はじめに
いやあ、今回も面白かった。久し振りに湊氏の作品を読みました。彼女の作品を読むのはかれこれ三カ月ぶりでした。
実は本作は過去に映画も見ていましたが、その時は結末がイマイチよく理解できなかったんです。しかし、こうして原作を見て、納得して理解できた形であります。
なお本作、2012年の作品で、2014年に映画化されています。
構成の妙
さて、本作ですが、超ザックリ言うと化粧品会社の美人社員の殺人事件であります。
これを社内の関係者の証言を拾い集める形で進行します。
誰が拾い集めるかというと、同社の社員にツテがある、フリーのライターである赤星。彼の視点から、彼が聞き役という形で物語は進行してゆきます。
また、赤星は所謂「掲示板」で情報を漏らし拾いつつ、雑誌記事を書いています。掲示板の一部や雑誌、新聞報道などは巻末に参考資料として添付されており、読者は複眼的に状況を理解してゆくことになります。
更に、赤星のインタビューは同僚、同級生、地元住民、さらには本人の独白へと連なり、本殺人事件の人間関係とキモが重層的に少しずつ変化しつつ、構築されてゆくと思います。
この構成のおかげで、容疑者人物像の変化を自己の中で楽しむことができます。
ネットの闇・裏の心
相変わらず湊氏の作品はイヤミスでありますが、本作品でも、人間のいやらしさが余すところなく描かれています。
容疑者である城野美姫の大学生の同級生らの彼女への想いも、最後の容疑者本人の独白により、上から目線の傲慢なものであったことがあぶり出されました。
城野美姫の小学校時代のおちょくりの原因を作った八塚の娘、母親、そして、くちさがない地元の人々。
憶測なるも確信しているという、強烈な自負のある自己のあるキャラを複数置くのは湊氏の十八番。さらにこうした関係者がネットで会話を繰り返すことで、ギスギスした感じがさらに演出されます。
こういのも読んでいてイヤーな気分になりますね笑
責任を取らない発言について
もう一つ、考えてしまうのは発言の責任というもの。
現実にはここまでないけれど、ライター赤星の、内容は証言をまとめただけ(だから私には責任がない)、証言者については守秘義務があるから口外できない(ゆえにあなたたちは検証できませんよ)、という身勝手さ1000%の発言などはぐっときました。
ライターはまだ名前がトラックされますが、ネットの書き込みなどはもうカオスですよね。
他人事だと思って面白おかしく表現する一方で、それが別のうねりを生み出したり、その心ない発言で人を傷つけたりしているというのはネット時代の社会病理であると感じます。
発言の自由という素晴らしい権利は、今後SNSでの責任と心のない発言により、修正が入る・部分的自由に変貌する可能性がありますね。
なんてこともふと考えてしまうのでした。
おわりに
ということで、久々の湊作品でした。
考えるネタは他にも結構あると思いました。実は『人は見た目の良い方を優遇しがち』という社会のありようはルッキズムに繋がりますし、外見に胡坐をかいていた性格の悪い美女はルッキズムの生み出したキメラのような怪物であったのかもしれません。
単純なエンタメとしても面白く、映画と共に比較しつつ味わうことが出来る佳作であると思います。
評価 ☆☆☆
2025/03/31

