海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

2023-01-01から1年間の記事一覧

独白の裏に潜む、因縁と業 |『贖罪』湊かなえ

いやあ、日本は暑いですね。 皆様お変わりございませんでしょうか。 日本の夏は、すでに私の居所の東南アジアより遥かに暑いと思います(因みに私は居所では冷房使用ゼロです)。 確かに、冷房が無いと熱中症で倒れる可能性がありますし、本当に『死活問題』…

現代日本にもつながる、重厚な戦前戦中史 |『日米開戦の正体』孫崎亨

今年の頭に軽い脳梗塞(TIA)を発症したこともあり、今回の一時帰国を利用して先日脳ドックなるものを受けてきました。 シブチンに付き、2万円ちょっとの格安コース。頭頚部のMRI/MRAを取り、あとはAからFまでの判定をしてくれるものです。 で、先ほど結果が郵…

素直さと伸びやかな関西弁で描かれる恋愛 |『あおい』西加奈子

息子の甲子園予選を見てきました。 堂々たるコールド負けでした。この三年、親としてほとんど何もしてあげられませんでしたが、楽しそうに引退できたことが救いであります。 果たしてここからきちんと受験に切り替えできるのか。「そうなんですよ、そこなん…

上級者向けコンディショニング本 |『食べる時間でこんなに変わる時間栄養学入門』柴田重信

のっけから閑話休題。 外付けHDDが異常を来して、パソコン屋に持っていきました。状況を確認するだけで1万円程度、復旧には場合によって20万円とか高額になるかも、と。 そんなことは嫁から許されそうにないので、コード接続不良だけを確認するべく、コード…

「終末」でも生きるという倫理 |『終末のフール』伊坂幸太郎

これを書こうとした正に今、普段使っていた外付けHDDが壊れました。正常だとランプが青なのですが赤くなっています。ため息。 今日は朝からケータイのはてなアプリも不調で開かないし、なんだかIT運が低めかもです。 『明日死ぬとしたら、あなたならどうしま…

いい意味で教科書の落書き。旧約と美術を学びたい方に |『イラストで読む旧約聖書の物語と絵画』杉全美帆子

・・・すみません。引き続き聖書の入門書です。そろそろ入門書は終わりにしたいと考えているものの、積読している本は消化したい。 で、残っている中で、この本は面白かった。うん。 私が聖書を勉強したい理由の一つに美術館に行ったときにより絵画を味わい…

自分を理解する一助に。個人的に90%以上の納得感 |『さあ、才能に目覚めよう[新版]ストレングス・ファインダー2.0』トム・ラス 訳:古谷博子

子どもたちには「自分のやりたいことをちゃんと見つけろ」とか言いつつ、未だに自分に何が向いているのかかよく分からない(もう遅いよ)50手前のおっさんです。 人生の夕暮れすぎ(夕飯前くらい?)ではあろうかと思いますが、世情を鑑みるとまだまだ仕事し…

過去作予習要。家族と遺伝子とどんでん返しの文学作品 |『重力ピエロ』伊坂幸太郎

こんにちは。 今月半ば、高校三年生の息子の甲子園予選を見に、日本に一時帰国することにしました。親としては最初で最後の甲子園予選の観戦です。今回は二週間ほどですが。 そしてちょうどそのころ、7月の半ばですが、大学の出願について幾らか子どもをサ…

学級崩壊、消費者としての生徒。社会の状況等を的確に指摘した良書 |『下流志向』内田樹

皆様こんにちは。 ほんの数日前に読了した本作。しかし、今内容を振り返ろうとして、端的に内容を言い表そうとすると、なかなか難しいことに気づきました。手がとまります。 振り返ってどんな本を読んでいたかを記録するために立ち上げた当ブログですが、内…

西加奈子の描く悲恋 |『白いしるし』西加奈子

先日、とある海外のビーチリゾートに行ってきました。 ぱっと見では美しい浜辺ですが、波に洗われながら歩くと、気になるのは散乱したゴミ。 海辺ではペットボトルなどのプラスチック類はかねてから見かけていました。ただ今回は、不織布のマスクが散見され…

本当によくわかった!気がする! |『図解とあらすじでよくわかる「聖書」入門』保坂俊司

聖書関連の読書が続いています。 入門書は相応に読んだのですが、いまだに怖くて本チャンの聖書そのものには手が伸びていません。旧約の決定版?ともいうべき70人訳聖書も購入したのですが、その分厚さにおののき(8cmくらいかな。講談社学術文庫!)、「…

人気アナリストによるグローバル規制の解説書 |『バーゼルIIIは日本の金融機関をどう変えるか』藤田勉、野崎浩成

最近仕事の本をあまり読んでいませんでした。 ということで業務理解・復習を兼ねて再読しました。すこし古めですが。 ちなみにローマ数字って皆さんどのようにタイプされますか?日本語の全角だと文字化けしそうなので私はアルファベットでタイプします。I(…

圧倒的面白さの群像劇。おすすめ |『ラッシュライフ』伊坂幸太郎

ひとこと ここ数か月、伊坂幸太郎作品再読フェアであります。 こちらの作品も、面白くてあっという間に読了。 人間関係が次第に明らかになる群像劇 別個に展開する物語が、結末に進むにつれて絡み合ってゆく群像劇。その関係が明らかにされるたびに「あ、だ…

未来志向の提言も聞きたい |『韓国人による嘘韓論』シンシアリー

もう初夏ですね、日本では。 実は息子が野球をやっています。今日は甲子園の東京予選のくじを引きに行っているそう。 思えば彼は野球運がなかった。常に一緒にやる仲間が少なかった。メンバー不足は、彼のチームを常に負ける方向へ追いやった。 小学校3年で…

気持ちはエジプト・トルコ・イスラエルへ |『キリスト教の“はじまり” 古代教会史入門』吉田隆

今年の勉強テーマであるキリスト教ですが、何とか2冊目が読了。 そもそもキリスト教を勉強したい理由ですが、一つはウンチク垂れたいという(アホ)。というか、文学・歴史、色々なところに伏線というか基礎として伏流してるので、西洋の文学・哲学などのテ…

静かに展開する「何か起きそう」感がイヤミスならでは |『豆の上で眠る』湊かなえ

こんにちは。 週末は義母がお泊りで居所に来ていました。遊びにくるというか、世話する人がいなくなるとスポットでうちが預かるという感じ。 80前で体は弱ってきていますが、別に介護というほどでもありません。 私は言葉が通じないからまあ楽なんでいいんで…

英語力も米国文化も理解が中途半端だと消化不良になるよ |『DILBERT AND THE WAY OF THE WEASEL』SCOTT ADAMS

皆様こんにちは。 今週は仕事が忙しかった・・・。というか、少し仕事の仕方を変えてみました。 同じ業務を8年もやると、「型」が定まります。で、普段その定型枠に沿って仕事をするのですが、たまに「はて、これは本当にいいのかな」「いったいこれはどうな…

こういう女性はめんどい?お尻がむず痒くなる感覚 |『プラナリア』山本文緒

大学で、学科もサークル(軽音楽部)も一緒だった、カサギという奴がいました。 そいつはちょっと変わっていて、いつも全身真っ黒なカラスのような服ばかり着ていました。音楽サークルということでどんな音楽を聴くのかと問うと、そいつの場合は、ジミヘンと…

大枠のキリスト教史を押さえつつ、興味深い逸話をちりばめた佳作 | 『キリスト教入門』山我哲雄

今年は、キリスト教関連の書籍をキチンと読み込もうと思っておりまして、一年の目標としておりました。気づくと既に6月。そしてこれがキリスト教関連としては今年一冊目となります。 しかし、いつも思うのですが、岩波ジュニア新書の「ジュニア」ってのはど…

充実の内容。とくに法律関係がまとまっていて良い |『世界一やさしいフリーランスの教科書一年生』高田ゲンキ

コロナ前後に会社を辞めてしまった家内。 今や、子どもたちも日本へ進学してしまい、どうも暇を持て余している様子。んが、もうおばさんだし、外で働きたくない(!)とおっしゃる。有閑マダムか!? ならばと、何か商売でもしないのか、と焚きつけています…

斬新な設定で読ませる、カカシ殺人事件 |『オードュボンの祈り』伊坂幸太郎

突然ですが、最近書こうという気が減退しています。 ブログとか長くやるとよくあることかと思いますが。 自分のポストを見返すたびに、何かワンパターンだとか、誤字脱字が多いとか、語彙が少ないとか、要は下手過ぎて萎えると笑 とは言え、技巧を凝らしてき…

米国下層労働者階級の終わらない悪夢 | 『ヒルビリー・エレジー』J・D・ヴァンス 訳:関根光宏、山田文

米国というのは実に不思議な国であると思います。 GDP世界一を誇りながら、その実、貧富の差も相当激しい。2021年のOECDのジニ計数ランクでは世界第5位(なお日本は世界11位)。 起業やイノベーションが次々と発生する一方、貧困・暴力・麻薬・離婚などの問…

異時点のストーリ構成が秀逸、ああなるほどと唸ってしまう |『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂幸太郎

突然ですが、旅行でパースという所に来ています。 金がない金がないとぎゃーぎゃーいう割に、趣味は金がかかる旅行だったりします。で、日本への一時帰国や現在の居所の国内旅行を除くと、実にこれ4年ぶりの国外への旅行です。 4年ですよ。いやはや、コロナ…

私も試したいダウンシフト。実現可能そう |『減速して自由に生きる ダウンシフターズ』髙坂勝

最近よく、人材紹介会社から連絡があるんです(Linked-in経由)。 「海外での業務経験がある方を対象に、日本にご帰国された際にそのご経験をフルに生かして頂いて。。。」 と歯の浮くような言葉でお褒め頂けるという。 永住ビザ申請の結果が出るまでは今の…

ある種、斬新な恋の終わり方? ミステリテイストの恋愛話 |『木漏れ日に泳ぐ魚』恩田陸

同棲というと、私も彼女(今の嫁)と同棲していましたっけ。大学生でした。 でも一緒に暮らすと、まあ嫌なところが目立つもの。同棲解消しましたよ。 彼女は就職、私はわざわざ地方の大学院を受験という形で。彼女は東京の会社へ、私は関西へ進学しました。 …

米国人女性による骨太な中世フランス料理歴史書 | 『味覚の歴史 フランスの食文化-中世から革命まで』バーバラ・ウィートン 訳:辻 美樹

年初に一時帰国した際に実家の本棚から持ち帰った積読本(20年弱!)です。 私事ですが、家内は結婚後退職し、どういうわけか調理師学校に通いだしました。おかげで私は専業主婦兼調理師というとっても贅沢な奥様と時を過ごせているのですが、そうした結婚前…

悲しいファミリ―ヒストリー、でも未来は暗いだけではない |『さくら』西加奈子

こんにちは。 最近、私の居所も暑い日が続いております。日本も暑いそうですね。 東南アジアというとスコールというイメージ、ありませんか? こちらでも毎日、ザッパーっって感じのスコールが降ります。小一時間くらい。 でもここ数日はスコールの来ない日…

まずはサラリーマンから脱すること? |『年収一億円になる人は、「これ」しからやらない』上岡正明

ビジネス書。 色々文句を言うなら読まなきゃいいのに、っていうのがハウツー系ですよね。でも、どうです?一億ですよ、一億! 宝くじではなくて毎年一億円。しかもアラフィフになってまだ読んでんの?みたいな話ですが、やっぱお金、ほしいです(少なくとも…

復讐の横取りは、予期せぬ結末へ。満足度の高い、流石の伊坂作品|『グラスホッパー』伊坂幸太郎

読書でストレス解消をしてみた、という話です。 まあ家でも、仕事場でも、ストレス、あるじゃないですか。人に言えない悩みとかもありますよね。言ってもわかってもらえないことはもっとあるし(うんうん)。 これまで色々解消法に変遷がありましたが、読書…

米国の白人貧困層はどこへ流れつくのか | 『ノマド』ジェシカ・ブルーダー 訳:鈴木素子

今年は、セカンドライフをテーマに、老後の生活設計の参考になるような本を選んで読んでいます。 その一環で見つけた本作、名前はモダンで自由な感じでしたが、読後はしこたま暗くなるものでした。反面教師とまでは言いませんが、こうなったら自分はキツイな…

海外オヤジの読書ノート - にほんブログ村
PVアクセスランキング にほんブログ村