はじめに
25年以上ぶりの再読。私にとっては村上氏の代表作といっても良い作品。
大学時代によく読んでいました。苦悩し、文学・哲学をたしなみ、音楽を愛し、性的に満たされる「僕」に憧れていたと思います。
一回読んでは期間をあけ、また読んで。そういうことを何度か続けた作品です。
本棚縮小計画に沿って、再読後に本作手放す予定です。
どういう話なの
高校時代の親友キヅキを自殺で失った<僕>は、地元の神戸を離れ東京で平凡な寮暮らしを始める。そして19歳を迎え、キヅキの元恋人の直子に偶然東京で出会う。共に近しい人をなくし傷を負う者同士も、直子の精神状態は立ち直ってはいなかった。そして直子が20歳の誕生日に二人は結ばれるが、のちに直子は心の安寧を崩し、京都の山奥に隔離入院する。
<僕>は必死に彼女を求め、追い過ぎず、励まし、できれば東京で共に暮らしたいと願う。直子の同部屋のレイコさん(患者)もまた二人をサポートする。しかし直子は更に調子を落とし、他院に転院する。一度調子の良い時に京都の山奥に戻ってきた直子は密かに自らの命を絶つ。
<僕>は打ちひしがれ茫然とする。
相変わらず、村上作品の<僕>はモてる
まあ本作、一言でとらえれば、心の傷とその恢復の物語と言えましょうか。
シニカルに捉えればナイーブな男性の回顧録、と言えなくもないです。
ただ、本当に、本当に下世話な印象で申し訳ないのですが、私が一番印象に残ったのは<僕>がいかに女性に困っていないか、ということでした。
病んでいる直子がいる。大学には気の強い緑というガールフレンド。寮の先輩永沢の彼女ハツミさんからはいつでも女性を紹介すると言われる。永沢と繁華街に出て、女の子をひっかけて一晩の欲求をみたし、肌を温める。
そして極めつけは、直子を亡くした後、病院をでて現世でやり直すレイコさんと交わる。まあこれは恢復のためのカタルシスとして描かれているようにも感じましたが。
本作を初めて読んだのは高校三年か大学一年でしたが、ついぞこんな学生生活は送れなかったですねえ。
東京の知っている場所
さて、久方ぶりに読み直して、昔見知った場所が出てきていて「おっ」となりました。
先ずは新宿のジャズ喫茶DUG。
温かい真空管アンプみたいな音でジャズがかかっていました。新宿でちょっと変わってて落ち着いた店というとここに連れて行くと、友人にそこそこ喜んでもらえました。
あとは四谷の土手。
<僕>と直子は真田掘近辺を市ヶ谷方面に歩いたのかなあと。実は今の妻に30年くらい前にコクった場所がその土手ですわ笑 周りは上智大学の学生とか女子学院の生徒さんとがが多かったですね。
そういう懐かしみもあり、後にもたびたび本作は度々読んだ記憶があります。
おわりに
ということでかなり久しぶりの再読でした。
こうしておっさんになってから読むとさすがに<僕>のナイーブさに結構引っかかりました。ただ瑞々しい青年期の物語だけに、死別の別れ、体の疼き、理性と身体の相克などのテーマは、心からではなく、若かりし頃の追憶と共に理解しました。
ちなみに、本作、暗いだけの話ではありません。脇を固めるキャラ、例えば突撃隊、永沢、レイコさんなど、個性が強いキャラが異なるプリズムを物語に映写します。加えて村上氏の洒脱な会話が幾分雰囲気を軽くしていると思います。
自分はナイーブだ、今ちょっと暗くなりたい、という方にはおすすめ?わからんけど。
評価 ☆☆☆
2024/08/19
深刻ではない、洒脱で軽妙な村上作品というと以下をおすすめします。


