海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

次第に全貌が明らかになるエログロ・サスペンス |『民宿雪国』樋口毅宏

皆さん、こんにちは。

上の子の高校卒業式に参加してきました。

いやあ、青春っていいですね。式が終わった後は講堂から出て、生徒一同で制服のネクタイ(通称『たくあん』:金色・黄色だから)を一斉に放り投げるというシーンも。その後は生徒同士、仲間同士、あるいは先生を交えて・父母を交えての写真撮影。いやあ、いいものじゃないですか。

 

そして思い返す自分の卒業式。というか出なかったという思い出。

私はその時、荒れていました。ただ成績はそこそこよく、国公立は諦めたものの、私立は概ね願ったところからは合格がいただけました。進学先を決めるところで問題が勃発。

学歴で苦労した父親は、私が合格した所謂有名私立大に行って欲しいと。私はそれよりランクがちょっと下の某キリスト教系の大学に行きたかった。当時ガンガンにとんがっていた私は、『子供が行きたいところに行くのではなく、親が行かせたいところに行くなら私は行きません。お金は勝手に行かせたい方に振り込んで結構。ただし私は知りませんし、行きたいところ以外行きません』と言い放ち、以降すべての学校イベントを拒否(ほんと生意気。今私が親だったら張り倒します)。高校の卒業式も、もういいや、と部屋に閉じこもりっぱなし。居たたまれなくなった母親は突然失踪し、一週間くらい金沢に旅行に言っていたという謎の幕間もあったものです。

部活の仲間からは今も『おまえ、親(との関係)は大丈夫か』と今も心配されます。大丈夫です。嫁によりかなり矯正されました。

 

ほんっと、子どもが自分に似なくてよかった。もうそれだけで十分親孝行な子供たちです。

はじめに

樋口氏の作品を読むのはこれで二作目。

前に読んだ『日本のセックス』はエログロ全開系作品でした。今回もエログロは踏襲しつつ、ややサスペンス味と歴史のエッセンスを加えた作品だと思います。

 

視点の移り変わりに特徴

新潟の雪深いボロ民宿、その名も雪国。

ここへ足を踏み入れる吉良という青年の視点から物語は始まります(第一章『吉良が来た後』)。

個人的印象としてはこの章が一番ひっくり返りました。展開に驚いた。吉良という青年が何者か、宿屋のオヤジが何者か、そこで起こったことは何か。オヤジの裏の顔とのギャップがやばい。

冒頭ということもありますが、「静」から「動」への転変が実に劇的であり、ツイストが効いていたと思います。

 

次章『ハート・オブ・ダークネス』では、世に疲れたとある記者が、敢えて人里離れたこの民宿に泊まるという話。彼自身のエログロ系色恋や生い立ちにあわせて、この民宿での出来事などが綴られます。ここでは民宿のオヤジは一種善人として扱われ、むしろこの記者の方がおのれの悪辣さを吐露している印象。こちらも章末にツイストあり。

 

次の章以降も引き続き、第三者がこの民宿のオヤジを語り、徐々にこのオヤジが何者でどういう人間であるか、何をしてきたのかが明らかになるという仕組みであります。最後にオヤジの問わず語り的自己紹介・振り返りがあり、読者も全体的な理解が得られることになります。

 

フィクションかノンフィクションか?

この作品は、当然のことですが、フィクションです。

まあ、読んでいて突飛な殺人事件が連発するので分かりますが。でも、その一方でバブル前後の80年代90年代の描写が生々しく(丹生雄武郎の絵画がポパイやホットドックプレスという雑誌で特集されるというくだり)、私は思わずググって確認してしまいました。

はい、フィクションです。よかった。

 

真実の混じった嘘が一番分かりづらいなどと言います。本作は虚構を核として、その周りを詳細で雑多かつ網羅的な事実で装飾することで、あたかもストーリー全体を真実と思わせる部分がありました。

 

そのほか

そのほか、樋口氏と映画評論家の町山氏との対談、樋口氏と梁石日氏との対談等が巻末にありました。

後者の梁氏との対談で、作家は少し遅咲きの方が良い、というのも経験をストックしてないと書くことが無くなる、という旨の話がありました。私は個人的にはそうかな?と思いました。

経験があれば確かに書くネタはあるでしょう。でもストックしている経験がない人でも経験を得る過程はネタになるのでは、と感じました。むしろ、お作法やテクニック等の方が習熟するのに時間がかかるのでは、と感じました。

まあ、読者としては早咲きでも遅咲きでも、素晴らしいものであれば後は良いのですがね笑

 

おわりに

ということで、樋口氏の作品を読了しました。

相変わらずのエログロ・ノワール系作品ですが、嫌いでないです。ただ、周囲には『こんなの読んでいます』とはちょっと言いづらいですね笑 伝えるような友人も居ませんが。

 

評価 ☆☆☆

2024/03/13

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