海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

2022-01-01から1年間の記事一覧

人間の特質としての共感を描くディストピア小説|『アンドロイドは電気羊の夢を見るのか』フィリップ・K・ディック 訳:朝倉久志

実家の本棚に眠っていた本。たぶん20年ぶりくらいに読んだものです。学生時代、哲学を勉強しており、その時に設定したテーマは「人間とは何か Was ist das Mensh.」 きっとそのテーマの一環で読んだのだと思います。 今般本作を再読し、学問への小熱い(決し…

優しく厳しく自己実現を促す寓話|『アルケスミト 夢を旅した少年』パウロ・ウエーリョ 訳:山川紘矢+山川亜希子

あらすじ(文庫本裏表紙より) 羊飼いの少年サンチャゴは、アンダルシアの平原からエジプトのピラミッドに向けて旅に出た。そこに、彼を待つ宝物が隠されているという夢を信じて。長い時間を共に過ごした羊たちを売り、アフリカの砂漠を超えて少年はピラミッ…

肩の凝らない英国歴史エンターテイメント |『A POINTLESS HISTORY OF THE WORLD』ALEXANDER ARMSTRONG & RICHARD OSMAN

近頃、テレビやニュース、雑誌などを殆ど読んでおりません(世捨て人!?)。それでもやめられないのが皆さんが書かれているブックレビュー笑 その中でこの一年良く目についたのがリチャード・オスマン氏。氏の書いた『木曜殺人クラブ』のレビューで、どの方も…

子供の脳死を扱う異色の東野作品|『人魚の眠る家』東野圭吾

この夏に日本に一時帰国した際、息子の本棚から回収した本です。 本嫌いの息子に多少なりとも本を読ませる習慣をつけさせてくれた(私にとって)神作家の東野圭吾氏。その時息子が読んでいるというので、どうよ、と尋ねると「いやあ、だるい」と。いつもだる…

イスラムが「創った」ヨーロッパ世界 | 『マホメットとシャルルマーニュ ヨーロッパ世界の誕生』アンリ・ピレンヌ、監修:増田四郎、訳:中村宏・佐々木克己

歴史が面白い、と感じる瞬間があります。まあ簡単に言えば「風が吹けば桶屋が儲かる」的な話が聞けたときです。言い換えると、一見普通に見える事象の裏に、思いもよらない事実が隠されていた時。また、どうも腑に落ちない不可解な史実の背後に、状況証拠等…

海外+食べ物=たいてい気に入る作品|『かもめ食堂』群ようこ

本とは関係なく、全くの私事なのですが、私、四半期に一度くらいのペースで、無性に逃げ出したくなります。仕事も家族も放り出して、ふらっと放浪とかに出たくなります(ほら、コロナとか大分収まって旅行とかもできそうだし笑)。面倒くさいおっさんで申し…

英国の伝説・伝統的冒険譚。ファンタジー嫌いも楽しく読める |『KING ARTHUR AND HIS KNIGHTS OF THE ROUND TABLE』ROGER LANCELYN GREEN

世界史を勉強すると英国史で言及されることが多いアーサー王伝説。英国の伝説・伝承文学にして最も有名なものと言いうると思います。サクソン人(Saxon)を撃退し、英国(Briton)を平和に導くアーサー王と彼を支える円卓の騎士の物語です。 で、これが予想をは…

精神論ゼロ!理性的で完璧な若者の「確かに」な勉強本 | 『シンプルな勉強法』河野玄斗

アホ高校生の息子のために、今年はこれまで勉強法の本を5,6冊ほど読んできました。テクニック集や体験談、人生論的なものなど、参考になるものは多かったです。 ただ、サラリーマン的な仕事術の観点でいうと、私はこの本が一番だと感じました(こどものため…

頑張ることって素晴らしい。元気になれるスポ根小説|『DIVE!!』森絵都

本が好きな方だと、積読が先行しているうちに同じ本を二冊買ったりとか、売った本をまた買ったりとかってありませんか? 私はたまにやらかします。 本作「DIVE!!」は上の息子が高校受験に挑んている最中に上下巻そろえて買ったものです。下の娘(現在高校受…

デビュー作から村上色満開|『風の歌を聴け』村上春樹

先月8月に2年半ぶりに実家に帰りました。実家の書籍については度々処分しているのですが、それでも残っている本が数十冊ほどあります。私の記憶ではこの十年くらいは伊坂幸太郎さんとか恩田陸さんとかを結構読んだのでそういうのが残っているのかな、と予想…

無料なのは別著作への導入ゆえ? |『BEST VERSION OF YOURSELF』 JIM KWIK

James Altucherという方のポッドキャストを以前聞いていました。そのゲストで著者が出ており存在を知りました話しぶりはなかなかに面白く、かつアジア系なので印象に残っていました。 そんな著者の名前をAmazonで打ち込んでいたら本作Kindle版でタダ!という…

ミドルおやじの人生見つめなおしに効きそう | 『50歳からの勉強法』 童門冬二

先般、一時帰国中に見舞う予定であった叔父を亡くしました。末期ガンでした。享年78歳。旅行を愛し、50代で脱サラし、居酒屋や喫茶店を経営し、やりたい放題(と私には見えましたが)しつつ、最後は奥様に介護され息を引き取られました。 彼の人生を思い返し…

青春小説かと思いきや東野氏の自伝!?|『あの頃ぼくらはアホでした』東野圭吾

引き続き長男の本コーナーから東野シリーズを発見。相変わらず彼の感想は、「だるい。無理」とのこと。お前さぁー、もっと伝わる表現をしてくれよ、と言おうと思ったものの、自分の高校時代といえば、親に対しては、忘れた・知らない・どっちでもいい・別に…

人生やキャリアを考えるヒント | 『悩みどころと逃げどころ』 ちきりん、梅原大吾

忙しさにかまけて読了したままにしておくと、何を書いていたかあっという間に忘れてしまうんですよね。そういう経験は皆さんありませんか? 本ブログの当初の趣旨はそんな風のように消えてしまう私の読書活動に、アウトプットという作業を加えるためのものだ…

コンパニオン嬢が活躍!肩がこらない推理小説|『ウインクで乾杯』東野圭吾

こらえ性のない長男が唯一読書でとっかかりを見いだした東野圭吾先生。二年半ぶりに会う彼の本棚にたたずむ本作。「どうだった?」と聞くと「うーんいまいち、あんま覚えてない」とのこと。神通力もこれまでか、親として確認してみた次第です笑 裏表紙あらす…

ワークライフバランス先駆者の人生談。壮絶 | 『50歳からの生き方』 佐々木常夫

アラフィフの私。窓際であり昇進がなく、その上子供たちが高大へと進学する一番家計的に厳しい時。そんな折、何かの足しにはならないかと本作を手に取った次第です。ちなみに2年半ぶりに帰った実家で親父が初期の痴呆であることがわかり(私の勤務先を毎日聞…

村上流、自己の受容と過去の受容の物語?|『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』村上春樹

4、5年ぶりに本作を再読。これだけ経つと筋もあらかた忘れており、フレッシュな気分?で改めて楽しく読むことができました。 主人公に自身を重ねる? 本作の主人公である多崎つくる。他の村上作品同様、非常に自制的・自省的、言葉に敏感、そして適度な運動…

自己省察力が光る幸せ追求ノンフィクション | 『THE HAPPINESS PROJECT』 GRETCHEN RUBIN

「幸せ」とは、なかなかにむつかしい。 特に日本人は幸福度ランキングが低いことで有名?です。他国や他人と比較すれば、色々な点で恵まれている。だけど幸せと感じない。。。 そんな「あるある」に正面から取り組んだのが本作。ちなみに筆者の義理の父は米…

興味深いマイクロファイナンス、日本での展開は未知数 |『構想 グラミン日本』菅正広

先日、子供つながりで友人となったオヤジたちとオンライン飲みをしていて話題になったのが55歳役職定年や早期退職。会社を辞めるかどうするか、第二の人生どうするか、等々。私の会社にはそうした制度はありませんが(そもそも役職についていないし。。。)…

勉強もプライベートもどっちも実現させる効率勉強テクニック本 | 『成績が上がる学びの習慣』紀野紗良

子どもたちに勉強をやらせるのもいい加減疲れたのですが、ここで放り出したら相手の思う壺!?というか喜ばれておしまいなだけだろうと考え、しつこく子供に合うようなスタイル・方法を模索しています。。。 中高生の親です。 特に上の高校2年の息子がアホ過…

おすすめ!孤独と向き合いつつ、自分の道を歩むための本 | 『ミライの武器』 吉藤オリィ

先週、子供の学校見学に幾つか行ってきました。最近は高校でも模擬授業をしてくれる所があったりして、近年の学校の変化がよく分かり勉強になります。他方、高校も大学もオープンキャンパスの類はすぐに満席になり、コロナの蔓延と相まってキャパシティを制…

理屈っぽい大人が読むと失敗するYA本?|『お父さんはユーチューバー』田口倫太郎

この度、無事日本に一時帰国を果たしました。2年半ぶりに両親と息子(日本の高校に通っている)と会い感慨に耽るも、あまりの暑さに思考も鈍っています。もともと鋭くもないけど。そしていつの間にかなくてはならないエアコンとの生活。これに今一番驚いてい…

むしろ中国古典学習の副教材として | 『論語と算盤』 渋沢栄一

皆様ご無沙汰しております。2年半ぶりの日本への一時帰国を控え、仕事に子供の勉強にバタバタしておりました。ついでに家内の更年期?の諸々もあり、読書に全く取り組めていない今日この頃であります。 ひとこと感想 端的に言えば、論語と同様、ややまとまり…

論語を現代語で解説付で! | 『現代訳論語』訳:下村胡人

先日アマゾンの日替わりセールで渋沢栄一の『論語と算盤』を購入しました。併せてレビューなんかを読んでいると、「事前に論語は読んどいたほうが良い」との言葉を発見。で、かつてKindleにダウンロードした本作品を思い出し繙いてみた次第です。 ひとこと …

投資銀行のキラキラした一ページを描写。最後は勧善懲悪的か | 『トップ・レフト ウォール街の鷲を撃て』黒木亮

今期より月一回自分に課している自主出社?を先週して参りまして、休憩室にある本棚に置いてあった本作を持ってきて読んでみたものです。 二十年前以上に発表された本作。日系銀行から米系外資系投資銀行に移籍したやり手のインベストバンカーと、その同期で…

ルネサンス期の文学を読んだあとに読む本 | 『CHAUCER’S PEOPLE』著:LIZA PICARD

近くの新古本を売る書店で一年ほど前に500円ほどで購入したもの。でも寝かせておいて正解でした。その後デカメロンとカンタベリー物語を読んだので、相応の下地ができました。にしてもAmazonで評価4.5。本当か? 評価を確認してから購入しましたが、読後に評…

独学のための強力な道しるべ。ただし自分を変えるのは自分だけ |『独学大全』著:読書猿

本書の帯を見て、中3の娘が言いました。『これ全部お兄ちゃんに当てはまってるじゃん』 娘よ、その慧眼には敬服するが親としては一抹の悲しさを覚えるぞ。 その帯は下のイメージの通りですが、こうあります。 「自分を変えたい」すべての人へ。頭が悪い 続か…

安定の面白さと、安定の驚き!?|『沈黙のパレード』東野圭吾

今、大分長い本を読んでいます。ページ数を見たら実に、752ページ! そういう長い本を読んでいるときはついつい寄り道で他の本に手を出してしまいます。 ということでこちらがその『寄り道』の本。実は本作、会社の本棚に置いてあったものです。 ・・・とい…

曰くつきの学園で起こる殺人の謎とは|『麦の海に沈む果実』恩田陸

最近、シンガポールの地域本部と喧嘩をしまくっていて、ちょっと疲れたので小説で休憩。メールだと通常の発話の1.5倍くらい攻撃的に(個人的見解)感じますが、ridiculous/disappointing/unbelievable などの単語でディスられてちょっと落ち込みました。シン…

ヒトの認知の癖に気づく |『ファクトフルネス』著:ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド 訳:上杉周作、関美和

会社でとっている電子版の新聞。内容は当地(東南アジア)の日系企業がらみの記事が大半。ただ、毎週月曜日に八重洲ブックセンターでの新書売り上げと文庫売り上げのベスト10が載っており、結構楽しみにしています。そのコーナーに、数年前まあーよく目にし…

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