海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

歴史・文化

ローマ史大家の名著で修行のような読書を楽しむ―『新訳 ローマ帝国衰亡史』著:エドワード・ギボン 訳:中倉玄喜

まさに修行のような読書でした笑。 500ページに迫る大著。洞察にあふれる記述に驚きの声をあげることもある一方、ややもすればダラダラと続く人物描写が眠気を大いに誘う事もありました。毎日70ページとして1週間でスケジューリングするも果たせず、途中でリ…

私には合いませんでした。―『なぜ国家は滅亡するのか』著:中西輝政

端的に言うと、うーむ、残念。という一言。 本作は、佐藤優氏と手嶋雄一氏の対談で言及されていて興味を持ったと記憶しています。 lifewithbooks.hateblo.jp 現実世界を取り巻くパワーバランスは米国中心。彼の国がどうなるのか、中国はどうか、インドだって…

ブルボン王朝は性欲ダダ漏れ?の印象(歴史のほんの一側面だけど)―『ブルボン朝 フランス王朝史3』著:佐藤賢一

概要 フランス史のなかでも、ブルボン王政時の歴史を人物中心に濃ゆく濃ゆく描写しています。ビギナー向けの新書というより、あくまでフランス勉強したい方、フランスマニア等に勧めの作品。 なお本作は3巻シリーズの最終作ですが、単体でもきちんと読める形…

多民族国家中国の歴史。こりゃまとまらないはずだわ―『世界史とつなげて学ぶ中国全史』著:岡本隆司

中国というと我々の多くのイメージは中国共産党とか、共産主義とか、中華料理とか、門切り型のイメージを持っていることが多いと思います。 本作はそのような通り一辺倒な中国のイメージを壊すとともに、作品名にある通り、日本やその他の諸国の歴史と関連付…

ユダヤについての偏見を洗い流す実直な作品―『ユダヤ人とユダヤ教』著:市川裕

嫌韓とか嫌中とか、あらゆるものを十把一絡げに嫌い・反対と感情的に判断してしまう人がいます。子ども達にはよくよく、ああなってはいけない、物事は大抵多面的なもので、「全ての~」「あらゆる~」という言い方は大体間違いだから、と言い含めていました…

アンリ、シャルル、アンリ、シャルル、たまにルイ。。。名前が混乱する! 英国との百年戦争がメインのヴァロア朝を描く―『ヴァロア朝 フランス王朝史2』著:佐藤賢一

概要 フランスの中世の歴史、なかでもヴァロア朝を扱っています。 教科書的な事実の羅列ではなくお話であるので、楽しく読めます。他方で、当時のヨーロッパを共通して起こった事象(例えばペストとか、あるいは宗教改革とか)に関しては多くを触れていませ…

読んでも王様の名前は覚えられないけど、本の内容は面白い!―『カペー朝 フランス王朝史1』著:佐藤賢一

世界史を勉強しています。私の先生は、古代ギリシア・ローマが終わると、ゲルマン大移動や十字軍、そして神聖ローマ帝国へとすすみ、あれよあれよとという間に中世ヨーロッパへと進んでしまいました。カロリング朝、カペー朝はノルマン公国はじめイギリス史…

古代ギリシア・古代ローマの大著。興味があれば眠気を克服できる!?―『ギリシア・ローマの盛衰 古典古代の市民たち』著:村川堅太郎、長谷川博隆、高橋秀

概要 故村川堅太郎(東京大名誉教授)、故長谷川博隆(名古屋大名誉教授)、高橋秀(立教大名誉教授)の三氏による古代ギリシアから帝政ローマ終焉頃までの歴史を描く大著。 感想 私、より効率的に短時間で大学受験に合格するため、世界史を勉強しませんでし…

19世紀イギリスを文学作品を通じて読む―『大いなる遺産』著:C・ディケンズ 訳:山西英一

まず率直に感想を言いたい。結構、面白い!すんごく超絶面白い、というわけではありませんが、150年前に英国で書かれた本であることを考えると、時間的・距離的な隔たりを越えてもなお、人間というものは変わらないのだなあと感慨深く思いました。 息子が中…

内容が濃すぎる。米国的良心が描く日本を詰ませた生々しい米国政治の実態―『アメリカの鏡・日本 完全版』著:ヘレン・ミアーズ 訳:伊藤延司

再読してみたヘレン・ミアーズの著作であるが、またしても読後に、言いようのないどんよりとした重たい気持ちになった。 ミアーズの主張は、ごくごく単純化して言えば、第二次世界大戦で暴走した日本は西欧列強の姿そのままであるという事だと思う。それは題…

戦中日本軍から垣間見えるダメな日本―『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』著:戸部良一、鎌田伸一、村井友秀、寺本義也、杉之尾孝生、野中郁次郎

作品について 防衛大学の戦史・歴史研究家を中心に、組織論の野中郁次郎氏(元一橋大学教授)を加え、合同研究として出版されたもの。第二次世界大戦中の代表的な戦闘を通じて当時の陸海軍の組織特性を分析している。なお、裏表紙を見るとわかる通りですが、…

人生の見本市。良くも悪くもこれぞ人間―『一冊でまるごとわかる ローマ帝国』著:本村凌二

感想 突然ですが、人はなぜ歴史学ぶのでしょうか。 私は、歴史の流れに人間の典型を見ることができるから、だと考えます。 現代に生きる我々ですが、対人関係に悩んだり、いがみ合ったり、恋したり、諸々のことに思い悩むのは今も昔も変わりません。先が見え…

信じるかどうかは別として、調べる足掛かりとして―『日本が売られる』著:堤未果

感想 これまで読んだ堤氏の著作は米国事情・米国発のグローバル企業の話が中心の感がありました。今回はフォーカスが日本であり、一層問題意識をもって読むことができました。 今回の著作のサマリは、日本政府の訳のわからん愚行によって日本の生活インフラ…

状況証拠を丹念に積み上げた新自由主義批判―『政府は必ず嘘をつく 増補版』著:堤未果

筆者について ジャーナリスト。米国留学後、アメリカ野村證券勤務時に9.11を目の当たりにし、ジャーナリストへ転向。『ルポ 貧困大国アメリカ』は77万部を超えるベストセラーに。以降多くの著作を発表。ちなみにHIV訴訟で有名になった参議院議員川田龍平氏は…

歪められた日本の言論、その起源は米国の検閲か!?―『閉ざされた言語空間』著:江藤淳

筆者について 筆者の江藤淳氏は東工大や慶応大の教授を歴任。文芸評論家としても著名。1998年に奥様を亡くされた後、追うかのように翌1999年に自死。 感想 ”あなたは騙されている、洗脳されている!!” そんなことを言われたら、大抵の人は白けてしまうのでは…

雑誌連載の総まとめ!?次の飲み会でしゃべってみたいウンチク―『帳簿の世界史』著:ジェイコブ・ソール 訳:村井章子

感想 表紙の西洋画が印象的。何か面白い話でも聞けるかと期待して、ジャケ買い。 結論は、そこそこ面白かった。世界史を会計という切り口で見るものですが、個人的には中途半端という印象です(すみません)。世界史の本という言うには狭く、また会計(帳簿…

往時のスパイ活動の様子が生々しい。考えるヒントも多い―『GHQ 知られざる諜報戦 新版ウィロビー回顧録』著:C.A.ウィロビー 監修:延禎

概要 第二次世界大戦終了後、マッカーサー率いるGHQの下で、G2と呼ばれる諜報活動を担うグループを統括したウィロビー氏による回顧録。史実と異なる回想については監修者の延禎氏が丁寧にコメントを入れている。なお延禎氏は本文中にもある通りGHQの別チーム…

砂糖を切り口に西洋近現代史の暗部を晒す―『砂糖の世界史』著:川北稔

概要 砂糖という「世界商品」の歴史を紐解くことにより、近現代史を大陸横断的に俯瞰し、砂糖の文化的インパクト(特に民衆へのそれ)を分析する。ジュニア文庫からの出版も、非常に内容が濃くかつ簡潔、大人が読んでも遜色のない内容です。なお筆者は大阪大…

1000年前のナンパ日記!?でも音読がおすすめ―『伊勢物語』編:坂口由美子

中三の息子に伊勢物語くらい読んどけよと、一緒に勉強する為にと買ってみたのですが、先ずは親が読んでなきゃ強いこと言えねえな、と音読もしつつ読んでみました。 メインは色男 在原業平のナンパ物語 100篇以上の小話からなる伊勢物語ですが、メインのお話…

米国が操る日本、乗っかる政治家・裁判所・マスコミ―『冤罪 田中角栄とロッキード事件の真相』著:石井一

本の概要 ロッキード事件で日本の政治の表舞台から去ることを余儀なくされた、元内閣総理大臣 田中角栄。希代の天才政治家であった田中は本当に悪かったのか?実際の罪状はどのようであったのか?否、田中は米国に、そして仲間のやっかみによって葬られたの…

肉食が避けられなかったのは欧州の貧しさが原因!?―『肉食の思想』著:鯖田豊之

本の概要 豚やウサギを丸ごと食べるヨーロッパ人が、クジラを食べる日本人をして動物虐待という。このような自家撞着に見える生命観の在り方・考え方の原因を、ヨーロッパの歴史とそこで育まれた文化から読み解く。著者は京都府立大名誉教授で西洋史が専門で…

新自由主義経済に食い荒らされたアメリカの現実―『ルポ 貧困大国アメリカ』著:堤未果

本の概要 米国の貧富の差にフォーカスを当てたルポルタージュ作品。学校給食と肥満、学校や病院の民営化と無保険者の増加、貧困層を狙う軍のリクルーティング等、貧困が選択肢を大幅に狭めている米国の様子が描かれています。 生の声を伝える この作品が力強…

世界史で教える栄枯盛衰の法則。米国もそうなるのか!?―『「覇権」で読み解けば世界史がわかる』著:神野正史

「覇権」で読み解けば世界史がわかる 作者:神野正史 発売日: 2016/09/02 メディア: 単行本(ソフトカバー) 本の概要 覇権の隆盛と衰退のパターンを世界史を通じて読み解く本。ローマ帝国、中華帝国、イスラーム帝国、大英帝国、アメリカ合衆国の各史をそれ…

衝撃的な、欺瞞に満ちた米国の歴史―『オリバー・ストーンの「アメリカ史」講義』著:オリバー・ストーン&ピーター・カズニック

〔ダイジェスト版〕オリバー・ストーンの「アメリカ史」講義 (早川書房) 作者:オリバー ストーン,ピーター カズニック 発売日: 2016/07/31 メディア: Kindle版 本の概要 ドロッドロの米国史を第25代大統領マッキンリー(1897-1901)~第44代大統領オバマ(20…

ロシアの通史をまとめて学べます『ロシア・ロマノフ王朝の大地』著:土肥恒之

興亡の世界史 ロシア・ロマノフ王朝の大地 (講談社学術文庫) 作者:土肥 恒之 発売日: 2016/09/10 メディア: 文庫 ロシア。イメージが沸かない。 世界史を勉強しなかった40歳代のおっさんだと、ロシアのイメージというと、社会主義、ゴルバチョフ、チェルノブ…

戦争への過程を生々しく感じる本-『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』著:加藤陽子

それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫) 作者:加藤 陽子 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/06/26 メディア: 文庫 與那覇潤氏の著作で言及されており、興味を持ち購入。 lifewithbooks.hateblo.jp さて、本書は、東京大学で日本近現代史を研究す…

圧倒的な知的ドライブ感-『中国化する日本』著:與那覇潤」

中国化する日本 増補版 日中「文明の衝突」一千年史 (文春文庫) 作者:與那覇 潤 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2014/04/10 メディア: 文庫 通読一回ではまだよくわからないところも多いが、まず一番にお伝えしたいのは、その視点の新しさ。 内容は歴史…

縁遠い中東がちょっと身近になるかも-『オスマン帝国500年の平和』著:林佳代子  

興亡の世界史 オスマン帝国500年の平和 (講談社学術文庫) 作者:林 佳世子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/05/11 メディア: 文庫 トルコ、と聞くと皆はどういうイメージがわくのだろうか。 ある人はトルコアイス、ある人はケパブといった肉料理かもし…

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