海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年もセカンドライフ等について思索したく。

けっこう上級者向け? でも光明が見えたかも |『VBA開発を超効率化するプログラミングテクニック』深見祐士 監修:大村あつし

 

はじめに

仕事でVBA、所謂マクロを使っている方は結構いらっしゃると思います。

私もその一人です。

私は幸いSEのバックグラウンドがあったためコーディングにはそこまで抵抗感がありませんでした。

 

ただ、次第にもたげてくるダルさ・・・。だっていつも似たようなコーディングしてるじゃん。

 

「てか、サブプログラムとか、サブプロシージャを共通化できないの!?」

 

これですよ。

そんな思いから手に取ったのがこの本です。

 

挫折ぎみ・・・

で読んでみたのですが、結論からいうと大分なえました。

 

私のように古代言語のアセンブラを3流の技術・心意気でやっていたSEとしては、本作で開陳される部品化の徹底さに驚くばかり。

 

でも、「そうだよな」という思いもあります。

サブプログラムを徹底的に部品化するとなると、先ずきちんと時間をかけて俯瞰して部品化するモジュールをリストアップしなければなりません。、またこうした部品を共有する仲間とのすり合わせも必要です。

このあたりを想像しただけで、導入は無理かも、という思いが脳裏をよぎります。

 

配列が難しい・・・

さらに追い打ちをかけるのが、汎用配列サブプログラムのコード。

頭では分かりますが、配列なんてかつての業務でも使ったことありませんでした。なんたってアセンブラだもん。基本情報で勉強したかもしれませんが。

 

くじけるなオレ

ただ、本作を曲りなりに一か月くらい読みながら日常業務に従事していると、私が組んだマクロのほとんどが配列を使うことでスピードアップできそうな印象なのです。

 

故に、再度本作に立ち返り、サブプログラム化を実施したいと思います。

 

あと、こうした部品をAdd-inファイルにコーディングすることで共通部品(Publicという意味で)として読み込める点、初めて知りました。

またエクセルからAlt + F11でソース画面にショートカットできるっていうのはちょっと玄人っぽくて気に入っています笑

 

おわりに

ということでVBAの技術書でした。

完全に真似るのはもう無理ぽですが、大いに示唆を得た作品だったと思います。隙間時間を使い少しずつ体得したいと思います。

 

ある程度VBAを書ける人で更に楽したいという方にはうってつけかと思います。大半がサンプルソースのコードですが、ためになると思います。

 

評価 ☆☆☆☆

2024/08/30

内容は実はほっこり目、読み口はサラサラ。 |『ウォーク・イン・クローゼット』綿矢りさ

皆さん、こんにちは。

私、普段は不機嫌の固まりで、毒を吐き、口喧嘩も辞さない問題中年です。ところが、最近罰が当たったか、同様に不機嫌・不平を突き返されることが増えてきました(涙)。

それが影響してか、さっぱり眠れなくなったのがこの前の週末。

 

こうしたときついついスマホに手が行きがちですが、個人的にはスマホは時間の無駄。眠れない夜は本を読もうと決めておりまして手にしたのが本作。

 

はじめに

2015年に世に出た綿矢氏の作品。中篇「いなか、の、すとーかー」および表題作の「ウォーク・イン・クローゼット」からなります。

なお綿矢氏は17歳でデビュー。2004年で芥川賞受賞。すごいですねー。

 

飲み口のよい日本酒かょ

綿矢氏の作品は芥川賞作品の『蹴りたい背中』以来です。

結構リアルタイム気味に読んだ記憶はあるのですが、テイスト・テクスチャ―がどんなだったかはまったく記憶にありません。

 

で、今回、ほぼ初めてという感覚で読みました。

で、どうだったかというと、すごい。

というか、

すらすら読める、

ということに驚き。

それでいて、キャラクタのアクやクセ・えぐみはきちんと作品に反映されているのです。

故につるつる読めるのですが、読中読後にじわじわと酔いが回るような感覚です。

 

とりわけ、読み口のさらさら感は、私が普段好んでいる恩田陸氏や湊かなえ氏より一層つるつる(!?)でした。これに驚きました。

 

ストーカー女子と、モテ服中毒のOL

さて、えぐみが強いのはキャラ設定だと述べました。

本作は二つの中篇「いなか、の、すとーかー」と表題作「ウォーク・イン・クローゼット」から構成されます。

 

強烈だったのは、前者では陶芸家石居の幼馴染果穂。石居にたいして憧れも憎しみも兼ね合わせもち、その二面性が「まだら」に現出する描写が良かった。

 

後者では、デートのオトコ用にそれに合わせたモテ服をチョイスするOLの早希。

これは疲れるんだろうなあ、と読んでてこちらまでちょっと疲れました。作中で彼女は、好きな男の子と幼馴染の女の子と3人でライブに行くことになりましたが、これが大変。男と行くときだったらこういう服・女友達との外出だったらこういう服、とテイストが異なるため、結果ライブに行く前にかれこれ4, 5時間も服のチョイスに悩むという・・・。化粧の時間なくなるよ!?みたいな。

 

まあでも、どちらも最後はキレイにまとまり、いい感じにおわりました。

 

おわりに

ということで、ほぼ初めてくらいな綿矢氏の作品でした。

なかなか良かったです。

今後も折に触れて読んでみたいと思います。

 

評価 ☆☆☆

2024/08/23

終始食い違う意見に苦笑しつつ読了・・・ |『死という最後の未来』曽野綾子、石原慎太郎

 

はじめに

自分の病気や親の痴呆をうけ、死について考えることが増えてきました。

で、とある日にブックオフに行って目に留まったのが本作。

 

石原氏は既に他界されていますが、本作上梓したとき、曽野氏90歳、石原氏89歳。この年齢で現役というのがすごいのですね。

これだけ死が近い年齢の人がどう考えているのが知りたく読んでみたものです。

 

大きく異なる二人のスタンス

で、読んでみましたが、なんというか、よく対談がまとまったな、という印象でした。

 

というのも、まるっきり二人のスタンスが対照的なのです。

 

曽野氏のスタンスは、もう頑張らない、なるようにしかならない、全ては神の思し召し、夫のものもすべて処分、亡夫もそれを願うはず、など。言ったら、ケセラセラの世界。

他方石原氏は、死にたくない、残りの時間も精いっぱい生きたい、生きた証を残したい、死後の葬式のことはすべて自分が決めている、等々。俺が俺が、的に見えます。

 

本一冊分(実際には本にならない部分も多くありましょうが)話すのですが、始終意見が食い違うのですね。

曽野氏のソフトな意見に、大概石原氏が「そうかなあ、僕はそう思わないなあ」という。石原氏の現世への未練について曽野氏は「そうしたいのであれば、それが天命ですね」「したいのだからなさったらいいですね」と受け止めるので、いっそう石原氏が偏狭に映ります。

 

大味な結果におわる!?

で、一冊読んで何か「おお」と思ったかというと、実はそれほど無かったというのが本音です。

曽野氏はキリスト者ということで宗教的信念から死を受容できているように思います。また身辺のモノについてもあまり執着がないようで、ご主人(作家)の原稿なども焼いて処分されています。この未練のなさもキリスト者というだけで結論づけられるものではないと思いますので、ここをもっと深堀り出来たら面白かったかなあ、個人的には。

 

石原氏に至っては、まだ生きたい、もっと生きたい、だけど体の自由が利かなくなって悔しい、みたいな執着の固まりみたいで、あんまり参考にならなかったかな。

 

もし、老境に差し掛かったけどこんな大きなことをしてしまった、死の恐怖をこうやって受け止めた、周囲の死をこうして受容した、みたいな論点があったらもっと私の役には立っていたかもしれません。

 

おわりに

ということで対談集でした。

対談で一冊になるとき、結論がぼんやりしてしまう典型だったかもしれません。その意味で、タイトル負け、でしょうか。

ただ曽野氏の人となりにはちょっと関心が湧きました。あれだけ泰然と連れあいの死を受け止められているのは凄いと思いました。

 

評価 ☆☆☆

2024/08/23

<僕>の喪失と恢復の物語 | 『ノルウェイの森』村上春樹

はじめに

25年以上ぶりの再読。私にとっては村上氏の代表作といっても良い作品。

大学時代によく読んでいました。苦悩し、文学・哲学をたしなみ、音楽を愛し、性的に満たされる「僕」に憧れていたと思います。

一回読んでは期間をあけ、また読んで。そういうことを何度か続けた作品です。

本棚縮小計画に沿って、再読後に本作手放す予定です。

 

どういう話なの

高校時代の親友キヅキを自殺で失った<僕>は、地元の神戸を離れ東京で平凡な寮暮らしを始める。そして19歳を迎え、キヅキの元恋人の直子に偶然東京で出会う。共に近しい人をなくし傷を負う者同士も、直子の精神状態は立ち直ってはいなかった。そして直子が20歳の誕生日に二人は結ばれるが、のちに直子は心の安寧を崩し、京都の山奥に隔離入院する。

<僕>は必死に彼女を求め、追い過ぎず、励まし、できれば東京で共に暮らしたいと願う。直子の同部屋のレイコさん(患者)もまた二人をサポートする。しかし直子は更に調子を落とし、他院に転院する。一度調子の良い時に京都の山奥に戻ってきた直子は密かに自らの命を絶つ。

<僕>は打ちひしがれ茫然とする。

 

相変わらず、村上作品の<僕>はモてる

まあ本作、一言でとらえれば、心の傷とその恢復の物語と言えましょうか。

シニカルに捉えればナイーブな男性の回顧録、と言えなくもないです。

 

ただ、本当に、本当に下世話な印象で申し訳ないのですが、私が一番印象に残ったのは<僕>がいかに女性に困っていないか、ということでした。

病んでいる直子がいる。大学には気の強い緑というガールフレンド。寮の先輩永沢の彼女ハツミさんからはいつでも女性を紹介すると言われる。永沢と繁華街に出て、女の子をひっかけて一晩の欲求をみたし、肌を温める。

そして極めつけは、直子を亡くした後、病院をでて現世でやり直すレイコさんと交わる。まあこれは恢復のためのカタルシスとして描かれているようにも感じましたが。

 

本作を初めて読んだのは高校三年か大学一年でしたが、ついぞこんな学生生活は送れなかったですねえ。

 

東京の知っている場所

さて、久方ぶりに読み直して、昔見知った場所が出てきていて「おっ」となりました。

先ずは新宿のジャズ喫茶DUG。

温かい真空管アンプみたいな音でジャズがかかっていました。新宿でちょっと変わってて落ち着いた店というとここに連れて行くと、友人にそこそこ喜んでもらえました。

 

あとは四谷の土手。

<僕>と直子は真田掘近辺を市ヶ谷方面に歩いたのかなあと。実は今の妻に30年くらい前にコクった場所がその土手ですわ笑 周りは上智大学の学生とか女子学院の生徒さんとがが多かったですね。

 

そういう懐かしみもあり、後にもたびたび本作は度々読んだ記憶があります。

 

おわりに

ということでかなり久しぶりの再読でした。

こうしておっさんになってから読むとさすがに<僕>のナイーブさに結構引っかかりました。ただ瑞々しい青年期の物語だけに、死別の別れ、体の疼き、理性と身体の相克などのテーマは、心からではなく、若かりし頃の追憶と共に理解しました。

 

ちなみに、本作、暗いだけの話ではありません。脇を固めるキャラ、例えば突撃隊、永沢、レイコさんなど、個性が強いキャラが異なるプリズムを物語に映写します。加えて村上氏の洒脱な会話が幾分雰囲気を軽くしていると思います。

 

自分はナイーブだ、今ちょっと暗くなりたい、という方にはおすすめ?わからんけど。

 

評価 ☆☆☆

2024/08/19

 

深刻ではない、洒脱で軽妙な村上作品というと以下をおすすめします。

lifewithbooks.hateblo.jp

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淡泊かつ単調に衰退を描く | 旧約聖書 列王記 『聖書 新共同訳』

はじめに

サムエル記では、ユダヤのメジャーな王、サウル・ダビデと続きました。

そしてこの列王記ですが、賢者として名高いソロモン王の話が冒頭にあります。

それ以降は小物がおおく、神の道にも従わず、結果イスラエル国とユダ国に分裂、そしてアッシリアに国境を脅かされ、最後にはバビロンのネブカドネザルの捕囚となります。

 

大味な記録!?

今回の列王記は名前の通り、王様がたくさん出てきます。

大抵が神の道にならわない行いをするのですが、そのためか、章の最後あたりに「詳細は『イスラエル王の歴代誌』に記されている。」と置き、バッサリ端折る章が頻出します。

 

ソロモン王も、大岡裁き並みの裁きの名士?みたいな話が有名ですね。赤ちゃんが一人と母親が二人。どちらもが所有権を(『私が母親よ!』)主張するというやつ。

これもマンガでは文字通り劇的なシーンなのですが、文章での描写はいたって簡素。あっそう、みたいな感じ。読み飛ばしていてもおかしくないくらい。

 

ま、いずれにしても薄味な章でありました。

 

世界史との連結

これまでは、ほぼ神話的な世界でありましたが、本記にあって、アッシリアとかバビロニアとか、世界史の事項との交差がとうとう出てきました。

 

といっても未だに紀元前6世紀とかそこいら。

改めて世界史の教科書を確認したら、「古代オリエント」という章で半ページだけユダヤの民のことが書いてありました。ざっと出てきた単語を掻い摘むと、出エジプト記モーセ、士師、ペリシテ人との闘い、分裂、バビロン捕囚。

そう、丁度旧約の初めから列王記程度のことがザックリ書かれていたようです。

 

おわりに

ということで、旧約の列王記でした。

ササミのような淡泊な味わいでした。

で、今回もコンサイス聖書歴史地図と里中先生のマンガ旧約聖書3を使用し、理解の助けとしました。

 

次は、歴代記へと進みます。

 

評価 ☆☆☆

2024/08/21

 

世界史の教科書はこちらを愛用しています。こまめに見返すとちょっとウンチクが溜まった気になれます。

lifewithbooks.hateblo.jp

 

 

珍妙?西遊記、エクソシスト、合唱団、証券誤発注、断片的印象が残るエンタメ作品 |『SOSの猿』伊坂幸太郎

皆さんこんにちは。

先週家族旅行でハノイベトナム)に行ってきました。

私と家内は居所のアジアの端から。大学生と高校生の子供たちは日本から。つまり現地集合。

私と家内は20年ぶりのハノイでしたが、ハノイは大分変わったという印象。観光客だらけ。でもハロン湾とかはかなり整備されたなあと感じました。当時は竹船でおばさんたちがよって着てこれ買えあれ買えとうるさかった。今はそういう物売りはあのあたりにいません。

 

さて台風のおかげで子どもたちはフライトが一日延期となり、急遽ホテルを2名で一泊延泊するなどしつつ私たちは居所へ戻りました。旅にトラブルはつきものですね。

子供は親をみて育つと言いますが、完全に親の趣味を踏襲し親無しでもエンジョイした模様。でも二人とも(妻も)読書だけは踏襲してくれませんねえ笑

 

そんなさなかに読んだのが本作。

はじめに

2009年の伊坂幸太郎氏の作品。

2000年初頭の奇想天外なエンタメ作品を彷彿とさせる先の読めない作品でした。

相変わらずの軽妙な語り口、個性的なキャラ、そして想像もつかない結末。

 

ってか、悪魔祓い、株の誤発注、西遊記、これらの要素が絡むエンタメ作品って、想像できますか!?

 

ある意味珍妙な物語

特長的なのは二つのストーリーが次第に交錯してゆくところ。

一つ目の話は、イタリア公認の悪魔祓いの「エクソシスト」遠藤二郎の話。

かつて憧れだった近所の「辺見の姉さん」の子の眞人の引きこもりにつき、この「姉さん」から相談に乗ってほしいと依頼を受けたもの。

 

もう一つの話は、ロジック・因果を突き詰める五十嵐真の話。彼は300億円の株式誤発注の原因を探るということでシステム会社から証券会社へと派遣されるという設定。

 

どちらも、軽妙で冗談だか本気だかわからん会話をベースに話が進みますが、これらを結ぶのが「西遊記」の孫悟空。このあたりはかなーり、奇妙。

 

ただ最終的には、「じっくり耳を傾けること」「話すこと」みたいなテーマが見え隠れしてきたと思います。人の心理や感情を一方的に判断するのではなく、観察や会話から徐々に理解しよう、みたいな。

また、私のキャリアのスタートが証券会社向け勘定システムの開発ということで、誤発注ネタはちょっと厳しくも楽しく読みました(証券コードと単位株をキーにしてチェックロジックを入れるべき云々、心の中で突っ込みを入れる等)。

 

伊坂幸太郎氏の第二期作

ちなみにですが、解説で栗原裕一郎氏が述べている通り、2007年の『ゴールデンスランバー』以降を第二期とし、『モダンタイムス』『あるキング』『バイバイ、ブラックバード』などを「モヤモヤシリーズ」「肩透かしもの」と呼ぶそう。本作『SOSの猿』もこちらに属します。

 

どうも、当初からのファンはこの作風がどうも好みではないとか。

あーね、あーね。確かに分からなくもありません。エンタメのどストライク、とはちょっと違います。

 

何というか、より深いテーマに抵触するように感じ? 個人的には違った意味で好きですが。

『モダンタイムス』は国家という大きな装置が暴走したら?という仮定はAI時代の昨今、あり得なくもない未来だと感じます。『あるキング』は逆らえない運命や、それに対する自己の構え、みたいなことを考えさせます。『バイバイ、ブラックバード』はそうですね、確かに奇妙な小説でした。ただこちらも、五股男性が逆らえない運命が見えるなかでもベスト?を尽くすという意味では『あるキング』と似通っています。

 

もし本作を読んで「伊坂幸太郎って言われるほど面白くない」と感じたかたは是非デビュー以降2007年頃までの作品を読んでいただきたいと思います。

 

おわりに

ということで伊坂作品でした。

旅行中に読んでおり、記憶がおぼろげなところを頭から記憶を絞りながら書き留めました。失礼しました。

 

評価 ☆☆☆☆

2024/08/14

インド奴隷的召使い→(殺人者)→起業家。何があった!? |『THE WHITE TIGER』ARAVIND ADIGA

はじめに

みなさんブッカー賞という賞はご存じでしょうか?

私の生半可な理解では英国版の芥川賞ないし直木賞、あるいは足して二で割ったみたいな賞。英国でその年出版された長編小説に与えられる賞で、Longlisted, shortlistedと順を追って候補が絞られ、最終的に受賞作が決まる、というもののようです。 

 thebookerprizes.com

 

で、今回読了したのが、2008年にブッカー賞を受賞した”The White Tiger”という作品。

いやはや、何ともドラマティックでアクションのある作品でした。マジでPage-turner。

 

ちなみにNetflixで映像化されている模様。また、日本語訳も出ているようです(タイトルがかなり変わっちゃっていますが・・・)

 

 youtu.be

 

 

 

どんな話か

で、本作どんな話かというと、とあるインド人起業家の独白です。

体裁としては、来印の予定のとある中国の大物へ手紙を書く、というもの。まるでおしゃべりをしているかのように語りは続きます。てか、手紙長くね?(本一冊分?)みたいな。

 

この起業家の半生を語ってゆくものです。子供時代、母親の死、奴隷のような召使い、因習的なインドでの生活、金持ちの息子(米国帰り)のドライバーとして雇用される、このドラ息子にデリーへ同行し生活を共にする、ドラ息子のの離婚と放蕩、とある事件を挟んでバンガロールでの起業と現況、等々と続きます。

まあこれがドラマに溢れていることよ。

 

良くも悪くもインド。その混沌とした有様

一番印象深いのはインドのカースト及び汚職でしょうか。

 

本作の主人公Balram Halwaiは菓子職人のカーストで、カースト的には下位に位置するようです。ドライバー兼雑務係で辛くも金持ち一家に雇われるも、ここから地位を上げるということは一生かかっても無理。因習の深さ・固執を感じます。

 

そんな時、人は政治の力で仕組みを変えようと考える向きもあります。

ところがBalramが覗き見る政治の世界は、Balramの主人らがデリーでせっせと政治家の友人・・(政治家本人でもないところがねえ)へ賄賂を運び、自分に都合の良いように政治家を籠絡し、籠絡されてゆく様子。

 

つまり、政治にも正義も希望も持てない現実。

 

おそらく舞台の設定は1990年代から2000年代のインドであり、それから20年近くたった現在を考え見れば、状況は遥かに異なることが予想されます。しかし、当時のインドが多かれ少なかれこのようであったことは想像に難くありません。

 

英語について

英語は読みやすい英語でした。元ドライバー現アントレプレナーによる独白なので、まあブロークンな喋りっぽい言葉遣いはしているのです。

でも、流石に筆者はコロンビア大学卒業なのでか、どうしても学のある感じの単語使いは隠しようもないなあと感じました。一例をあげると、lifeblood(n)血液(ただのbloodでよくね?)、ripple(n)さざ波・波紋(情景描写が詩的!?)とか。

 

まあでも、そんなイチャモンはどうでもよくて、兎に角平明な英語でどんどん読ませる英語でした。私は分からない単語は調べて進むやり方なのですが、私の場合は不明単語は1ページあたり2語程度。自分の英語レベルは分かりませんが。

日本語訳や映像作品もあるので、原文にチャレンジするハードルは高くないと思います。

 

おわりに

ということでブッカー賞受賞作品でした。

なんだか最近英語の本を読むと、結構インド系にヒットします。良くも悪くも懐の深そうな国ですし、勢いもあるんですかねえ。気になる国であります。

 

評価 ☆☆☆☆

2024/08/18

The White Tiger

The White Tiger

Amazon

 

 

インドの近現代史としては以下の作品は面白かった。

lifewithbooks.hateblo.jp


インド出身者が外国で搾取しあうという悲惨さ。これもなかなかだった。ちなみに2015年のブッカー賞shortlisted作品。

lifewithbooks.hateblo.jp

 

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