海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年もセカンドライフ等について思索したく。

米国経済エッセイ、昔話として楽しく読める |『人と企業はどこで間違えるのか?』ジョン・ブルックス、 訳:須川綾子

 

(愚痴長めで済みません)

皆さん、こんにちは。

最近会社の管理職(ローカル)の退職が相次いでいます。

 

補充が必要なわけですが、当地の金融機関ですと、人を雇うとき、結構多額の費用がかかります。

 

まずスタッフ・トレーニング・ファンドという謎の業界団体への上納金(月給6か月分)。日本で言うところの全銀協とか日本証券業協会とかに収めます。引き抜きを極力抑えて各社で育ててね、という事らしいです。その代わり、ある一定の研修を受けるとこの業界団体へクレームできるという建付けです(殆ど使っていません)。

加えて、転職エージェントに大体月給の2.5カ月くらい払うそうです。ちなみに当地のエージェントと先日会食したら、最近はlinked-in経由で直接雇用するケースが半分(!?)くらいに上るそう…。うちの人事は殆ど働いていないかも?しれん。

そして最後に、buy-out、うちは最大2か月分払っているそう。これは退職する前にnotice事前通知を1カ月前とか2カ月前とか知らせるというのが通例ですが、それより前に辞めて新会社に移る場合はペナルティが発生します。そのペナルティを個人ではなく新会社(うち)が肩代わりする、というもの。

 

つまりですよ、一人雇うのに、最大その方の給与の10.5か月分が経費として計上されます。

スタッフレベルの退職が相次ぐのならば、ああ、あそこの管理職はダメだなあ、と思うのですが、管理職がやめると金額はバカにならない。管理職の退職は、シニアマネジメントが責任なんではないのか、と思ってしまいます。

シニアマネジメントといっても2-3年でhop-on, hop-offの駐在の方々なので、残念ながら多くを期待できません。

 

ということで暗澹たる気持ちで愚痴りました。失礼しました。

因みに私は数字管理が仕事なので今年も経費予算がオーバーしそうだなというのが気になっていたのでした。

 

 

 

はじめに

本作は、『タイム』、『ニューヨーカー』でライターをつとめたジョン・ブルックス氏による、米国経済エッセイ集、のようなもの。

いわば戦後米国の経済博物誌、とでも言ったところ。表紙の帯に『ウォーレン・バフェットからビル・ゲイツに渡され、20年間読み続けられた最高のビジネス書』とありますが、やや誇張である気がします。

 

少し事例が古い

戦後米国1950's-1960'sの経済ネタが太宗であることから、やや古臭いなあ、というのは第一印象。

その中でも今でも教訓となり得るものもあれば、今では考えられない・あり得ない、というものもあり、一種の昔話、「かってはこんなこともあったそうですよ」という物珍しさと共に読むので丁度良いののかもしれません。

 

今でも響く、興味深いエピソード

その中で特に面白く読んだのは、以下の三つです。

 

「第10章:営業秘密の変遷 ― ダンス・クッキー・宇宙服」

こちらはとある化学メーカーで宇宙服開発に従事していた男が、他社への転職を上司に告げると、営業秘密の持ちだし禁止を言い伝えられ、果ては訴えられるというもの。

 

書類で営業秘密を持ち出すのは当然アウトです。でも、その会社で得たノウハウ、あるいは転職者が体得したスキル、そうしたものも営業秘密になり得るかもしれない、と思ったのです。これが国を跨ぐ転職の場合(米→中・ソとかその逆とか)など、結構シャレにならない騒ぎになりかねないのだろうなあと思いました。

もちろん私には秘密になるような技術もノウハウもありませんが、勝手に想像して勝手に震えていた次第。

 

「第5章:コミュニケーション不全 ― GEの哲学者たち」

こちらはGEによる談合のお話。

コンプラと営業目標は常にジレンマになるファクターだとは思います。その中で、営業トップが談合をしたことを「遠回しに」マネジメントに報告する。しかし、経営トップはその「遠回しな」方向をある時はダイレクトに、ある時は全く違った意味にとらえるという話。

今ならば経営者も連座して退任することが多そうですが、今回の場合は営業部門が罰され、経営陣は安泰だったという話。タイトルは言わば揶揄。

 

「第2章:公正さの基準 ― テキサス・ガルフ・サルファー社インサイダー事件」

これは古きアメリカの資源企業のインサイダー取引の話。

じわじわと関連者が少しずつ株を買っているのが、微妙にコミカルでいじらしい。当時のブルームバーグだかロイターだかの証券ニュースはタイムラグがあったそうで、当該企業が鉱脈発見を記者発表した後に株を買った副社長か何だかが「未公開情報をもとに株を売買した」と嫌疑をかけられたのがちょっと気の毒。

 

それ以外にも、大々的に新車開発に失敗した「第1章:伝説的な失敗 ― フォード車エドセルの場合」、或いは、仕手戦に戦いを挑んだスーパーマーケット経営者の記録「第1章:最後の買い占め ― メンフィスの英雄かく戦えり」などは面白かったです。

 

おわりに

ということで20世紀米国の経済事件簿、的なエッセイ集でした。

これを読んでも、企業とは、とか云々は語れませんが、ちょっとウンチクが増えた気にはなれました。

 

評価 ☆☆☆

2024/10/20

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