海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年もセカンドライフ等について思索したく。

自分が社会不適合者なだけかもしれない!? | 『部下が勝手に活躍する魔法の質問』伊藤治雄

皆さん、こんにちは。

 

ところで皆さん、ブログを書かれるときはパソコン派でしょうか、それともケータイ派でしょうか。

私はいらち気味でして、とにかくサクサクやりたいというのでパソコン派であります。ばちばちキーボードをたたいて、記事を作る。

 

ところが過日、ケータイも意外といいと気づきました。

一時帰国で飛行機に乗っていた時、持ち合わせていた本は既に読んでしまい、パソコンもない。ケータイにもオフラインでアクセスできる気になるコンテンツもない。で本の感想でも書いとくかとGメールで自分宛のメールを作成し下書きとして感想を書いていたのです。

 

で、まず気づいたのがフリック入力。一文字ワンタッチです。他方、ローマ字入力だとカナ一文字につきキー二回の入力。これはスピードはケータイに軍配が上がります。

そしてサジェスト入力。これにより大分文章がサクサク作れることに気付きました。PC(というかWORD)ですとサジェストしてくれませんし、打鍵ミスも多い。やはりスピードはケータイの方が早い。

 

そういうの総合的に考えるとケータイの方が時短かもしれない、と感じた週末であります。

 

ちなみに今調べてみたらWORDにもサジェスト機能みたいなの、あるそうですね。確かに会社のOutlookとかもスペルミスとか勝手に直してくれたりしますね。家のパソコンは日本国外で買ったため英語仕様のWORDのままでイマイチ使い勝手悪いまま使っており、改善できるのか不明なんです。やっぱり、ケータイでの記事作成に鞍替えしようかなあ…。

 

ということで本題に参ります。

 

選書の背景

部下が育ちません。

中途入社して三年目、期待とは未だ程遠いと言わざるを得ません。自分を棚に上げて言うのもなんですが。

 

で本作。過去にも読んだのですが、再読して何とか自分の指導力の足しにできないかを探ったものです。

 

自分に気付いてしまった

自分の気持ちの状態というのも多分にあるのですが、初めて読んだ時より響きませんでした。

 

なんというか自分が今、諦めモードになっています。育てる気になれない、諦め、スケーラビリティの放棄をしたい、自分でマクロを共通部品化して効率化を進める方が良い気がします。

 

不備を発見し語気が強くなる自分自身も嫌だし、何度言っても分からず、分かったかどうか問うているのに分かりましたと(自身なさげに I see, とかいう)答えることにも幻滅している。本当に分かっている?と覗き込むように問うと、分かりませんとか返事する。いや、それがだめなの(分かったふりをさせてしまう私がだめなのでしょうが)。

 

こういうとき、デキる上司ならば表現を変える、相手の立場にたつ、とか諸々手を打つのでしょう。

 

ただ、もう私出世もないだろうし、会社にも期待されていないし、それこそいつまで居るか分からないしとか考えると、やる気がでません。ひどい上司で申し訳ないのですが。

 

でも、人を育てるというのが重要であることは初めて部下をもったことで理解しました。次世代・後進を育成するというのは大事です。他方、こうした定量化しづらいタスクは評価もされづらく、だったら「流す」「しているふり」でもいいかなと考える邪な自分も居ます。

 

業務のレベル分け・図示

他方、再読して、思い出して、改めてやってみようということもありました。

例えば、従事している業務を5段階で図示しレベル分けすることなど。

 

これは言わばゴールの共有ですね。

レベル1から5まで明文化して、大体あなたはレベル3です、で私たちが目指すのはレベル5です。頑張ってください、みたいな会話ができるといいなと。

 

いいこと書いてくださいます。

ただ、魔法の質問・声かけはいくらか試してみたのですが、いまのところダメ。

 

おわりに

ということで部下育成術系の本の再読でした。

 

今回は余り響きませんでした。部下については何とかしたいとは思っているけど、もうダメでもいいやとも薄っすら思っています(我ながら酷い話です)。とすれば読むべきは自分のやる気を起こす本であったのかもしれません。

 

世の部下を持つ人たちがどうやってやる気を出しているのか知りたくなりました。ホントに皆さん、尊敬致します。お疲れ様でございます。

 

評価 ☆☆☆

2025/10/15

苦境に襲われる子どもたち、最後に希望は残されるのか |『未来』湊かなえ

負の「念」

これまでに湊氏の作品はかなり読んできたと思います。

イヤミスという切り口もありますが、これまでに感じていたのは「揺るがない自己」という切り口。登場人物が「自分が悪かったのかな」とか振り返ることがない(少ない)という印象です。

 

そして今回感じたのは、「念」とでもいいましょうか。

とりわけ強烈な負の気持ちの強さ、みたいなものを感じました。

 

あらすじ

10歳の少女・章子の元に、「20年後のあなた」からの手紙が突然届く。手紙の内容を信じて生きる章子の周囲には、いじめ、家庭内暴力、親の過去など重い問題が次々と浮かび上がる。同時に同級生・亜里沙にも似た手紙が届き、二人はやがて大人たちの闇を共有し、救いを求めて声をあげようとする。

 

あーもう、負の連鎖

こういっては何ですが、本作、ある意味壮大な負の連鎖のようなお話です。

主人公的立ち位置の小学生章子。大好きな父親を亡くし、傍にいるのは心が壊れた母親のみ。そんなネグレクトな状況。

このいと美しい母親は心が風邪気味で、どちらかというと娘の章子が気を回す有様。また、美しい母ゆえ、周囲の虫も寄ってくる。これもまた章子の心配事。

でも実はこの母親は小学生の頃から虐待を受けていた当時者であり、章子の亡き父親はそのことを高校時に知ったのだった。

 

章子の父親がこの世を去るときに、一計を案じ助けを求めた人も、これまた世の中に頼れず、傷つくことを余儀なくされた人だった。

 

そうした負のスパイラル、連鎖、抜けられぬ軛の重さをひしひしと感じます。

その意味で、主人公は章子だけではなく、章子の父・母、章子の友人の亜里沙、そのほか幾つかの人物も、それぞれの背負ったものが重たくかつ精緻に描かれ、彼らはどれも主役級と言えましょう。

 

おわりに

ということで湊氏の作品でした。

あとがきで湊氏は、こどもの貧困問題などを背景に筆をすすめたとのことを書いていらっしゃいました。事実、本作はイヤミスではありながら明るい未来を予感させるような締め方であり、他の湊作品のなかでもそれは際立っている気がします(主人公たちがまだ若いというのもありましょうが)。

 

そういう意味では、全体通して重いトーンの物語ながら、最後に希望が残されたパンドラの箱のような作品だったと思います。

 

評価 ☆☆☆

2025/10/12

 

突然押しかける年下の自称「兄」、その正体は |『春、戻る』瀬尾まいこ

皆さん、こんにちは。

9月に多忙だった反動なのか、10月は自己研鑽への志向が弱まっています。

こういう時は何が起きるかというと、四六時中ケータイでどうでもよい情報を斜め読みするという…。50代にもなり本当に恥ずかしい。

 

そういう時は本でも読もう、と常日頃考えています。ということで一冊手に取りました。

 

瀬尾さんの作品、かれこれ半年ぶりくらいに読みます。

家族がテーマだったり、人と人との繋がりが描かれていたりすることが多く、いつもうるっとしつつ読むことがおおい作家さんであります。

 

ということで本題に参ります。

 

あらすじ

結婚を控えた36歳のさくらの前に、突然「兄」と名乗る年下の青年が現れる。記憶も名前も一致せず不思議な彼は、さくらの過去を深く知っている様子。やがて封じていた記憶が甦り、彼との関係と自分自身の心の傷に向き合っていく物語。

 

おおらかな人たち or 他人事な人たち

不思議なお話だった気がします。

 

このどう見ても年下の「兄」なる人。主人公のさくらは彼をあやしがりつつも受け入れる。それも驚きですが、さくらの婚約者やその両親、果てはさくらの妹までもが「兄」を自然と受け入れる。

 

私も、悪意も衒いもなく、そうやって他人をおおらかに受け入れられたらいいなあという漠たる願望はありますが、そうそう簡単に変われる年でもなく、自分だったらすぐ警察に通報だろうな、とか夢も希望もないことを考えてしまいました。

 

もちろん主人公さくらも「兄」なる人の調子の良さの裏に心の傷・やわらかで繊細な部分を察知したからこそ、つかず離れずの態度を取れたのだとは思います。

でそんな勘繰りを敷衍すれば、さくらの婚約者「団子屋」、そしてさくらの妹すみれも、きっと「他人事」として面白おかしく事態を眺めていただけかもしれません。

なんて書いたらとても冷たい人たちのお話になってしまいますが。

 

なお、結末ではさくらは自分で蓋をしていた心の傷を再度認識するという、一種のカタルシスを経験し、その後結婚に臨むというストーリーであります。

 

おわりに

ということで久しぶりの瀬尾作品でした。

 

やや捉えどころのないお話に感じました。それにしても、やはり小学校の先生、それも他県からやってくると大変なのですかね。

人を率いるお仕事をされる方にはつくづく敬服いたします。

 

評価 ☆☆☆

2025/10/10

居たたまれない程の自意識過剰な青年の失態 |『舞台』西加奈子

皆さん、こんにちは。

 

そういえば過日、パパ友と飲んできました。

私は半永住ですが、彼は一応駐在(当地歴15年!)、随分長くなりました。

そんな彼もソロソロ来年あたりに帰る見込みという話も。

とうとうパパ友が当地からいなくなるかあ、と寂しく思いもしましたが、一人異国で生活するのは如何ばかりか・帰る方が本人にとっても家族にとっても良いのだろうな、と思いました。

 

なお私とていずれは日本に帰りたいとも考えています。その時心配するのは自分のことより家内のこと。日本には20年以上いましたが、日本に戻って既に老年でしかも友人なし(私は友人なしでいいですが、家内が、ですね)。その時、大丈夫だろうか。

 

これまで私の自分勝手で家内や家族を巻き込んでここまで来てしまったのですが、老後への着地について、もっと話し合わねばならないなあと感じる今日この頃です。

 

さて、本題に入ります。

はじめに

2014年発表の西加奈子氏作品。

あらすじについては、巻末数ページにある広告(他作品紹介ページ?)にあるのが簡潔でよかったので引用したいと思います。

 

旅の初日に盗難で無一文に! 自意識過剰な青年の馬鹿馬鹿しくも切ない魂のドラマ。

 

一部分かるけど、それはやりすぎじゃん?

読後感は複雑でした。

 

周囲へあわせるとか、空気を読むとか、発言しない相手をおもんぱかるというのは一種の日本の文化でしょうが、それが行き過ぎて苦しむ人がいるのも事実でしょう。

 

主人公の葉太は、気にしい、というか、自意識過剰の最大級みたいな感じの人。

初の海外旅行にニューヨークを選び、調子にのり、盗難にあう。英語も喋れず、恥もかきたくない、だから白昼堂々盗難にあったけど、そ知らぬふりをして、仕方ないよ、と困り笑いを周囲に振りまく。そしてきっと調子に乗り過ぎた罰だと自らを戒める。

その後も、すぐに大使館に行ったら調子に乗ったアホと思われるのがイヤで日一日とホテルの自室で空腹に耐えつつ、事態を悪化させるみたいな男の子。

ま、最後は助かるんだけど。

 

読中は、一部はわかるけど、一部はやりすぎだろう、総論賛成・各論反対、気持ち的に乗るに乗れない、みたいな感覚を覚えました。

 

わたしが世間からずれている?

巻末に早川真理恵さんという方と筆者の西さんの対談が掲載されていました。

 

そこで、早川さんは「葉太の気持ちがめっちゃわかる」みたいなことを書いていらっしゃったんですね。メチャクチャ感情移入した、みたいな。

 

でも私は、逆に「え?あの意識過剰感はむしろ世間の普通なの?」と逆に心配になりました。自分がズレていたのか、と。

 

まあ私は確かにこらえ性がなくって、若き日は家出もしてしまいましたし、日本での就業時もやはりどん詰まりに詰まって、こうして海外に出て、何とかいま生活ができるようになったポンコツであります。人や周囲に合わせるのは得意ではないです。

 

葉太のように日本だけにしか住めないという縛りがあったら発狂していたかもしれません。

 

主人公の葉太のキャラに、気にしいにも程度があるし、なんというか、相談する友人とかいなかったのとか、ちょっと思ってしまいました。もちろん、気にしいに「気にすんなよ」とか言ってもしょうもないことも分かるのですが。

 

自分の若かりし頃と令和とでは、世情も異なるというのも分かります。が、辛い時は辛いと声を出せばよいし、本当にキツイ時は我慢しても得られることはなかろう、なんなら逃げちゃってもOK、というのが50代のオッサンの感想です。

 

キツイ時にキツイまんまの若い子が増えているのでしょうか。

 

おわりに

ということで半年ぶりくらいの西作品でした。

居たたまれないほどの気にしい青年のお話でしたが、自分とはちょっと違い過ぎて、近くに居たら避けちゃうかもとかって思いました。思いもよらない反応をされそうで怖いかも。

 

世の管理職はこういう若者もリードしなければならない、と思うと、私は窓際で相応だ、そんな人間力これっぽっちもないわ、と納得してしまいました。

 

評価 ☆☆☆

2025/10/09

初の女性首相とその夫の奮闘、今読むとタイムリーな小説 |『総理の夫』原田マハ

皆さん、こんにちは。

先日、自民党の総裁選がありましたね。初の女性総裁ということで高市早苗氏が選出されたことは記憶に新しいところです。

とはいえ、現在自民党は連立与党ということで、初の女性首相として高市氏が選出されるかどうかは依然未知数と言えましょう。

 

そんな折、マジで偶然にも手に取ったのが本書であります。

 

ひとこと

これまで文句を言いつつもそれなりに原田氏の作品を読ませて頂いて参りました(6作品。今回で7作品目)。

とりわけ非美術系は文句が多かったのですが(ごめんなさい)、その非美術系の中では本作が一番良かったかなあ、と思いました。

 

ユーモアの交え方、初の女性首相という設定、政界のだまし合い等の駆け引き、そして家族愛的なファクター、これらがバランスよく配置されていたという印象。

氏の非美術系はややライトで単純な気もしますが、今回はとくにドラマや実写と親和性のある展開であると感じ、そうした点も別メディアで表現されると打ち消されるのかもなあとも思いました。

 

あらすじ

鳥類学者の相馬日和は、ある日突然、妻の凛子が日本初の女性総理大臣になったことで、史上初の「総理の夫」となる。静かな生活は一変し、マスコミに追われ、政界の騒動に巻き込まれていく。戸惑いながらも妻を献身的に支える日和の奮闘と、夫婦の愛と絆をユーモラスに描いた物語。

 

最後はほっこりと

ドタバタ系のエンタメ小説。

概要はあらすじで概ね語ってしまったと感じます。付言するとすれば、最終的に夫婦愛・夫婦の絆みたいな主題に収束してゆくと感じました。

 

首相だって人間。首相の夫だって人間。多少のすれ違いはあったけれど最後は信頼し合う二人に戻る、みたいなお話でした。

 

その点、ほっこりした読み口の小説でもありましたね。

 

おわりに

ということで、原田氏のエンタメ小説でした。

映像化されたら面白そうだなあ、と感じましたが、今調べたら案の定映画化されていました。

 

民王』もそうでしたが、映像化されたものも併せて鑑賞することで、より作品を味わえるかもしれませんね。

 

 

評価 ☆☆☆

2025/10/08

一族の異能の力で凶事を防ぐ |『失われた地図』恩田陸

皆さん、こんにちは。

 

そう言えば高校生である下の子の最後の学費の振込用紙が届きました。

御存じかどうかアレですが、高校無償化とか申しますが、あれ、両親とも日本に在住しないと受給できません。親の収入に紐づいて補助を出すかどうか判定しているため、こうなっているんでしょうね。

で、うちは両親(私と家内)がこうして海外で暮らしているため満額は頂けず。まあ多少補助して頂けるだけでもラッキーと思わねばなりませんが。

ただ、子どもをサポートするという観点だと、もう少しうまくできないのかなあと少し感じました。だってもう、学費が高い高い。そして両親揃って日本に住んでいないと公立高校にも行けないとかって東京都は仰るし…。

 

今後うちのような事例が増えてくれば、何か変わるのかもしれませんね。

 

さあ、今後数年間が学費のピーク。文句を言う暇があるくらいなら内職でもした方がよいですね。

 

ということで本題に参ります。

 

ひとこと

恩田陸氏による2017年の作品。

異世界から「裂け目」を通じてこの世界に侵入し凶事を起こす輩たち。それらを察知し、戦う「力」を持った一族が居た。その末裔の鮎観(あゆみ)、遼平、浩平ら、個性的な人物が難局に立ち向かう。

 

お得意の異能力系

勝手にカテゴライズさせていただくと、本作、恩田氏の頻出ジャンルの一つ「異能力系」に分類されるでしょう。

 

主人公らは、一ページ目から既に戦いのさなかに放り込まれており、生きるため・家族を守るために戦わねばならない。その異能を発揮しつつ、周囲には隠れつつ、正義を守る、こんな感じです。

 

戦い、情愛、そしてちょっとギャグが入っており、テレビアニメのような印象の作品でした。近年見たものでいう東京喰種(東京グール)みたいな感じでしょうか。印象、パッと見な感じだけですけど。

 

章のタイトルもややアニメ化を意識しているようにも見えます。

第一話 錦糸町コマンド

第二話 川崎コンフィデンシャル

第三話 上野ブラッディ

第四話 大阪アンタッチャブル

第五話 呉スクランブル

幕間  横須賀バビロン

第六話 六本木クライシス

 

インパクト少なめ?

で、本作ですが、他の異能力系の作品と比べると、ちょっとインパクト少ないかな、と感じました。

凶事が起こることを察知する能力と、その元凶である「裂け目」を閉じる能力の二つ。つまり基本的に悪に対して防戦一方。

 

氏のこれまで類似の異能力系の作品で言いますと『エンド・ゲーム 常野物語』『常野物語 蒲公英草紙』『光の帝国 常野物語』が印象深いのですが、あちらですと遠視だったり空を飛んだり、能力のバラエティが多くてアクションも多彩な絵柄になりそうだな、と感じました。

 

ただ、本作は一族結婚した鮎観(あゆみ)と遼平が、子を設けたのちに離婚、さらに鮎観は再婚(非能力者と)したことになっています。このあたりの人間ドラマは続編を予感させもしますね。

 

おわりに

ということで比較的新し目の恩田作品でした。

しかしこの方、本当に多産。本作は2017年発表ですが、その年は他にも3作、計4作を発表なさっています。単純平均で四半期ごとに一作。いやー、きちんとご飯食べているんですかね?

ご自愛頂きたく思います。

 

評価 ☆☆☆

2025/10/05

一括りに「ユダヤ人」とか言えない | 『ユダヤ人とユダヤ教』市川裕

皆さん、こんにちは。

 

ここ数年、聖書を読んでいます。

聖書を読む前は、その解説書などを読んでいました。なんだか本物を読まずに解説書ばかり読むのもアレだよなあと思い、聖書を手に取ったものです。

で、旧約は読破し、現在は新約の途中です。なので、旧約関連の解説書を再読し、内容をより良く理解しようというものです。

 

ということで今回再読したのが本書であります。

 

概要

本書は、ユダヤ教を単なる宗教ではなく、人々の精神と生活を支える「神の教えに従った生き方」と捉え、苦難の歴史の中で育まれたその信仰、学問、社会を概説する入門書です。ユダヤ人のアイデンティティと深遠な精神文化を解説するもの。

 

ユダヤって旧約だけじゃ御座いません

上記、AIにまとめてもらいましたが、ちょっとボンヤリしていますね。

もっと簡略に言えば、ユダヤは文化だ!ユダヤはもっと多様であり、歴史があるのだ、というもの。

 

旧約に基づきながらも、それを解釈するタルムードや、ラビとの会話を通じて、より詳細な日常のルールを構築しているんだよ。また、出身地域により結構世俗的にどう対応しているのか考えがちがうんだよー、という感じ。

 

ユダヤにも派閥が有ります

例えば、国民、民族に関して。

フランス革命後、国民国家という概念を学んだユダヤ人は、それについての反応も様々であったとのこと。

つまり、国民として各国で同化してゆくのか(市民権を得られた!国民として認められた!)、あるいは自らの民族の国家を持つのかという二派。

 

前者はアメリカやフランスに定住し、後者は建国後のイスラエルへと赴く。根っこは一緒であるも、そして時に支援し合うも、必ずしも意見が一致するわけでもないし、同類であるとも限らない。

 

ひっくるめて「ユダヤ」って判断するのは危険

情報が入ってこないわりに、「ユダヤ」という言葉は人口に膾炙しているけれども、きっと自らもっと学ばない限り、その多様さは理解できないのだろうな、と感じました。

 

民族の多様さというと、先日の出来事でこんなことがありました。

今年の頭にケニヤに旅行に行った際に一人のインド人と知り合いになりました。彼は先月東南アジアに旅行しにくるということで私の居所にも来ました。折角だからと、週末に一緒に飲茶をしたのですが、その際の会話。

私(以下「オ」):そういえばこっちに来て、インド料理とか食べた?

インド人(以下「イ」):うん、食べた食べた。

オ:へー。で、どう思う?なんかまがい物みたいな感じしない? ほら、こっちの日本料理だと独自にアレンジした日本料理なだけなのが多いから、インド料理はどうかなって。

イ:いやあ、こっちのインド料理は全くの別物だよ。これはこれで独自の文化

オ:え?そうなの?なんかインチキとか感じない?

イ:いやいや、あれは独自のもの。だって考えてごらんよ。プランテーションだなんだってイギリス人に連れてこられて200年くらいその子孫がそのまんまなんだよ。おんなじ言葉、おんなじ文化といったって、やっぱり変わってくるよ。何か昔の文化を持ち続けるっていうか。インド本国はもっと変化しているかな。こっちの人はタミル語とか文化とかもっと昔の習慣を守っているみたい。

オ:へー、そうか。なるほどね。で、こっちのインド料理と本国のインド料理はどう?

イ:まあ、こっちのインド料理はやや弱いというか、本国の方が味が「強い」ね。

 

という感じの会話。

つまりですよ、インド人ももはや一括りにはできない。インドで生まれ暮らしているインド人、米国に移り住んだ移民二世、或いは東南アジアに散らばるインド人の末裔。これらは外見や文化背景は似ているように見えて、実際は同一視できないということです。

 

同様に、中国人と、同じ先祖を持つ東南アジアや欧米に散らばる華僑。これらも同じではないということ。在日韓国人が本国韓国に留学したら馴染めないというのも韓国人がひとつではなく多様である証拠です。

 

で、ユダヤも、こういう文脈の中の多様性を包含しているんだと、本書を読んで感じたわけです。

 

(因みにこのインド人、その後お前ら日本人だって同じだろ、東京人と大阪人とでは大分違うんだろ?とかまくし立ててきました。)

 

おわりに

ということでユダヤ概説書の再読でした。

これ以上ユダヤ文化に突っ込む気はないのですが、改めてユダヤも色々あるのだなあと感じました。

 

ユダヤ文化はおなかいっぱいだけど、ユダヤの歴史、あとはレヴィナスは今後どこかで読んでみたいなあ。

 

評価 ☆☆☆

2025/10/03

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