当初は中古でも高かったので
こちらの作品、2021年の芥川賞受賞作ですね。筆者が若いということで話題になっていたと思いますが、ほとぼりが冷めたというか、落ち着いてきたところで手に取って読んだ次第です。
新鮮で清冽
まず感じたのは、若さ。バーガー屋さんじゃないけど、Freshness。
これは綿矢りさ氏のデビュー作『インストール』を読んだときにも感じましたが、少し自意識が強めな文章、とでも言いましょうか。
どちらも高校生が主人公でしたが、高校生の割には自己省察のできる冷静で的確な表現力。他方で、己の表現の力を意識してかしていないのか、時に華美に見えたりあるいは流行の言葉だったり、世の標準から軽々と逸脱するような若者らしい思い切りの良さを表現の随所に感じました。
推し活は期間限定の宗教? 学習障害も気になる
書き味以外で強く印象的だったのはやはり主人公の造形でしょう。
推し活は言わば生き神を奉る宗教のような活動だと感じました。ただし、エターナルなものではなく、むしろ終わりを理解しての活動であり、人間の生のごとく儚いことをどこかで分かりつつ活動に力を注ぐ感じなんでしょうか。
私はこれを宗教としてならばむしろ理解できるのですが、その有限性を各々が理解しつつ時間やお金を使うことにこの活動の特徴があるような気がします。そのうち東浩紀氏あたりが評論しそうだなと感じた次第。
そして、もっと心配になるのはこの主人公、きっと学習障害ですよね。
一昔前でしたら、知り合いの口利きで一般職・事務職で社会に参加するみたいな入口の余地がありましたが、日本社会は潔癖になりすぎてそういうルートはもはやないですし。この主人公も適切なケアが必要でしょうし、整理できない・働けないの主人公を叱る両親もちょっと違う気もします。一生分かり合えない大きな淵が両者の間にありそうで、そのスタンスの違いが大きすぎて読んでいて悲しくなりました。認知症の親に「何度言えばわかるんだよ」って怒鳴るのと変わらない気がします。
おわりに
ということで芥川賞受賞作品を読了しました。
よい表現が分かりませんが王道の健常からやや外れる、言わば境界に生きる方々を主人公に持ってきた点が新しかったと思います。インクルーシブな社会が喧伝されるなか、多様性を考える上でも参考になる作品だったと思います。
評価 ☆☆☆
2025/12/20

