海外モノの小説は実は小さいときから割と好きでした。なかでもモダンホラーの先駆的な存在であるスティーブン・キングとD.R.クーンツの二人の作品は中高生の時に貪るように読んだ記憶があります。
年を経て、中高生の我が子らに本を読ませたいという意図(言い訳)から、また色々と小説を試し読みするようになりました。そして、外国ものだと、ずーっと気になっていたのがこのアンソニー・ホロウィッツ氏。
で、例のごとく読みたいけどお金を余りかけたくないというシブチンぶりを発揮し、御用達の近所の新古品を扱う書店で氏の小説を物色。
氏は、ヤングアダルトものも多く手掛けており、そうしたシリーズは在庫があったのですが、最近の本格ミステリ系のものはなく、渋々こちらを手に取った次第です。
いやこれ、普通(以上)に面白い
実はこれ面白いのかどうかちょっと心配したんです。
本作は007シリーズ。007といえばイアン・フレミングが原作で、その財団が作品の執筆をホロウィッツ氏に依頼したというものなのです。
私としては、そもそもロードショー的作品がそもそも気に食わないし(根暗な性格で日の当たる作品は嫌なのです笑)、もともとホロウィッツ氏のオリジナルなものが堪能したかったのですが・・・。でもまずは物は試しよと読み始めてみました。
で、面白かったのかというと、ごめんなさい、面白かったです。流石です!と言わざるを得ない面白さでありました。
典型的ボンドを踏襲。水戸黄門的予定調和の妙
やはりボンドといえば女たらしですが、ホロウィッツ氏もいい意味でその典型を徹底的に踏襲。本作では都合3人の女性に手を出します。ちなみに2人目を狙って投宿しているホテルへ連れ込もうとしたところ、1人目の女性が突然ボンドの泊まっているホテルにやってきて事件になりました。あ、これ鉢合わせが事件なのでなく、しけこもうと思った矢先に1人目の女性がギャングに襲われるのを目撃して、そちらの救出に向かうというものですが笑。
デキメンスパイかもしれませんが、下半身的には結構クズかもしれません。そんな不完全さはちょっと可笑しいですね。美人局に世界一引っかかりやすそうなスパイです。
息をつかせない展開。歴史に基づく深みも
また、そのテンポよい展開で、読者を飽きさせないのも流石。ソ連の陰謀を嗅ぎ付け、ドイツのロードレースに出場することになったボンド。まずは国内で腕を磨く英国でのシーン。そしてドイツでのロードレースでのシーン、その後謎の米国在住韓国人との出会い、そして米国での陰謀を暴くシーン。謎の米国系韓国人が老斤里虐殺事件に巻き込まれた被害者という設定であり、歴史的にも興味深い事件にもスポットを当てておりました。
ちなみに英語はとてもシンプルで読みやすいものでありました。私のレベルですと、分からない単語は多いとページあたり5、6語、少ないと1語か0という頻度で、かなりグイグイ読める英文でありました。
おわりに
ということでホロウィッツ氏オリジナルを求めた末の007シリーズの購入でありました。でも、満足度は非常に高かったです。読みやすいし、英語でも没入するくらい読みやすかったです。また歴史的に興味深い事実にも突き当り、学ぶところが多かった読書体験でありました。
なお、トリガー・モーティスという題名ですが、作中ではロケットの自動起爆装置のこととして扱われていました。邦訳の題名は・・・意訳、ですよね笑
評価 ☆☆☆☆
2022/12/11
スパイ小説は一種の娯楽ですが、英国の諜報機関は実際あるということは知っておいてよいかと思います。