海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

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マクロ経済学と歴史文化の交差点 |『波乱の時代(下)』アラン・グリーンスパン 訳:山岡洋一、高遠裕子

最近気づいたこと。 いつも本文の内容とは全く異なる「まくら」を書いてから感想を書くのですが、この「まくら」の部分が他のポストと関連していると思われることがあるようです。ウーム。 前回高校野球の本を読んだのですが、関連したポストとしてサミュエ…

自分を塗り替えることでしか生きられなかった者への共感 |『ある男』平野啓一郎

私の在所には、日本映画祭というものがあります。 国際交流基金という独立行政法人が主催しており、主に日本の文化・芸術を広めるような活動をしています。で、そこで上映される日本映画が私のところですと大体300円くらいで見れます! ローカルの外国人では…

セントラルバンカー回顧録、現代史的にも面白い |『波乱の時代(上)』アラン・グリーンスパン 訳:山岡洋一、高遠裕子

金融業界で業務に携わっているので、その業界のかたの回顧録は役に立とうと考え、ずっと積読しておりました。 実は一度トライはしたのですが、マジで長い!そのため一か月かけても上巻の途中までしか行かず、忙しくなったりなんだリで挫折。今回は気を取り直…

息子と四人の個性的な父親、洒脱な会話とツイスト |『オー!ファーザー』伊坂幸太郎

またもや面白い! もう毎回面白いのですが、面白さの説明に苦慮します。ボキャブラリーが貧しくて。 伊坂作品の良さ・面白さってどういえばいいんだろ? そう考えて思い浮かんだのは、「洒脱」、「ユーモラス」。我ながら悲しいほどの低表現力です。 で、裏…

ピースが連結してゆく快感 |『楽園』宮部みゆき

先日、家で仕事していると、ふと家内が背後に立ちました。もちろん、バックハグではありません。頭ポンポンでもありません。 どうやら私の頭に数本の白髪を見つけて大喜びしている模様です。 遺伝的要素もあろうかと思いますが、私、50手前にして薄毛の気配…

アイデンティティを失う大国。他方で感じる大国のダイナミズム |『分断されるアメリカ』サミュエル・ハンチントン 訳:鈴木主税

いやあ、甲子園、終わりましたねえー。 息子の部活引退をきっかけにドはまりした高校野球でしたが、非常に面白かったですね。汗、涙、信頼、結束。 なんだろ、一匹狼の私ですら刷り込まれている価値観に、涙目になりっぱなしでした。 普段出ないようなミスが…

ジャーナリズムとは?国益とは?命とは? |『運命の人』山崎豊子

居所に戻って参りました。 まずもって感じるのはその過ごしやすさ。 熱帯ですが、熱帯夜ではありません。昼でも気温は33度程度。夜だと体感20度代後半。断然過ごしやすい。 脳梗塞再発におびえるアラフィフには有難い環境であります。季節の移り変わりが無い…

聖書そのものを読む前、最中、読んだ後、全ての場面に役立ちそう |『聖書の読み方』大貫隆

とある総合病院の脳神経外科に行ってきました。 詳細検査は後日ですが、それ次第では脳の血管のバイパス手術も有り得るそうです。 今まで色々病気や手術をしてきましたが人生最大かもです。 ということで9月の再帰国決定。この一大診察に10割負担で臨むか、…

耳慣れない職:家裁調査官へ光を当てる作品。内容は絶品エンターテイメント |『チルドレン』伊坂幸太郎

脳ドック後の診察に軽ーい気分で行きました。神妙・シリアスに総合病院での再検査を言い渡され、紹介状を渡されました。来週帰国するんですが、というと、それどこじゃないですよ、と。真顔で、帰国はお勧めしません、と。 私だけ飛行機をキャンセルして居残…

静謐さと微熱感のある滑らかなノワール、表現の妙 |『掏摸』『王国』中村文則

ここ数年、純文学系の読書は子どもたちに読ませるための下読みでありました。今般、下の子も高校に上がり、もはや言うことを聞くような距離にもおらず、そうした下読みは一旦ストップ。 では何を読むかというと、Wish Listに入っていたけど長らくそのままに…

現代日本にもつながる、重厚な戦前戦中史 |『日米開戦の正体』孫崎亨

今年の頭に軽い脳梗塞(TIA)を発症したこともあり、今回の一時帰国を利用して先日脳ドックなるものを受けてきました。 シブチンに付き、2万円ちょっとの格安コース。頭頚部のMRI/MRAを取り、あとはAからFまでの判定をしてくれるものです。 で、先ほど結果が郵…

「終末」でも生きるという倫理 |『終末のフール』伊坂幸太郎

これを書こうとした正に今、普段使っていた外付けHDDが壊れました。正常だとランプが青なのですが赤くなっています。ため息。 今日は朝からケータイのはてなアプリも不調で開かないし、なんだかIT運が低めかもです。 『明日死ぬとしたら、あなたならどうしま…

いい意味で教科書の落書き。旧約と美術を学びたい方に |『イラストで読む旧約聖書の物語と絵画』杉全美帆子

・・・すみません。引き続き聖書の入門書です。そろそろ入門書は終わりにしたいと考えているものの、積読している本は消化したい。 で、残っている中で、この本は面白かった。うん。 私が聖書を勉強したい理由の一つに美術館に行ったときにより絵画を味わい…

自分を理解する一助に。個人的に90%以上の納得感 |『さあ、才能に目覚めよう[新版]ストレングス・ファインダー2.0』トム・ラス 訳:古谷博子

子どもたちには「自分のやりたいことをちゃんと見つけろ」とか言いつつ、未だに自分に何が向いているのかかよく分からない(もう遅いよ)50手前のおっさんです。 人生の夕暮れすぎ(夕飯前くらい?)ではあろうかと思いますが、世情を鑑みるとまだまだ仕事し…

過去作予習要。家族と遺伝子とどんでん返しの文学作品 |『重力ピエロ』伊坂幸太郎

こんにちは。 今月半ば、高校三年生の息子の甲子園予選を見に、日本に一時帰国することにしました。親としては最初で最後の甲子園予選の観戦です。今回は二週間ほどですが。 そしてちょうどそのころ、7月の半ばですが、大学の出願について幾らか子どもをサ…

学級崩壊、消費者としての生徒。社会の状況等を的確に指摘した良書 |『下流志向』内田樹

皆様こんにちは。 ほんの数日前に読了した本作。しかし、今内容を振り返ろうとして、端的に内容を言い表そうとすると、なかなか難しいことに気づきました。手がとまります。 振り返ってどんな本を読んでいたかを記録するために立ち上げた当ブログですが、内…

本当によくわかった!気がする! |『図解とあらすじでよくわかる「聖書」入門』保坂俊司

聖書関連の読書が続いています。 入門書は相応に読んだのですが、いまだに怖くて本チャンの聖書そのものには手が伸びていません。旧約の決定版?ともいうべき70人訳聖書も購入したのですが、その分厚さにおののき(8cmくらいかな。講談社学術文庫!)、「…

圧倒的面白さの群像劇。おすすめ |『ラッシュライフ』伊坂幸太郎

ひとこと ここ数か月、伊坂幸太郎作品再読フェアであります。 こちらの作品も、面白くてあっという間に読了。 人間関係が次第に明らかになる群像劇 別個に展開する物語が、結末に進むにつれて絡み合ってゆく群像劇。その関係が明らかにされるたびに「あ、だ…

気持ちはエジプト・トルコ・イスラエルへ |『キリスト教の“はじまり” 古代教会史入門』吉田隆

今年の勉強テーマであるキリスト教ですが、何とか2冊目が読了。 そもそもキリスト教を勉強したい理由ですが、一つはウンチク垂れたいという(アホ)。というか、文学・歴史、色々なところに伏線というか基礎として伏流してるので、西洋の文学・哲学などのテ…

こういう女性はめんどい?お尻がむず痒くなる感覚 |『プラナリア』山本文緒

大学で、学科もサークル(軽音楽部)も一緒だった、カサギという奴がいました。 そいつはちょっと変わっていて、いつも全身真っ黒なカラスのような服ばかり着ていました。音楽サークルということでどんな音楽を聴くのかと問うと、そいつの場合は、ジミヘンと…

大枠のキリスト教史を押さえつつ、興味深い逸話をちりばめた佳作 | 『キリスト教入門』山我哲雄

今年は、キリスト教関連の書籍をキチンと読み込もうと思っておりまして、一年の目標としておりました。気づくと既に6月。そしてこれがキリスト教関連としては今年一冊目となります。 しかし、いつも思うのですが、岩波ジュニア新書の「ジュニア」ってのはど…

斬新な設定で読ませる、カカシ殺人事件 |『オードュボンの祈り』伊坂幸太郎

突然ですが、最近書こうという気が減退しています。 ブログとか長くやるとよくあることかと思いますが。 自分のポストを見返すたびに、何かワンパターンだとか、誤字脱字が多いとか、語彙が少ないとか、要は下手過ぎて萎えると笑 とは言え、技巧を凝らしてき…

米国下層労働者階級の終わらない悪夢 | 『ヒルビリー・エレジー』J・D・ヴァンス 訳:関根光宏、山田文

米国というのは実に不思議な国であると思います。 GDP世界一を誇りながら、その実、貧富の差も相当激しい。2021年のOECDのジニ計数ランクでは世界第5位(なお日本は世界11位)。 起業やイノベーションが次々と発生する一方、貧困・暴力・麻薬・離婚などの問…

異時点のストーリ構成が秀逸、ああなるほどと唸ってしまう |『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂幸太郎

突然ですが、旅行でパースという所に来ています。 金がない金がないとぎゃーぎゃーいう割に、趣味は金がかかる旅行だったりします。で、日本への一時帰国や現在の居所の国内旅行を除くと、実にこれ4年ぶりの国外への旅行です。 4年ですよ。いやはや、コロナ…

ある種、斬新な恋の終わり方? ミステリテイストの恋愛話 |『木漏れ日に泳ぐ魚』恩田陸

同棲というと、私も彼女(今の嫁)と同棲していましたっけ。大学生でした。 でも一緒に暮らすと、まあ嫌なところが目立つもの。同棲解消しましたよ。 彼女は就職、私はわざわざ地方の大学院を受験という形で。彼女は東京の会社へ、私は関西へ進学しました。 …

悲しいファミリ―ヒストリー、でも未来は暗いだけではない |『さくら』西加奈子

こんにちは。 最近、私の居所も暑い日が続いております。日本も暑いそうですね。 東南アジアというとスコールというイメージ、ありませんか? こちらでも毎日、ザッパーっって感じのスコールが降ります。小一時間くらい。 でもここ数日はスコールの来ない日…

復讐の横取りは、予期せぬ結末へ。満足度の高い、流石の伊坂作品|『グラスホッパー』伊坂幸太郎

読書でストレス解消をしてみた、という話です。 まあ家でも、仕事場でも、ストレス、あるじゃないですか。人に言えない悩みとかもありますよね。言ってもわかってもらえないことはもっとあるし(うんうん)。 これまで色々解消法に変遷がありましたが、読書…

米国の白人貧困層はどこへ流れつくのか | 『ノマド』ジェシカ・ブルーダー 訳:鈴木素子

今年は、セカンドライフをテーマに、老後の生活設計の参考になるような本を選んで読んでいます。 その一環で見つけた本作、名前はモダンで自由な感じでしたが、読後はしこたま暗くなるものでした。反面教師とまでは言いませんが、こうなったら自分はキツイな…

共働き夫婦の子育ての格闘からの、うるうる感動のフィナーレ |『THE ROSiE RESULT』GRAEME SiMSiON

今更ですが、気付きました。 「最近俺、英語の本、全然読んでない! 今年になって5か月目でわずか二冊!」 昨年は結構調子よく読んでいたんですよね。ひと月に一冊ペースくらいで。 今年は年初から日本に帰っていて、どうしても日本語の読書に引っ張られた気…

エンタメでもあるけど、深堀りもできる良作|『きりこについて』西加奈子

ポリティカル・コレクトネスかまびすしい昨今です。 「ぶす」という言葉。口ずさむのも憚られることがあろうかと思います。即、「炎上」しかねないNGワード。テレビやラジオなどのマスメディアをはじめ、SNSなど不特定多数の視聴者・読者に届いてしまう場で…

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