皆さん、こんにちは。
懸案の来月の引っ越しに先んじての室内塗装。これがやっとこさ終わりました。掃除を含めて計三日かかりました。もう、体がバキバキです。
老後、というか子どもたちが片付いたら、日本に帰る予定ではあります。が、住む家がないので地方都市の中古マンションを購入することを将来的に計画しています。その場合は室内塗装を自分でやる自信がすこーしだけつきました。家内は「は?10年後におんなじことやったら死んじゃう!業者!業者!」とのたまう。。。お金貯めないと。
そういえば、ブックオフでブラックフライデーセールなるものを発見。眠れぬ夜に夜な夜な中古本をポチリました。在庫が少ないのが難点です。作品のラインナップに栄枯盛衰を感じますね。
はじめに
伊坂氏による2018年の発表作品。
双子の風我と優我が、ネグレクト・DVに立ち向かいながらも自らを貫くストーリー。伊坂氏お得意の洒脱な会話とツイスト、そして身体入れ替わりの「なんじゃこれ?」的設定。諸要素がマイルドにまじりあい、うまく伊坂風味に仕上がっています。
「押しつけがましくない」不幸
1年程前から伊坂氏の総読み直しを開始し始めました。
しっかし、やっぱり好きだなあ、伊坂氏の作品。
本人曰く、「ゴールデンスランバー」からが第二期らしいが、それ以前の一期を懐かしむ読者も多いらしい。私は、それはそれで第二期以降も好き。
例えば本作もそうですが、不幸が押しつけがましくない。
ネグレクトやDVという題材は今でこそ「よくある」テーマとなりました。で、その結論といえば、その不遇を克服して頑張ろう、とか何がしかの希望を最後に提示して終わる、というパターン。世の作品は結構そういうのが多い気がします。
もちろん、これはこれでいいと思います。
ただ、あまのじゃくな私は、人の壮絶な人生はそんなに卑小なものなのか、とも思ってしまいます。不可知論とまでは言わないものの、私のようなおっさんがへらへらと数時間読書して分かるような簡単な出来事なのかと逆に疑問に思ってしまいます。
ファンには申し訳ないのですが、以下の作品はそのような感覚をえたものです。
対して本作。
ある意味で本人たちの醒めた目線がフラットで心地よい。
虐待を、大変なことだ・よろしくないことだと第三者が語るのではなく、本人が一人称で、「辛いことは辛い、でも相応になれる」(箇所不明、済みません)と語る客観的記述が腹に落ちました。
そういう「押しつけがましくない」不幸、そしてその描写、そうした部分が印象的でした。
幸せに終わらない主人公たち
あと、何というか、本作でも運命論みたいな結末が見られたように感じます。
ありていに言えば、幸せになれない主人公。
類似のお話でいえば、『重力ピエロ』での泉水・春の兄弟。母親がレイプされた末の子どもである春は家族で受け入れられて育ったものの、世の性的不純を懲らしめるために最終的にDNA上の父親を殺害し、その後命を落としました。
同様に、『あるキング』では野球の天才として生をうけた王求(おうく)が、数々の困難に直面し、その末にプロ野球にどうにかこうにか入団できました。しかしそれでも悲劇の神に愛された王求はまっとうな野球人生を終えることなく死に至ることになりました。
そして本作の双子の兄弟。
淡々とした語り、客観的でフラットな描写も、最後の最後のネタあかしで、何となく納得できます。やはりそういう運命だったのか、と。明るくはない結末。
おわりに
ということで伊坂作品でした。
時代を経るごとに、伊坂作品はより深みが増してきたように感じます。
単に面白い、驚いた、だけではない作品です。倫理や価値観、生き方などの是非を語る題材にもなり得る作品という印象です。
私、伊坂作品、いっそう好きになってきましたねえ。
評価 ☆☆☆☆
2024/11/21