし、その彼をして、生きるために仕方ない、と言われれば彼への反論はすべてきれいごとになってしまいそう。

 

そのような浮浪者の中でも熾烈な生存競争がある現実、これが心痛くも印象的でありました。

 

おわりに

ということで石井氏の作品はこれで二作目。非常に優秀なノンフィクションライターさんであると感服しています。

富裕な国から来た外国人にここまで心を開かせるというのは、やはり筆者が相応に信頼されたからなのだろうと思います。

貧困への解決策が特にあるわけではないのですが、この現実を明るみに出した功績は決して小さくはないと思います。今後も経済成長を続けるであろうインドですが、その成長や成功の裏で、闇もまた濃く影を落とすことになるのだろうと感じます。

 

評価 ☆☆☆

2026/03/29

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