海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

失恋に負けず、頑張れ! |『太陽のパスタ、豆のスープ』宮下奈都

ひとこと

本作ですね、婚約破棄された女性が周囲の助けを得つつ回復する、という話。です。

副題:自分の軸の作り方、作ろう「これが私の生きる道」、的な。

で、私の感想は、・・・合わなかったぁ、でした笑

 

ジェンダー固執した発言は気を付け慎まなければなりませんが、何だか「女性女性した」作品に感じました(1000%アナクロニズムな個人的発言)。

 

ほのぼの系前向きストーリー

全体の雰囲気として、作品にはユーモアが溢れ、ほんわか・ほのぼの雰囲気が漂います。

主人公の明日羽(あすわ)はちょっとおっちょこちょい、というか、若干「抜けてる」キャラっぽくて、叔母の六花(ロッカ)さんが騒々しく助けてくれたり、かわいい同僚の郁ちゃんの青空マーケットでの「会社とは違う顔」をみて、わぁーとか素直に感動したり。一歩一歩進んでいく様は自己陶冶小説ともいえましょうか。以前読んだ小川糸さんの『食堂かたつむり』と雰囲気にているかもしれません。

ちなみに、ドリフターズリスト(バケットリスト的なもの)をうんうん唸りながら書き換える時はしばしキャラ変していて、筆者が乗り移ったかのような冷静さ・鋭さが下りてきているようにも感じました笑

 

ごめんなさい、明日羽とは合わない!?

そんな明日羽の回復は、少しずつ、進みます。
で、私は、明日羽とは合わないなあと強烈に感じたのは、作品冒頭、婚約破棄後にダメージを食らったまま会社に行き、友人・同僚に大丈夫かと聞かれ、大丈夫じゃないのに、気を遣わないでね大丈夫、と答えるシーン。

 

私も日本で生まれ育ったので、他人に迷惑をかけることの罪悪は価値観として自己に組み込まれていることを感じます。他方で大丈夫ではないときはそれを素直に言わないと逆に周囲に迷惑がかかることってある気もします。明日羽はそういう人に見えちゃいました。

 

家族だと、体の不調を訴えるわりに病院に行こうというと断るやつ、あるいは「よくなった」と嘘つくやつ笑 結局大事に至った後で「みんなに迷惑かけたくなかった」って言いだすとか。母、あなたですよ!

あと、仕事でもそうですね。システム開発の短納期の仕事で、外国に委託・アウトソースする場合に、「できるできる」と安請け合いし、法令改正案件で遅延が許されない開発なのに、土壇場で「ごめんなさい、やっぱり無理でした」となり、結局他の協力会社と火事場をしのいだとか。

 

私なら、ダメな時はダメと言って欲しいな。

 

もちろん、明日羽は設定ではまだ20代後半、会社では若手ですよね(ミスも沢山する年代)。強がっての「大丈夫」、あるいは自虐で「大丈夫」と謂ったり、感情の揺れがそうさせていることも想像できます。50手前のオッサンだって、お前完璧なのかよといえば違いますし、なんなら私の20代は明日羽よりずっと雑でしたし。他社と一緒に勤務後にバスケの練習をし、その後飲み会の末深酒。翌日はしばしば遅刻もしたし。終末の試合で前十字靭帯を切って、翌日松葉づえで出勤したり、再建手術で会社も休んだなあ(そう考えていたら、ひたすら自分がクズであったことを実感笑)

 

ただ、自分に素直に会話してくれないと分かりづらいですよね。表現と含意が異なる。

話者は本当は辛いのに「大丈夫」といい、聞き手は話者の性格や背景ないし「行間」を読み、『あ、この人は辛いのに「大丈夫」って言ってるに違いない』と推測する。

日本の同一文化の、かつ親密な間柄では理解されますが、他文化・多文化では通じないだろうなと感じました(そういう設定じゃねえんだよって怒られそうですが)。

 

でも、散々ここまで書いておきながら、そういう未熟な明日羽を慈しみながら読むのが正しい読み方かも、と感じてきました・・・

 

おわりに

ということで宮下奈都さんの作品は初めてでした。

何となく、自分、だから女性にモテないんだ、と分かった気がします。他方、こういう弱った女性は普段より簡単にオトされちゃいそうだなあと感じました。

 

失恋した女性は読むと元気を貰えるかもしれません。

 

評価 ☆☆☆

2023/10/07

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