
あらすじ(裏表紙より)
日曜日、お父さんがいてお母さんがいて「僕」がいて、お兄ちゃんとお姉ちゃんは恋人がいて――。ある町の春夏秋冬、日常の些細な出来事を12の短編小説でラッピング。忘れかけていた感情が鮮やかに蘇る。夜空のもとで父と息子は顔を見合わせて微笑み、桜の花の下、若い男女はそっと腕を組み……。昨日と同じ今日なのに、何故だか少し違って見える。そんな気になる、小さな小さなおとぎ話。
重松氏の思い出=キコク受験
本作、重松氏がサンデー毎日に連載を持っていたものを作品化したもの、だそうです。
重松氏は直木賞作家で、本作は1999年の作品。
氏の名前は存じ上げていましたが、実際に作品に触れたのはおそらく上の子の高校受験の際だと思います。2人の子どもたちはどちらもキコクで高校に入れてもらいましたが、中学で日本に戻ることを決めた彼らの当時の日本語能力は、一言で言うとボロボロ。
小学校の漢字、作文など、市販教材をやらせると同時に、大人(の私)から見ても面白い本を読ませることで日本語に馴染ませるという作戦を取っていました。
多分小学生の国語の問題で出ていたのが氏の作品で、なかなか面白いと感じ、数冊買い求め、読み、その後子どもたちに読ませたものです。
本作はどこかのブログで紹介されてwish listに入っていたものです。
ほのぼの、だけではない
まあ、いかにも重松氏らしい作品だったと思います。短篇集。
ほんわか、ハートフルな作風の中に、ちょっぴり汗や涙のしょっぱさが滲む、みたいな。
裏表紙に「小さな小さなおとぎ話」とあるように、あんまり読み過ぎるとベタすぎて食傷気味になりそうですが、たまーに読むとこういうのは心が洗われます。
特に私が気に入ったのは、トップバッターの「チマ男とガサ子」。整理好きな男(チマチマしていると大体振られる)とがさつな女のカップルの話。べたべたなハッピーエンドが、典型過ぎて良いかなと。
両親の離婚により諸々影響を被った姉妹が、死期の近づく父親に会いに行くか逡巡する「寂しさ霜降り」も良かった。主人公はどちらかというと妹。その妹目線で綴られるしっかり者の姉の人生を諦めてゆく描写が、心に痛い。でも読み口はさすがの重松流で明るい読後感。
「後藤を待ちながら」も良かった。ちょっとからかっているだけだと思っていた旧友が自殺未遂をしたという過去をもつおじさんが主人公。田舎の同窓会に出席すべく、息子と共に故郷に向かう彼は、「自分はいじめの加担者だった」と思うに至るわけがあった。ほのぼのとした筆致で綴られる少年たちの行為の残酷さのコントラストが秀逸。過去を過ぎたものとしか見ようとしない旧友との心的距離の描き方もこれまた上手に描きます。
おわり
ということで、大分久しぶりの重松作品でした。
こういうのもたまにはいいですね。日本語が下手なうちの子どもたちにも、こういう良作で読書を再開させたいなあ。
評価 ☆☆☆
2025/12/12
