以前、『大いなる遺産』を読みました。凄くではないのですが、150年以上前のものとしては読めるじゃん、意外と面白いよ、というのが感想でした。
その時の「意外と面白かった」が頭に残っている時分、近くの新古品を売る書店でこちらの本を見つけ、購入したものです(これまた500円弱)。
本作、A4より若干大きいサイズで厚さは1cmくらい。絵本です。まあこれならクラシックをすいすーいと読めそう。
しかし、ページを開いて驚愕。字が細かくないですか!! 絵本ですよね!?
(これを見た途端、見なかったことにして本棚に戻しました。そして半年は寝かせました。。。これは絵本でなくて新聞だ)
ですので感想は、「長い、つらい、で、まあまあ面白い」というかんじ。懸命にかじりついて丁度一か月、31日で読み切りました。
ふと思い出したのですが、図書館で見かけたのは新潮文庫で4冊本だか5冊本だかの相当なボリュームのものでした。あれをみて日本語訳を読むのをやめた気がします。
その点、本作は大判が幸いしてうっかり買ってしまえる(一応絵付きだし)し、買ったら読まないともったいないということで読むことができたのかもしれません。
作者評が素直過ぎてよい
本作ですが、この出版物にSpecificに良いのは、なかなか詳しいディケンスの伝記が載っていることです。
大いなる遺産、クリスマス・キャロル、そしてこのオリバー・ツイストも、どれもロンドンの底辺層を見事に描写しているじゃないですか。ですので私、筆者はきっと心暖かな慈善文筆家だろうと勝手に想像していたのです。
違いました。
奥さんに子ども10人産ませて、その後不倫して、初めの奥さん以外の数人の女性に遺産を残すとか、結構やりたい放題やんか!最終的にひっそりなくなるようですが、リアルな作者像の描写に妙に感激しました。
あらすじ
話のストーリーは今となっては目新しくもないです。
孤児のオリバーが食事もろくに与えられない生活に嫌気がさして家出してロンドンに出る(多分小学生低学年くらい)。そこで悪党の一味に助けられるも、悪事に手を貸すことを強要されそうになり、そこでオリバーだけが(ヘボく)捕まる。というのもオリバーは心根の素直な男の子。悪党どもがオリバーを奪還しようとしたり、いろいろすったもんだが有るも、オリバーは良家でその純粋な信心を認められ共に暮らす事になる。その生活の途中で彼の出生の秘密が明らかになる。最終的に彼にまとわりついていた悪党は惨めな結末を辿り、オリバーは彼らから自由になる。
度々申し訳ないのですが150年前なら多分めちゃくちゃ面白いのでしょうが、今なら類似の話は多くあるのではないでしょうか。そして、長い。
絵から学ぶロンドン
もう一つ、やはりいいのは昔のロンドンの様子が絵で出ている事です。テムズ川沿いの様子とかは東南アジアのスラムみたい。またチャリング・クロスとか、コヴェント・ガーデンとか、今も名を残す通りが書かれているのは、きっと今のロンドンを知る人にとってはあたかも古地図を見るように楽しめるのではないでしょうか。
英語は結構苦しいですが読めます
一応読めました。でも古臭いし単語も古い感じ。なまった口語表記(visitがwisitとか書いてある)がしばしば出てくるので辞書にも載ってない単語かどうかの判断に迷うことも。柄の良くないしゃべり方、という事なのでしょうか。countenance(n)表情、とかscot-free(adj)無罪放免の、とか、死ぬほど知らない単語に出会いました。
おわりに
兎に角長かったです。
我ながらこんなに長い本を読むなんてどうかしていたのでは、と少し思いました。
というかどこが名作なのか?
私は、ストーリー云々よりもむしろ、彼の他の作品同様、かの大英帝国にあってこれだけ悲惨な人たちがいた事を物語として残したことに価値があるように思いました。
皆さんはどのように読まれましたでしょうか。
評価 ☆☆☆☆
2021/09/06