この本は自分のwish listの中に入っていて、そのインパクトある表紙が記憶にあり、ブックオフで廉価で見かけたときにすかさず買ったものです。
ただ、どういうわけでwish listに入れたのか覚えていない。本作の前後にリストにあったのは椎名誠さんの『わしらは怪しい探検隊』。はて、どこぞで面白いエッセイだとお勧めでもあったのでしょうか。
面白そうと感じたそのときに買って読まないと、印象は消えてしまいますね・・・とほほ。
ひとこと
姫野カオルコさんによる、肩の凝らないエッセーです。
今ではちょっと語るのも憚られる、男性性や女性性、「男らしさ」や「女らしさ」といった性にまつわる言い回しや一種の偏見について「それって本当か?」とゆるーく突っ込む感じのエッセイです。
「鼻くそ」ネタがツボでした
さて、カオルコ氏の慧眼に驚きを隠せなかったのが、彼女がとある雑誌で「男性のここが嫌い」というアンケートへの答えに「鼻くそ」と返したこと。そして電車であたりを見渡せば、必ず幾人かは指を鼻へ差し込み、ほじくり、場合によっては(汚らわしいことに)それを周囲に(座席や手すりなどに)なすりつけていたりする、という。そしてそういう行為に及ぶのは間違いなく男性だという。
・・・これは確かに心当たりというか、指をあそこへ誘導する衝動があることを、自ら感じることがあります。しかも大抵それは電車であったり、バスであったり、なんでか衆人環境であったりするのです。幸い私はエレガントにほじくる(言葉がそもそもエレガントではないが)ことを心得ており(?)、ティッシュを用意し、左手で鼻を覆い、右手の指をティッシュで覆い、周囲にはその下劣な行為が見えないように事を遂行し、周囲への申し訳なさの演出と自らの衝動とを同時に果たすことが出来るのでした笑。
(話題引っ張ってすみません)ただ、家にいるときはどうしてか、もっとストレートかつダイレクトに指を鼻へ誘い入れてしまいます。特に困ったのは寝入りばなの意識が薄いまる時。
寝入りばななので、何となく鼻に指が行き、その後のことは忘れてしまうんですね。で、床に落ちている黄色いスナック片のような乾燥物だったり、どうしてかブランケットにくっついた干からびた小アメーバのようなそれを、妻から冷ややかにそして厳しく指摘され、非常に困るし子供に説明がつかないと怒られるのです。いやあ、意識がない時の話だしと(とその割に結構覚えているのだが)テヘベロで返してみるものの、火に油を注ぐこともしばしばでありました。
こうした「ほじくり」行為やその後の不始末が男性に多いことは肌感覚的にはかなり同意できるのですが、こうした傾向を見抜くカオルコ氏、恐るべしであります。
そのほか、女性の「胸」をエロティックに表現するときに、どうしてか「胸」だけは適切な単語がなくて困る、とか、女性向けのエロ本には隠れた傾向があるとか、関心のない方にとってはどうでもよい?ようなことを真面目に考えているエッセイでありました。
シリアス系の話題でいうと、本というのは先ず文庫本で世に問い、その後ファン向けの愛蔵版的単行本を出版した方がすそ野が広がるのでは、というのはなかなか面白いアイディアだと思いました。
おわりに
おそらく私にとって初カオルコ氏作品でした。
エッセーは特に、書く時代の雰囲気をモロに映し出すため、少し時間がたつと、やはり違和感を感じてしまいます。本作だと、男性・女性という二分法で論をすすめる時点で、どちらにも属さない・どちらでもあり得るというLGBTQのような存在が前提とされていないところにまず「時代」を感じてしまいました。なお初版は2008年ということで今から15年前。10年ちょっとで世の中結構変わるものですね。
ということで、息抜きに最適な、疲れない読後感でありました。難しい本の合間に、疲れた業務や出張帰りのクールダウン等に適した作品であると感じました。
評価 ☆☆☆
2023/04/19