海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年もセカンドライフ等について思索したく。

一括りに「ユダヤ人」とか言えない | 『ユダヤ人とユダヤ教』市川裕

皆さん、こんにちは。

 

ここ数年、聖書を読んでいます。

聖書を読む前は、その解説書などを読んでいました。なんだか本物を読まずに解説書ばかり読むのもアレだよなあと思い、聖書を手に取ったものです。

で、旧約は読破し、現在は新約の途中です。なので、旧約関連の解説書を再読し、内容をより良く理解しようというものです。

 

ということで今回再読したのが本書であります。

 

概要

本書は、ユダヤ教を単なる宗教ではなく、人々の精神と生活を支える「神の教えに従った生き方」と捉え、苦難の歴史の中で育まれたその信仰、学問、社会を概説する入門書です。ユダヤ人のアイデンティティと深遠な精神文化を解説するもの。

 

ユダヤって旧約だけじゃ御座いません

上記、AIにまとめてもらいましたが、ちょっとボンヤリしていますね。

もっと簡略に言えば、ユダヤは文化だ!ユダヤはもっと多様であり、歴史があるのだ、というもの。

 

旧約に基づきながらも、それを解釈するタルムードや、ラビとの会話を通じて、より詳細な日常のルールを構築しているんだよ。また、出身地域により結構世俗的にどう対応しているのか考えがちがうんだよー、という感じ。

 

ユダヤにも派閥が有ります

例えば、国民、民族に関して。

フランス革命後、国民国家という概念を学んだユダヤ人は、それについての反応も様々であったとのこと。

つまり、国民として各国で同化してゆくのか(市民権を得られた!国民として認められた!)、あるいは自らの民族の国家を持つのかという二派。

 

前者はアメリカやフランスに定住し、後者は建国後のイスラエルへと赴く。根っこは一緒であるも、そして時に支援し合うも、必ずしも意見が一致するわけでもないし、同類であるとも限らない。

 

ひっくるめて「ユダヤ」って判断するのは危険

情報が入ってこないわりに、「ユダヤ」という言葉は人口に膾炙しているけれども、きっと自らもっと学ばない限り、その多様さは理解できないのだろうな、と感じました。

 

民族の多様さというと、先日の出来事でこんなことがありました。

今年の頭にケニヤに旅行に行った際に一人のインド人と知り合いになりました。彼は先月東南アジアに旅行しにくるということで私の居所にも来ました。折角だからと、週末に一緒に飲茶をしたのですが、その際の会話。

私(以下「オ」):そういえばこっちに来て、インド料理とか食べた?

インド人(以下「イ」):うん、食べた食べた。

オ:へー。で、どう思う?なんかまがい物みたいな感じしない? ほら、こっちの日本料理だと独自にアレンジした日本料理なだけなのが多いから、インド料理はどうかなって。

イ:いやあ、こっちのインド料理は全くの別物だよ。これはこれで独自の文化

オ:え?そうなの?なんかインチキとか感じない?

イ:いやいや、あれは独自のもの。だって考えてごらんよ。プランテーションだなんだってイギリス人に連れてこられて200年くらいその子孫がそのまんまなんだよ。おんなじ言葉、おんなじ文化といったって、やっぱり変わってくるよ。何か昔の文化を持ち続けるっていうか。インド本国はもっと変化しているかな。こっちの人はタミル語とか文化とかもっと昔の習慣を守っているみたい。

オ:へー、そうか。なるほどね。で、こっちのインド料理と本国のインド料理はどう?

イ:まあ、こっちのインド料理はやや弱いというか、本国の方が味が「強い」ね。

 

という感じの会話。

つまりですよ、インド人ももはや一括りにはできない。インドで生まれ暮らしているインド人、米国に移り住んだ移民二世、或いは東南アジアに散らばるインド人の末裔。これらは外見や文化背景は似ているように見えて、実際は同一視できないということです。

 

同様に、中国人と、同じ先祖を持つ東南アジアや欧米に散らばる華僑。これらも同じではないということ。在日韓国人が本国韓国に留学したら馴染めないというのも韓国人がひとつではなく多様である証拠です。

 

で、ユダヤも、こういう文脈の中の多様性を包含しているんだと、本書を読んで感じたわけです。

 

(因みにこのインド人、その後お前ら日本人だって同じだろ、東京人と大阪人とでは大分違うんだろ?とかまくし立ててきました。)

 

おわりに

ということでユダヤ概説書の再読でした。

これ以上ユダヤ文化に突っ込む気はないのですが、改めてユダヤも色々あるのだなあと感じました。

 

ユダヤ文化はおなかいっぱいだけど、ユダヤの歴史、あとはレヴィナスは今後どこかで読んでみたいなあ。

 

評価 ☆☆☆

2025/10/03

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